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■過去のESSAY■
・熱海アンダーグラウンド その2
(2002.10.16)

-- 熱海アンダーグラウンド その2 --

前回のあらすじ:
久々にまとまった休みが取れ、彼女と二人で熱海に温泉バカンス・・・したのだが、若干の物足りなさが拭えず、さらなる満足を求め「秘宝館」へ。しかし、そこは日本が時代と共に奥へ奥へと押し込んだジャパニーズ・アンダーグラウンドの世界が・・・。今までに体験したことのないような疲労感を抱いた我々であった・・・
->熱海アンダーグラウンド(2002.10.9.)

 「秘宝館」を出、精神的な活力という活力が全て抜けきってしまった私と彼女。休憩所で飲んだカルピス・ウオーターの今まで味わったことのない風味(おそらく賞味期限切れ)が二人の精神的疲労を一層加速させているのか、会話のない時間が続く。無言で帰りのロープウエーに乗り込む。「秘宝館」を見てか妙にハイテンションな40代後半のおじさん5人軍団を横目に、私と彼女はやりばのない気持ちをどこかにぶつけたい衝動を必死に押さえていた・・・

 そこで、私はふと「秘宝館」に向かう途中車の中から見た、ある看板を思い出した。

「博物館村 ふしぎな町一丁目」

 クレヨンしんちゃんの画風を意識した中年のおばさんの絵を横に配列した、でかでかと張り出された看板・・・それを見たときは、彼女と二人で「こんな怪しいところ、行く奴いるのか?」と車の中で嘲笑していたのだが、冷静な判断が出来ないほど私の神経は疲弊しきっていたのか、頭から離れない・・・
 そんな私の気持ちに大きな揺さぶりをかけたのが、ロープウエーから見える「ふしぎな町一丁目」のメイン・キャラクター・クレヨンしんちゃん風おばさんの巨大アドバルーン



「秘宝館」の敗者復活戦は私の中で決まった。

私:「ねえねえ。あの『ふしぎな町一丁目』って、行ってみない?」
彼女:「は?大丈夫??さっきあれだけバカにしていたじゃない。あんなとこいくやついないって」
私:「うーん・・・でもいろんな博物館が集まっているんでしょ?しかもかなりアングラな感じじゃない。結構掘り出し物に巡り会えそうな気がするんだけどなあ・・・」

 と私は明らかに早く帰りたい彼女を説き伏せて、ロープウエーから見えたクレヨンしんちゃん風おばさんの巨大アドバルーンの元へと向かっていった。

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「♪ふしぎなま〜〜〜ち いっちょうめ♪ 
 ♪ふしぎなま〜〜〜ち いっちょうめ♪」



 おばさんアドバルーンがある場所が入り口。そこに流れる謎のおっさんの声で熱唱されるテーマソング。入り口横には化学調味料たっぷりのにおいが漂う屋台ラーメン屋・・・
 明らかに危険信号を放つ入り口付近。しかしその時の私にはそれが逆に絶妙のスパイスとなり、入りたいという気持ちを加速させていった

彼女: 「ねえ、本当にはいるの?」
私:「はい(きっぱり)。絶対面白い、と思う」

 と私は彼女の手を引き、入場券を購入できるゲートへ。

 なんと入場料1300円

 団体割引料金800円を一般入場料と間違えていた私にとっては二倍のショック。なぜ熱海の観光スポットはこれほど高いのだ?と不満を抱いて帰っても良かったのだが、やはりその時の私にはこれすらも絶妙のスパイスとなり、一層の期待感へと変わっていった

 まず、入り口付近から連なる「昔懐かしい家並」ゾーンを通る。西洋の顔型からなるマネキンが装う日本の昭和・大正の風景は一種異様な空気を醸し出す。妙にリアルで妙にミスマッチ。そしてとどめに飛び込んできたのがこのおっさん。



 どこでこんなリアル・おっさん顔のマネキン拾ってきたんだ?とちょっと薄暗い館内も手伝い、私は一瞬後ろにのけぞってしまった。

 「昔懐かしい家並」ゾーンを抜け、謎の動物ゾーンへ向かう途中・・・これは果たして積極的に観光のモノとして取り上げていいのかどうか目を疑う代物が目に飛び込んでくる。



 のろいのわら人形300円(確か)・・・その横には名前が記されたわら人形が何体も釘で打ち付けてある木が・・・これをここに置くことで、我々に何を伝えたいのかこの館長の意見を聞きたい。

 彼女が「なんだか背中がぞくっとした」という言葉を聞き、足早にわら人形ゾーンを抜けると、集会場に・・・そこにはメリーゴーランドがあるのだが、私たちが乗ることは出来ない。なぜなら・・・



 皆同じ顔をしたマネキンが思い思いの服装でメリーゴーランドにまたがっている絵をただただ黙って見させられる私たち二人・・・

 その後はひたすら西洋顔と「昔懐かしい家並」ゾーンでびっくりさせられた親父顔のマネキン達が様々なテーマで展示されているゾーンを見させられるのみ。
 「人形町本通り」「おたく横町」と銘打ったゾーンはそれとは少々違ったが、要はそれらしきモノを寄せ集めてウィンドウ風に展示してあるだけ。「昆虫の世界」に関しては、やたら数が多いだけに非常に気持ち悪い。あれほど鳥肌を立てたのも久しぶりだった。
 そして最後になぜか「吉本なにわ商店街」。いわゆる吉本グッズ販売所&吉本新喜劇のビデオがエンドレスで垂れ流される放映スペース(定員5名)。そこに紛れて「ふしぎな町一丁目」クッキーやらキーホルダーやらが置いてあった・・・買うのか。これで。

 約1時間。我々は何をしたのだろうか・・妙に外の空気がおいしく感じたのは気のせいではないはず。1300円というお金の価値を改めて学習させられた・・・

 帰りの車内の空気は深海の水圧ほど重く、ちょっと遅い昼食としてそば屋で注文をするまでは、一言も言葉をを出さなかった我々二人・・・

 ごめんなさい。誰に詫びているかはおわかりでしょうが・・・

 「秘宝館」1700円+「ふしぎな町一丁目」1300円=3000円。これ、経費で落としていいですか?あ、領収書もらうの忘れた(つーかないか)・・・

追加:
掘り出し物、ありましたー。



■J

2002.10.16.
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