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■過去のESSAY■
・本物の愛、そして
「うん○」
(2002.7.10.)

-- 本物の愛、そして「うん○」 --

 事件は地下鉄都営浅草線・泉岳寺駅(注1)で起こりました。

 私と今現在おつき合いしている彼女は、両者迫りくる便意を抑えつつ、必死にトイレを探し回っていました。本来であれば、こぎれいな喫茶店などに駆け込んでしまうのが手なのですが、あいにく当日は車移動。店があっても軒先に車が止められない・・・という状況の繰り返しでした。

 便意も最高潮、いよいよ赤信号がともりだした二人、選り好みはできないと、車で通りかかった泉岳寺の駅を確認すると、すぐさま近くの空いたスペースに車を止め、二人内股気味で駅の階段を下りていきました。

 駅構内のトイレは、障害者トイレが一緒になっていたので、車椅子が出入りできるように、広めの入り口、自動ドア、中も相当広いスペースとなっていました。彼女と二人、ひとまず安心、といった安堵の表情をお互い確認した後、すぐさまそれぞれのトイレへと急いだのでした。

ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

 用を足すときは、出来る限り我慢し、極限の状態でおこなうべしとは、過去の偉人達が行ったかどうかはわかりませんが、とにかく禁断症状からの脱却。一安心・・・

 私はその時、一つの重要な事実に気づきました。
 地下鉄・JRに限らず、駅のトイレには、紙が用意されていないということを。
「やっちまったよ。」無意識に口から出ていました。

 混乱した頭の中、まず思いついたのが、彼女に連絡を取り、紙を渡してもらうこと。彼女が用を済ませた頃合いを見計らって・・・ぷっぷっぷっぷ・・・ぷーーー。残念ながら、ここは地下鉄の駅。電波が入るわけがありませんでした。そこで、次に思いついたのが、駅員にヘルプを求めると言うこと(というか、これしか打開策はありませんでした)。障害者用のヘルプスイッチがあったので、矢も楯もたまらず、そのボタンを押したのでした。

 これにて一件落着・・・といけば普通の話で終わったのですが、私にはどうやらその類の神様がついていらっしゃるようで。見逃していただけませんでした・・・

駅員の方がドアをたたく音。
 「どうしました?」
 『すいません、紙がない状態で用を足してしまいました。』
 「では、とりあえずドアを開けてください。」
 『え??この状態であけるんですか?』

 ドアは自動ドア。開けるボタンを押してしまったら、ドアはフルオープン。私はその時下半身完全無防備状態である(うん○拭いていないからはけませんものね)。しかも、トイレの入り口は、通路に面した状態。フルオープンしてしまったら、私の下半身ヌードを一般市民の方々に公開するという、世にも情けない絵図になってしまうわけだ。だからこそ、駅員を呼んだのに・・・最悪の事態になることを、助けを求めた人間に告知されてしまったわけであります。
 意を決し、オープンボタンを押す私・・・

 ういーーーーん。
 『ああああああああああああああああああ』

 不時着した宇宙船から出てきた宇宙人を見るような目で私を見る駅員二人(何で二人もその場にいたのか、今考えればよくわからんが)。その後ろをスーツを着た、一般市民の方々が過ぎ去っていく・・・変な汗が止まらない止まらない。

 『あの、紙がないんですけど・・・お願いできますか?』
 「は?」
 『いやだから、紙がないのでいただけませんか?』
 「紙はここに売っていますよ。」

 ドアの前、つまり通りに面したところに設置された、ふき取り用の紙の自動販売機を差して、駅員Aは言った。何いってんだ?この人。下半身無防備状態の私に、表に出て紙を買えっていうのか??

 『いや、ちょっと無理なんで・・・代わりに・・・』
 「困ったな・・・100円ですけど、いいですか?」

 困っているのは私だろうが。100人見て誰もがそういうだろう。こいつ絶対ふざけているな。もう怒りを通り越して、悲しくさえあった。駅員にも、そして自分自身にも・・・。
そんなとき、彼女がそっとティッシュを差し伸べてくれ、何とかうん○を撤去することが出来たのだが・・・

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 みっともないを絵に描いたような数分間。あああああああああ。自分の下半身を駅員と一般市民に公開して、後悔してたら世話ねえやと、駄洒落で自分を励ますぐらいしかなかった・・・そんなとき、彼女が笑顔で一言。

 「あなた、大物になるわ。絶対。」

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 これこそ愛。真実の愛。これですよ。みなさん。
 おつき合いしている相手が、または思いを寄せている人が、本当に自分のことを愛しているかどうか、試すときにお勧めです(つーか誰かやって。俺一人じゃいやだ)。

■J

2002.7.10.
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注1:
事件現場です。行きたい方は勝手にどうぞ。