Re: 魏誌韓伝の国名

投稿者[ ピクポポデミ ] 発言日時 [7月19日(金)17時24分46秒]

元の発言 [ Re: 魏誌韓伝の国名 ] お名前 [ 游惟 ] 日付 [ 7月19日(金)07時53分50秒 ]

游惟さんお久しぶりです。
いろいろ教えていただけるとありがたいです。

>> 私はかつて韓国に四年半、香港に三年住み、現在台湾に住んで二年になりますが、一口に「中国語」といっても、北京語・広東語・客家語・福建語・上海語・山東語・ビンナン語(台湾語)等、各方言で音韻体系や漢字音は大きく異なり、一般に言われるような「呉音」「漢音」「唐音」程度の大雑把な区別で音訳漢字を論じることは危険だと思っています。

古い時代の中国語方言の問題は、最近になってようやく手が届くようになってきたという話をどこかで読みました。
中国語の音韻変化も、時代変化であるか、政治中心の移動による変化であるか見分けがたい部分があるのではないでしょうか。
日本の古代1にある森氏の文章によると、後漢と魏晋の間よりも、前漢と後漢の間の音韻変化のほうが大きいそうです。
これなども後漢と魏晋の社会変化のほうが、前漢と後漢の社会変化より大きかったような気がするのですが、音韻変化には都が長安から洛陽に移ったことのほうが影響が大きかったみたいに見えます。

>> ちなみに、日本の万葉仮名(借音仮名)に用いられている「呉音」というのは、おそらく山東省あたりの方言漢字音が朝鮮語に入り(つまり山東省出身の中国人が朝鮮人に漢字音を教えた)、それが朝鮮経由で日本にもたらされたものだとにらんでおり、今研究中です。

私は詳しくは分かりませんが、以前書き込まれていた、上代日本語のオの甲乙が異音関係とか言う説でしたか、それに関係するのですか。
最近理由あって私は松本説に関心をもっています。

>> 問題を整理すると、
>> @朝鮮語側の問題
>> 現代朝鮮語話者は語頭のr音を発音出来ないわけではないから、三国志時代の朝鮮人たちが語頭のr音を発音していた可能性は否定できない
>> A中国語側の問題
>> 朝鮮語を音訳した中国人がr・nを区別できない方言の話者であったとすれば、朝鮮人の語頭のnをrと聞き間違えた可能性もある。
>> B朝鮮語話者以外が朝鮮半島に住んでいた可能性
>> 高句麗は元々ツングース系民族が建国した国であると言われるように、満州語その他のツングース系諸語を話す人々が起源1〜3世紀頃に朝鮮半島に住んでいた可能性も否定できない。(ただ、満州語などもやはり語頭のr音はないと言われている)

>> こんなところでしょうか。

ウラル・アルタイ語のような仮説を認めると、@とBは可能性が少ないかなと思います。
あくまで論証されていない仮説でしかないようですが。
半島の近辺で、語頭にrの立つ言語ってどんなものがあるのでしょう。
中国語とかアイヌ語とか、南島語?(こんなの無かったか)

>> いずれにせよ、朝鮮語もツングース系諸語も10〜12世紀以前のことは資料がほとんどなく、文献学的方法でこれらの仮説を検証することは無理であり、方法があるとすれば、テープレコーダーを持って各言語・方言を録音してまわり、それをまた中国の各方言話者に聴かせてどのように音写するか実験する以外にないでしょう。

研究者は大変ですね。





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