Re: タミル語に関して

投稿者[ 游惟 ] 発言日時 [8月1日(木)08時33分57秒]

元の発言 [ Re: タミル語に関して ] お名前 [ EK ] 日付 [ 7月31日(水)19時35分23秒 ]

>> 》 南方系縄文人 = 日本祖語を話す ←→ 北方系縄文人 = アイヌ祖語を話す
>>うーむ。北方系縄文人はアイヌの先祖とお考えですか。
>>アイヌに近そうな人たちがシベリアに広く住んでいるようでもないので、アイヌはアイヌで深く考えないといけないのではないかと思うのですが。

北海道アイヌと同系統の言語を話す人々は、江戸時代や明治の頃には樺太南部と北方領土あたりにいたらしいですが、現在では日本語やロシア語に飲み込まれて殆ど消滅してしまっているらしいです。
だから古代・中世のことになるともっと判りませんが、「日本書紀」には「粛真」という北方系の民族(国家)も記録されており、ひょっとするとアイヌ語以外の別系統の言語を話す文明度の高い民族が古代・中世には東北北部や北海道の一部には住んでいたのかもしれません。

>>》 糸魚川〜浜名湖ライン ← 例えば「沢」と「谷」
>>沢に対応するアイヌ語があるんでしたっけ?

「山間部の小平地」を表す「サハ」という名詞がアイヌ語にはあるそうです。

>>》 弥生人 = 母親言語の継承により、日本祖語を話す
>>征服者たちはどんなことばを話していたんでしょうね。
>>それにしても、朝鮮半島のことばはなぜ一つなんでしょうか。

ある領域の住民が一つの国家として統一され、何十世代もの長い年月がたてば、教育によって言語が標準化されます。(日本でも明治維新後100年で北海道・沖縄の言語の標準化が進みました) 朝鮮半島も672年の統一新羅以来、統一国家が1000年以上も続きましたから、言語が標準化されたのでしょう。それ以前も、おそらく南朝鮮の馬韓・辰韓・弁韓の言語は同一系統の言語の方言差だったと思われますが、北朝鮮や済州島など異なる系統の言語を話す人々が住んでいたかも知れません。

>>》 蝦夷・俘囚問題 : 12世紀末に源頼朝が奥州藤原氏を滅ぼして終結
>>游惟さんは蝦夷・俘囚をアイヌと考えているように思える。私には、奥州藤原国の国民が現代東北人とそれほど違う人々とは思えないが。

ですから、東北住民の日本人化(日本語母語化)も瞬間的に起こるわけではありません。7世紀以降、日本人が東北に移り住むようになり、最初は蝦夷(アイヌ?)対日本人の比率は10:1だったとしても、次第に7:3、5:5、3:7 1:10と逆転していき、12世紀の頃には混血も進み殆どの人々が日本語(ベースのクレオール)を話していたと思われますが、内地(?)の側から見れば、その頃までは中央政府の統制の及ばない奥州藤原氏配下の東北人を「蝦夷」「俘囚」と見なす傾向があったが、奥州藤原氏が滅んでこの地方も中央政府(鎌倉幕府)の統制下に入って、やっと東北人は「蝦夷」「俘囚」とは呼ばれなくなったということです。(ただ、その頃でもやはり山間部の僻地には蝦夷語を使っている人々も少数ながら残っていたのではないでしょうか?)
日本武尊神話は4〜5世紀の史実の投影と見られていますが、日本武尊が征服した「蝦夷」というのは東北地方の異言語話者の「蝦夷」のことではなく、関東地方の大和朝廷に服していない弥生人(日本語話者)のことであり、内地の人々は北方にいて中央政府の支配下にない人々のことをさげすんで「蝦夷」と呼ぶ伝統があったということです

>>「男は殺して女は自分のものにする」史観によれば、現代東北人の母系の先祖をたどると、かなり多くがアイヌ祖語を話す先祖に行き着くことになる。これはミトコンドリアDNAの分析である程度検証できることなので、探してみる価値がある。

この研究はかなり進んでいて、東北人の多くがアイヌと同じ遺伝子を受け継いでいることは確かなようです。

>>》 話し言葉としての東北方言は日本語とアイヌ語が混じって発生したクレオールだ
>>私は東北方言もアイヌ語も知りませんが、これはにわかに納得できるものではありません。
>>東北方言の音韻体系がアイヌ語に近いのでしょうか。

この仮説は現在のところ具体的には全く検証していません。とにかく、日本に帰らないことには何もできませんが、あと2年はここにいないといけないので・・・・(^^;)

ただ、7〜12世紀の東北地方がクレオールが発生する環境にあったことは確かであり、また私の知る限り、東北方言は、簡略な文法、センテンスの短さなど、クレオールの特徴を持っています。
先週台湾原住民の日本語使用状況調査に来た高名な日本語学者(国立大大学院教授)に会う機会があり、この話もしましたが(その人は青森出身)、「確かにその可能性はある。大いにやってください」と励まされました。(^ヘ^)

「科学」というものは、同じ環境(条件)が生じれば同じ現象が起こる、という演繹的発想法から成り立っています。地球上で水素と酸素が化合して水になるならば、火星上でもアンドロメダ星雲上でもやはり水になる、という「仮定」から自然科学は成り立っているのであり、「そんなものアンドロメダ星雲まで行ってみなけりゃわからないじゃないか」などと言い出せば、自然科学は成り立ちません。

それは人間を扱う「社会科学」だって同じことで、「ある商品の需要が急増するのに供給が追いつかなければその商品の値段は上がる」という経済学の法則が現代社会に当てはまるなら「洛陽の紙価を高からしむ」という言葉があるように、1000前の中国にだって当てはまるのです。

それと同じように、19世紀のアフリカで「母親言語の継承」という形の言語交換現象が起こるのなら、それと同じような環境にあった2300年前の日本でも起こったはず、現代の移民の言語が故国語モノリンガルの一世→故国語・現地語バイリンガルの二世→現地語モノリンガルの三世という形で移行していくなら、白村江以降の朝鮮帰化人達の言語もそのように移行していったはず、中南米でお互いの言語をよく知らない者同士がコミュニケーションを強いられてクレオールが発生したなら、同じような環境だった7世紀以降の東北地方でもクレオールが発生したはず・・・・・・それが私の発想法です。(現在は言語研究を専らにしていますが、私は本来社会学者なのです)

>>》 その当時中国大陸か朝鮮半島に住み着いていたタミル人が、突然日本列島に引っ越してきたとか・・・(^ヘ^)
>>私は「茶をいれる」体験から、いかなるとっぴなアクロバットがあってもよいほど共通の何かがあるような気がしています。とっぴな大陸移動説を疑う人は、今はおりません。

私も突飛な説を唱えるのが好きですが、あくまで現在までに判っている事実や法則と矛盾しない範囲であることが条件です。私の「上代特殊仮名遣い朝鮮帰化人記述説」にせよ、「日本語南方系縄文人語起源説」にせよ(その他にも色々突飛な仮説を考えています)、初めて聞く人には荒唐無稽に聞こえても、現在までに判っている事実や法則とは矛盾していないはずです。

タミル人が南インドから陸路ヒマラヤを越え・チベット高原を越え、中国大陸を横断して日本列島に達したと考えることは不可能であり、あるとすればインドネシアあたりに住んでいた同一民族の一方がインドに、一方が日本列島にと考えるしかありませんが、インドネシアと日本を結ぶ海路上のインドシナ半島・フィリピン・台湾あたりの原住民語にタミル語と似たものでもあればともかく、ねえ・・・・・




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