ヌケが良く線の細い描写をし,なんでもびっくりするくらい綺麗に写ります。
戦前の名レンズがエルマーとするなら,戦後の名レンズは文句無くズミクロンということになるでしょうか。
このレンズのコーティングは,俗に「ソフトコーティング」と呼ばれる柔らかいものです。すぐに拭き傷が付いてしまいますから,クリーニングは専門家に任せるべきだと思います。
ライツ社の発表によれば,沈胴ズミクロンの製造は1953年から1960年になっています。これに習えば スクリューマウントの沈胴ズミクロンの製造番号は1,051,001〜1,827,000の間に限定される筈です。ところが 1951年〜1952年に製造されたことを意味する92万番台〜105万番台 の番号が刻印された沈胴ズミクロンが けっこう多く報告されていることも事実です。
俗に言う「最初期型」ズミクロンの定義についてですが,製造番号による識別,あるいは前球が「黄色い」かどうかを基に線引きして良いのかどうか疑問が残るところです。 最初期型とは,高屈折率を得ることを目的として,ライツ社が前球に 酸化トリウム を混合させたことに由来しているものです。製造番号による識別については,「92万番台だけ」とか「105万番台以下」と諸説あります。また前球が黄色ければ全てトリウム混合かと言われれば,例えばハッセル1600F/ 1000F 用の エクターなど 関係ないものもあり 色目だけによる識別についても 怪しさが残ります (エアロ・エクターはトリウム混合とされています)。
例えば 後に 酸化ランタン(LaK9) に混合物が置き換えられたとされる 1954年製造の ズミクロンについても,前球を外して見れば明らかに黄色いものがあります。 放射線の測定機器があれば 安心できるのですが,写りがそれなりに良いため,手放すのが惜しく諸刃の剣を味わい続けるしかないというところでしょうか(笑)。
いずれにしても,見た目が黄色いレンズをカラー・ポジで使えば,色目が偏ることは避けられません。 放射性物質混合の有無とは別に,カラーで使われる向きには決してお勧めできないことだけは確かです。
フィルター:E39mm
バルナック用ズミクロン(SOSTA)は,1960年〜1963年の4年間に1,160本製造されたことになっています。
そもそもズミクロン50mmは,最初のM型ライカであるM3 (1954〜1968)の発売と同時に,固定鏡胴(リジッド)のみが提供されましたが,当時のバルナック・ライカ最終形となったIIIg対応にと,敢えてLマウント(スクリュー・マウント)が用意されたとされるのが定説になっています。
バルナック・ライカの最短撮影距離は1m(3.4ft)ですから,Lマウント・レンズの最短撮影距離も1mとなっている筈です。外見は同じように見えても,M型ライカ用レンズの場合は,最短撮影距離が0.7mになっている筈です。
ASPHとはアスフェリカル(非球面)の略号です。Mマウント・モデルの方が入手しやすく,また実用になることは承知していたのですが,自分の40歳の誕生記念に一味違ったレンズをと,敢えてLマウントにしたのです。
フード内蔵は便利で良いです。結局マウントアダプターを付けて,Mマウントで出動させてます(笑)。
Lマウントかつ沈胴式最後のレンズ。エルマー5cmと言えばF3.5が主流でしたが、レンズの材質と設計を新しくしたためF2.8となっています。
絞りの形はほぼ完全な円形で,こうした造りを眺めていると,いかに当時のライツが良いものを作ろうとしていたかの姿勢が伺える気がします。
開放では,柔らかめだが線の細いしっかりとした描写をしてくれます。ソフトコーティングですから,拭き傷をつくらないようクリーニングには十分注意してください。
フィルター:E39mm
これもズミクロン50mmASPHとズミクロン35mmASPH同様,Lマウントのものです。
これで現行品Lマウント・トリオはすべて正規・新品で揃いました。え?「なんでクラカメで行こうに出ているのか」って?すでに製造中止になっていますから勘弁して下さい。
ズミクロン35mm/F2だけフードが外付けなんですが (Lマウントは12504が純正として付属している),50mmは両方ともフード内蔵型なので助かると言えば助かります。 ただ,意外とフードが浅い気がするのが気になるところです。
カール・ツァイス・イエナの製造で、「T*」(ティー・スター)でない頃のレンズです。また、これはライツのズミター50mm用鏡胴にゾナーを埋め込んだいわば改造版です。
ツァイスから出荷されているライカマウント用ゾナー50mmの3本に2本は無限(∞)が出ないと言われています。当時のContaxボディは,ライカのように一定のフランジバック28.8mm(±0.05mm)にこだわっていたというよりも,レンズに合わせてボディ深度を最終調整していたと言います。従ってフランジ・バック固定のボディに装着すると誤差が出て,ものによっては無限が出ないという訳です。
これは上の改造ゾナーと違ってもともとCZJからライカマウント用ゾナー50mmF1.5として提供されたものです。噂どおりライカに装填すると、ボディ側の距離計で二重像が合致する前に、レンズ側は無限大を指しヘリコイドがストップしてしまいます。
フィルター:40mmφ(40.5mmφではありませんので注意してください)
ゾナー50mmF1.5のコピーです。コピーと言うと,ロシア製レンズのファンの方々に叱られそうです。ツァイスとロシア製レンズについては,私なんかよりもよっぽど詳しい研究をされている方が大勢いらっしゃいます。そちらに解説を譲らせていただきたいと思います。
フィルター径:40.5mm
レンズ・ブロックはゾナー50mmF2ですが,バレル(鏡胴)とピント調整用のヘリコイドは,初期のエルマーやヘクトールのものを組み合わせて改造されていることが多い機種です。
それから,Lマウントと言ってもピッチ違いという固体があり,ライカには取り付けられないものがあります。
ゾナーF2タイプのコピーとされています。開放では,フレアーのせいか少し甘くなる傾向がある気がします。私の固体だけでしょうか。
色のメリハリがズマリット以上にありますので,作画意図によってはなかなか面白い写真が撮れるかも知れません。フードなどでハレ切りをし,F4以上に絞った場合は色のりも良く,先に挙げた本家ゾナー50mmF2よりしっかりした描写をするように思います。
フィルター径40.5mmφ
上の白鏡胴よりも,近年のモデルです。
バルナック型ライカの,ライセンス・コピーとして米国のKardon(カードン)用につくられた標準レンズです。
35mm判用のエクターには,Signet35(シグネット)用に焦点距離44mm/f3.5が装備されているほか,47mm/f2のレンズがレチナ(Retina II)に装備されています。Kardon用に製造された本機は,ピント合わせ用のバレル(ヘリコイド)こそ違いますが,レチナII用のもの[製造番号:ES229 1947年製]と同じ設計だと思えます。
Kardonはもともとが軍用で本機も軍用モデルですが,ごく少数民間用(civilian model)が製造されたそうです。Kardon用のエクター47mm/f2の特徴の一つとして,「手袋をはめていても精密なピント合わせを行える」ためのWヘリコイドが装備されている点が挙げられます。実際のところ,このWヘリコイドはちょっと使い難い感じがします。
Kardonのボディを持っていませんので,Kardonのボディ深度が分からないのですが,入手した状態のままでテスト撮影したところずいぶんと前ピンになりました。L/Mアダプターを介しM型ライカにすりガラスをあてがいながら,レンズ・ブロックの位置調整を何度も行ってやっとライカで使える状態となったレンズです。
このレンズは,本来エルマー5cmの下に配置すべきでした。インダスター 50mmは,エルマー同様典型的なテッサー・タイプのレンズで,写り方も似た点が多いからです。
ただ色のりが少し派手目であること,少し線の太い描写をする点がわずかに異なると思っています。
フィルターは,エルマーなどに用いるねじ込み式(E19mm)ではだめで,A36(36mmφかぶせ式)を用いるしかないようです。
千代田光学 "CHIYOKO"のエングレーブ入り,50mmでございます!
絞り羽が8枚というのも,なかなか渋いですが,Carl Zeissレンズの "T"ならぬ "C"が赤字で刻印されているあたり,ご苦労さま加減を忍ばせてくれます。
45mm 「梅鉢」とともに,国産銘レンズの1本です。
フィルター径: 40.5mm
ライカ ボディ | バルナック型 | M型 | R型 |
広角系レンズ | L広角 | M広角 | R広角 |
標準系レンズ | L標準1/2 | M標準 | R標準 |
望遠系レンズ | L望遠 | M望遠 | R望遠 |