バルナック型ライカへのレンズ装着は,ねじ込み式で行います。この方式は一般化され,ライカマウント(Lマウント)と呼ばれるようになりました。
ここで取り上げたのは,ライカIII型と呼ばれるもので,全てファインダー付きです。バルナック型と呼ばれるライカのファインダーは,標準レンズと言われる50mm相当のレンズだけに対応できるものになっています。
では,広角レンズや望遠レンズが使えないのかと言えば,そうではありません。レンズと同じ画角のファインダーを,アクセサリー・シューに取り付ければレンズの画角に応じた撮影を楽しむことができるのです。
ファインダーは50mm専用だけ搭載されており,ピントを合わせるための距離計窓と撮影画角決定(フレーミング)を行うための窓が別々になっています。画角を決めた後でピントの微調整を行う際,両方を一睨みというワケにいきませんので,距離計窓とフレーミング用窓の間を目が行き来することになります。
当時としては,距離計が内蔵されただけでも便利な方ですし,メカの感触は往年のドイツ製カメラを感じさせる重厚感と気品の高さの両方を兼ね備えています。IIIaのシャッター音は独特で,「ストン」という音を聞いていると,なんだか妙に安心するものです。
IIIaに比べて,距離計窓とフレーミング用ファインダーの距離が5mmほど縮まりました。 たったそれだけですが,ほんのちょっと目をずらすだけで事足りますので,実写の際は大変便利に感じられます。
またシャッター・スピードをあわせるためのダイアルが一回り大きくなったこと,スロー・シャッター用のダイアルが化粧ビスに変更され,正面から見て「いかにもネジでとめてあります」という風情がしない点でIIIaとは簡単に見分けがつきます。
左の写真は,エルマー5cm /F3.5 (Lマウント) というレンズを装着したところです。
シンクロ接点調節用のダイアルに赤色が混じっていること(お〜,だから「レッド・ダイアル」なんですね),底蓋を開けるとフィルムが下にずり落ちないように「角」が付けられていることなどが異なる点です。
さらにこの後,レッド・ダイアルIIIfにセルフ・タイマーが装備されたモデルが登場し,ファインダーとスロー・シャッターのダイアルを除き,IIIgと外見が似通ってきます。
一見,IIIfと同じように見えますが,ファインダーを覗くとすぐに違いが分かります。
IIIfまでのファインダーは,枠がなんとなく不明瞭で,今見えている光景のどこからどこまでが実際にフィルムに刻み込まれるのか分かり難いところがあります。
そこでIIIgでは,ブライトフレームと呼ばれる白い枠を素通しガラスに描くことで,撮影範囲をよりはっきり示すことにしました。距離計とファインダーの間にはやはり数ミリの間隔があいていますが,ファインダーの見え方は大きく,そして明るいものへ変更されています。
さらにIIIgのファインダーでは,被写体との距離によって撮影範囲の誤差が生じる「パララックス」補正機能が付けられ,撮影距離に関係なくファインダーで示された枠内とフィルムに刻まれる画像がイコールになりました。
IIIfの後期のモデルを踏襲し,IIIgは全てのモデルにセルフタイマーが付けられています。また,ボディの裏蓋には,フィルムの種類と感度をメモしておくためのダイアルも付けられました。
さらに,スロー・シャッターのスピード・ダイアルは,高速から低速へと一方向に並べられました。 IIIfまでのモデルのように,2方向型の方が使い易いように思うのは私だけでしょうか。