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ライカの生い立ちについて

ライカの歴史TOPICS

Lマウント 標準レンズ (その1)

ニッケル・エルマー5cm F3.5

ニッケル鏡胴

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このエルマーは,ニッケル製の鏡胴で,製造番号は彫られていません。ちょっと変わったレンズですね。

初期のライカカメラは,レンズ交換式ではなくレンズを固定した形で売られていました。当時はレンズの選択肢として,エルマックス,ヘクトール,エルマーの3本があったわけですが,レンズ交換式カメラになってからもこれらのレンズは,固定式の頃の部品を流用していたのではないかと考えられるところがあります。

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左側:通常のエルマー5cm(クローム),右側:上で紹介したニッケルエルマー5cm。

このニッケル・エルマーは、通常のエルマーより数ミリほど鏡胴が短かく,焦点距離5cmとするために前玉のカーブがきつくなっています。独特の中間トーンが出るのですが,ボケはやや煩い傾向が見られます。フィルターはA36またはE19mmを使います。

「旧エルマー」と言われるには,いくつかの条件を満たす必要があるのですが,ここではあまり深堀せず,筆者の夢レンズとしてそっとおいておきたいと思います。

No:なし 製造年不詳 ドイツ製 大陸式絞り

クローム鏡胴(コーティング無し)

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エルマーは息の長いレンズで,細かい点で改良されてきたため,多くのバリエーションがあります。

これはコーティング無しの,いわゆる前期型と呼ばれるレンズで,エルマーとしてはありきたりの部類に入るものだと思います。コーティングが施された後期モデル(赤エルマーなど)に比べ,線の太い描写をし,また逆光ではコントラストの低下が見られます。

しかし,はまるところにはまると,臨場感あふれる描写をするレンズです。バルナック型ライカ用のレンズは多くありますが,「写る・写らない」の比較は,このエルマーが中心になっている気がしてなりません。

No:393822/1937年ドイツ製

ヘクトール 5cm / F2.5

ヘクトール 5cm ニッケル鏡胴

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逆光撮影時,ハイライト部分には心地よいフレアーがかかります。フレアーは写真に良くないものだと決めてかかっている人には決してお勧めしません。

逆にフレアー族の方には,ウェットな作画づくりに必要な一本だと言えるでしょう。後ボケが煩いため,背景をじっくりと選び,ゆっくりとした呼吸とテンポで撮影を楽しみたいものです。

No:125737/1933年前

Leica Camera GMBHの公式記録によれば,レンズの製造番号156001〜195000が1933年に製造されたことになっている。それより前の製造番号がいつ造られたものかは不明なため、「1933年前」としてあります。

ヘクトール 5cm クローム鏡胴

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ヘクトール5cmと言えばニッケル製の鏡胴が普通で,逆にヘクトール5cm以外のレンズはクローム鏡胴が普通です。ところが,クローム鏡胴のヘクトール5cmも少数存在します。

何本製造されたのか,詳細な記録が見当たらなかったのですが,珍品好みの方は見つけたら入手してみられては如何でしょうか。

フィルターはA36(かぶせ式)を使うしかないようです。内径実測20mmφですが,ねじ込み式のフィルターは見たことがありません。どなたかご存知でしたら教えて下さい。

[1] No:140467/1993年以前, [2]No:168063/1933年 ドイツ製 大陸式絞り

ズマール 5cm F2

固定鏡胴

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俗に「ひょっとこ」と呼ばれるこのズマールは,ニッケル鏡胴で絞りが丸型です。

ズマール5cmは,下のニッケル製の沈胴式鏡胴が普通です。固定鏡胴(リジッド)だからと言って,丸型絞りから来るボケ味以外,別段写りが変わるわけではありません。

クローム鏡胴

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開放ではフレアーが凄いですが,少し絞ると独特のぬめりを伴ったトーンとキレを提供するレンズです。

バルナックIIIfに,ズマールかズミターをくっつけるのが,しまたか流クラカメの楽しみ方だと勝手に思っています。

コーティングはされていないので安心して拭けそうな気がするレンズですが,前玉が柔らかいガラスで造られているため,拭き傷には要注意です。

フィルターは,E34mm(ねじ込み式)を使います。

[1]No:381700/1937年製, [2]No:446130/1938年製 いずれも ドイツ製

ズミタール 50mm / F2

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私自身はズミタールが大好きです。はじめて買ったライカレンズだからかも知れませんし,後の名刀ズミクロンの前身となったモデルとして大変重要な意味があるからかも知れません。

開放時のフレアーは,一般に扱い難いと言われていますが,「クラカメならでは」と,大らかな気持ちでこのクセを楽しむぐらいの余裕が欲しいものです。とは言え,F5.6ぐらいから豊かな階調を伴ったシャープな描写を見せ始めますので,コントラスト偏重主義の現代においても一風変わってはいるけれども,実用レベルにあるレンズだと思います。

このレンズは,フィート/メートル目盛り,丸型/多角形型絞りなどなど大変多くのバリエーションを持つレンズです。研究材料としては大変奥の深いレンズと言えるでしょう。

フィルターは,36.5s mmという少し特殊なものを使います。

No:789703 1950年 ドイツ製

ズマリット Lマウント 50mm / F1.5

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ゾナー50mm/F1.5と比較され,どういうわけか目の仇のように酷評されるレンズです(笑)

確かに絞り開放では,なんとなくしまらない描写をしますが,F2.8以上絞ったときのズマリット固有の深く濃い描写は見逃すことはできません。逆にF8以上に絞ってしまうと,硬めの描写になりどのレンズで撮っても大差ない描写域に突入してしまいます。あまり力まないで,適度に柔らかい描写を楽しむにはもってこいのレンズです。

ズマリットの【カナダ製】は希少価値が高いとされています。ご参考までに。

フィルターは,E41mmを使います。

No:1025571 1953年 ドイツ製

ズミクロン50mm沈胴型,エルマー5cm沈胴型,ズミクロン35mmF2(通称8枚玉)と,往年のスターレンズがこの時期重なって製造されているのは興味深いですね。