Brian Eno
並列する、複数のアンビエント
自動車事故で軽傷を負い、身動きするのが面倒なイーノ、ベッドで。
友人が持って来たハープのレコードの音が片チャンネルしか出てい
ない。しかもとても小さな音量だったが、仕方なくそのままの状態
で聴き続けた。その時、外の雨音のすき間を縫って時々聞えるその
微かな音楽が、音楽というよりもむしろ環境の一部をなすものとし
て立ち現われた...
音楽のひとつの形を見い出すに至った。
これは広く知られているブライアン・イーノによるアンビエント・
ミュージックのアイディアが誕生した瞬間のエピソードである。
この時そのハープの音は、
「環境を構成するパーツの一つとしての音楽」
であったはずだ。家具や芳香、光のようなものとしての。空間へも
うひとつ、付加するものとしての控えめな響き。
そして、彼の提示した初めてのアンビエントとしての音楽を収めた
"Discreet Music"が生まれることになった。1975年のことだった。
以後、さまざまな形でイーノのディスクから立ち昇るやわらかな音
を聴いてきた私たちは、アンビエントという言葉の持つ意味の領域
が多方面に拡散していることも、すでに知っている。それは多くの
音楽家がアンビエントを手がけてきたというだけではなく、実際は
イーノ自身のアンビエントがすでに多彩だったということなのだ。
それは例えば
環境に、さらに一つの要素を付加する音
無視できる音
疑似環境を作り出す音
サウンドトラックという環境
エトセトラ。
曖昧な(obscure)、そしてまだまだ新しいこの音楽用語はきっと、
一つに集約される響きを指すのではない。
並列するものなのだ。
■ Evening Star
■ Discreet Music
■ Ambient #1-Music for Airports
■ Music for Airports by Bang on a Can
■ Ambient #2-The Plateaux of Mirror
■ the Pearl (with Harold Budd)
■ Music for Films
■ Ambient #4-On Land
■ Apollo
■ The Shutov Assembly
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