Brian Eno, Daniel Lanois & Roger Eno
Apollo
atmospheres & soundtracks
(Edidions EG,1983)EGCD 53
『ミュージック・フォー・フィルムズ』がそうだったように、この
ディスクでもかなり具象性の高い音、つまり楽器のすぐにそれとわ
かる音が現われる。また、共演・作曲をしているダニエル・ラノア
の影が旋律の明瞭さという姿を取り、色濃く現われている。このギ
タリストの参加が最大の特質となっていて、とりわけ旋律的要素が
明確なトラックが多い。たとえばトラック8"Silver Moring" のよ
うに後にラノアのソロアルバムでもヴォーカル曲として現われるフ
レーズなど、それまでのイーノによるアンビエント傾向のインストゥ
ルメンタル作品の形にはこだわらない、明確なメロディ・ラインを
聞き取ることができる。
そんななかでも、やはりイーノらしいのがドローンである。アポロ
による月飛行のドキュメンタリー映像のために制作された音楽であ
り、"atmospheres and soundtracks"という副題通り、トラック
ごとの雰囲気・空気感の設定の在り方が、アンビエント的と言える。
トラック4"Signals" では積み重ねられた複数のドローンによって
くぐもった包括的な音響を作り出し、そこへ細かな反復音型が(こ
れもどこかくすんでいて、遠くから響く)組み込まれ、緩やかな全
体の繰り返しの中で微細な変化が起こっている。これは『エアポー
ツ』や『オン・ランド』の手法に近いものだ。
また旋律的ではあっても例えば、トラック5"An Ending (Ascent)"、
この発光するような、人の声とそれ以外の音の実に微妙な境界上に
ある(それは安価なキーボードの「chorus」 音源の露骨さとはな
んという違いだろう)音色が美しい。わずかなコード付けに支えら
れるほとんど単旋律聖歌と言っていい感触である。旋律の流麗さと
倍音を多く含む拡がり(倍音の重なりはそれだけ広い空間を振動さ
せるように感じられる)を持っており、これは旋律性の強い、「音
色によるアンビエント」と言えるだろう。
聴き通してラノアについて改めて思うと、低い音域でのギターのリ
フが生身の演奏を十分に感じさせながらも、ギター的運動からはど
こか離れた不思議なパターンを描くなど、それまでのイーノ自身の
アンビエント手法へと、容易には区別がつかないほどに融和してお
り、旋律素材だけにとどまらない役割に気付く。コラボレイション
によって1プラス1が2以上になるイーノの、これも好例のアルバ
ムとして仕上げられている。
Oct.13 2000 shige@S.A.S.
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