●金融商品取引法(投資サービス法) 〜その1〜
■金融商品取引法(投資サービス法)の趣旨
現在、わが国においては様々な金融商品あるいは金融商品に類似する商品が販売されています。そういった商品を販売する業者も様々です。しかし、行政上、ある商品は金融庁の管轄、ある商品は経済産業省の管轄、と、いわば縦割りで管理され、法体系も分断されているため、投資家側からすると、商品ごとに開示書類の開示レベルが異なっていたり、業者への監督に差があったりで問題が指摘されていました。
特に近年、金融・IT技術の発達などにより、より多様な金融商品・サービスが出現しており、中には行政の規制をすり抜けて投資家に詐欺まがいの商品を売りつけるようなケースも出現しています。
一方、業者側も、実質的には同じ投資対象であるのに、開示や監督の規制が異なる、あるいは、複数の法律(および行政機関)に制約されるなど、決して効果的な管理がなされていません。
このような「縦割り行政」の弊害を解消すべく、幅広い金融商品について包括的・横断的に利用者(投資家)にとっては利用者保護の拡充を図り、業者にとっては、多様化するニーズにあった金融商品・サービスの提供ができるルール体制を構築するための法律の制定が必要である、という声に押され、「金融商品取引法(投資サービス法)」の制定に向けた論議が展開されてきている、という経緯です。
金融商品取引法(投資サービス法)概説図
■金融商品取引法(投資サービス法)審議経緯
金融商品取引法(投資サービス法)概説図
平成16年9月28日〜 |
金融審議会金融分科会第一部会で投資サービス法の審議開始 |
↓ |
平成17年7月7日 |
金融審議会金融分科会第一部会での議論を取りまとめた「中間整理」を公表。さらに、同時にパブリックコメントを募集。 |
↓ |
平成17年10月5日〜 |
パブリックコメントの結果公表の内容を受けて、金融審議会金融分科会第一部会での審議が再開 |
↓ |
平成17年12月22日 |
「投資サービス法(仮称)に向けて」という「報告書」が公表 |
↓ |
平成18年3月13日 |
金融商品取引法案の提出(『証券取引法等の一部を改正する法律案』) |
↓ |
平成18年6月7日 |
金融商品取引法の成立 |
↓ |
平成18年7月? |
金融商品取引法の第一段階の施行(『証券取引法等の一部を改定する法律案』第1条の該当箇所)・・・公布後2週間以内 |
↓ |
平成18年後半〜平成19年前半? |
金融商品取引法の第二段階の施行(『証券取引法等の一部を改定する法律案』第2条の該当箇所)・・・公布後6ヶ月以内 |
↓ |
平成19年前半〜平成19年後半? |
金融商品取引法の第三段階の施行(『証券取引法等の一部を改定する法律案』第3条の該当箇所)・・・公布後1年6ヶ月以内 |
さて、上記の表のとおり、一定の検討期間を経て、法案提出されている金融商品取引法(投資サービス法)ですが、当初、”対象範囲”として、預金や保険も含めたかなり広い範囲を網羅する(投資サービス⇒金融サービス。英国の金融全般を網羅的に治める金融サービス・市場法を意識)ことも検討されましたが、性急に広い範囲で実施するのは適切でないと、投資分野、に限定されることになりました。このため、法案では、同じような投資対象の集団投資スキームでありながら、省庁をまたぐ類似商品の一部は規制対象外になっている、というケースが無いではありません。
なお、今回の証取法改正は非常に対象が広いため、金融商品取引法は、公布後、大きく分けて3段階を経て(表内の赤字部分)施行されていきます。
■証券取引法改正〜金融商品取引法の施行過程
段階 |
施行 |
証取法改正法案の条項 |
内容 |
第一段階 |
公布後2週間以内 |
第1条 |
- 有価証券届出書等に対する資料提出命令などの整備
- 開示書類の虚偽記載・不公正取引の罰則強化(相場操縦、インサイダー取引など)
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第2段階 |
公布後6ヶ月以内 |
第2条 |
- 公開買付制度の整備(TOB規制の強化)
- 大量保有報告制度の整備(制度の特例については施行まで1年の猶予)
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第3段階(全面改訂) |
公布後1年6ヶ月以内 |
第3条 |
- 証券取引法の「金融商品取引法」への題名改定
- 有価証券・金融商品取引業の定義
- 企業内容等の開示制度の整備
- 金融商品取引業者等に関するルール整備
- 金融商品取引業協会
- 金融商品取引所
- 罰則の整備、その他
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(その他改定) |
金融商品取引法の一部改正 |
右の法律公布日から1年以内 |
第4条 |
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律並びに公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う改定
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投資信託及び投資法人に関する法律(=投信法)の一部改定 |
公布後1年6ヶ月以内 |
第5条 |
- 投信委託業者の廃止(金融商品取引法の「投資運用業者」へ収束)
- 不動産投信に関する規定の整備
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銀行法/保険業法等の一部改定 |
公布後1年6ヶ月以内 |
第6条 |
以下の法律の改定
- 商工組合中央金庫法
- 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
- 農業協同組合法
- 水産業協同組合法
- 中小企業等協同組合法
- 協同組合による金融事業に関する法律
- 商品取引所法
- 信用金庫法
- 長期信用銀行法
- 労働金庫法
- 銀行法
- 不動産特定共同事業法
- 保険業法
- 農林中央金庫法
- 信託業法
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