1993年
都内近郊の療養所
枯れ木と見まがうような爺が車いすに座って惚けている
警察がヤクザの取り締まりを最大限に強化した結果
ヤクザという組織ではボスの存在を隠した
存在を隠すというのは身元や所在は勿論、誰がボスなのかを判別できなくしていったのだ
水面下で繋がったヤクザの人的な繋がりが何処をどう走っているのか全く解らない状況になったのである
締め付けが厳しくなればより深い地下へ潜るだけだった
大物である程何処に誰が居るのか解らないのである
故に............この麻薬投与により廃人と化した爺を見つけるのは困難だった
実に三年半もかけて見つけた敵は.......その人生を勝手に終わらせていた
私が、殺しても飽きたらぬと思っていたその躯は手を伸ばせば届く
しかし、その躯に宿っているハズの汚物を吸い上げた魂は消えていた
その記憶は、勝手に、死んでいた
勿論医学的には生きている
しかし........私が滅ぼすべき魂が........記憶が無い躯を虐めぬく事に.......意義は.......
ただ、慟哭した
朱美は黙って観ていた
私の慟哭に爺が脅える
頭を抱えて本気で怖がっている
私の憤りは、怒りは何処に向ければいいのか解らなくなっていた
ただ、喉の奥から声が
目からは涙が流れ続けた
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1994年
その躯は記憶を取り戻した
静かに、彼はその躯を殺した
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to be continued
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