願えばどんな望みでもかなえるという不可思議な銀色の糸。誰が何の目的で作ったのか、人の世にひっそりとそれはあった。
いつの時代も人は銀糸を手にすると願わずにはいられない。たとえその後にどのような結末が待っていようとも。
「みずいろ」を買って色々な意味で気になっていたのですが、DVD版が出るとの知らせを聞いて購入を決意しました。
という訳で旧「銀色」はプレイしていないので、比較することは出来ません。あしからず。
システムは攻略性の非常に低いアドベンチャー。ルート分岐というものは事実上ないと言ってよいでしょう(分岐するときはゲームオーバールート)。
ゲームはプロローグ、第一章から第四章にプラスアルファの構成。ストーリーはほぼ一本道。
足回りは「みずいろ」に準じてます(本当は反対でしょうが)。ただし、こちらはノベルタイプのゲーム。よってメッセージを読み返す機会が多いと思うのですが、メッセージウインドウ単位でしか読むことができないのでやや不便です。その際にボイスを再生することが出来ないのも残念。しかし、ロード直後にも読み返せるのは非常にありがたいです。
メッセージスキップのスピードは早くもなく遅くもなく、といったところ。既読未読を問わずにスキップするので使うときは要注意です。
ゲーム画面は少し変わっています。映画を意識しているので上下がカットされたようになっていて、その下のスペースにメッセージが表示されます。また、そのためかはわかりませんが、各章とも日本語と英語の二ヶ国語が用意されています(字幕は両方、ボイスは日本語のみ)。
CGモードにはやや不満あり。イベントCGの中に登録されないものがあることと、表情違いのカットにも登録されないものがあること。これはちとツライです。
シナリオは章ごとに分けた、ライターの複数制のようです。各章で時代設定が異なることもあり、それぞれかなり雰囲気が変わっています。
プレイヤー=主人公という感じのキャラクターはあまりおらず、プレイヤーは第三者視点で物語を追うことになります(このへんも映画的演出つながりなのでしょう)。
物語は各章ごとに少しずつ絡んでいて、最終章で全ての話が集約されています。
全体的に謎の要素が薄いために、スタートからエンディングまで一気にプレイさせるような牽引力がやや弱いかと。個人的には非常に楽しめましたが。
CGは旧作のものに加えて新規描き下ろしが(オマケも含めて)追加されています。
正直なところ、旧「銀色」のCGはあまりレベルが高くありません。またレベルも一定していないように思います。
描き下ろしCG自体の出来は充分ですが、ゲーム中では新旧入り交じっているので違和感を感じてしまいます。しかし、値段を考えれば、このあたりは贅沢な注文と言えるでしょう。
ただ、描き下ろしのなかでも明らかにオマケシナリオのCGの方に力が入っているように見えるのは気になります(個人的には非常に嬉しいことではありますが)。
立ちCGにもイベントCGと同じようなことが言えます。やや同じ人物に見えない方がいます。
音楽は雰囲気に合った良い曲が豊富に用意されています。主題歌とエンディングテーマも効果的に使われています。
ボイスは女性のみフルボイス。総じてレベルは高いです。時折、それが演技なのか、それとも実力ゆえなのか不明な方がおられますが。
効果音はレベルに落差があります。刀に関するSEは音量、迫力共に物足りないと感じました。
まとめ。CGよりもシナリオ先行型のノベル。ゲーム要素がゼロなのは人によっては不満かもしれません。ルート分岐がないので一本の物語を気に入るかどうかが全て。「みずいろ」をプレイしている人はオマケのためだけでもプレイする価値はあると思います。値段も安いですし(当然、旧「銀色」を買った人はユーザーハガキを出すべきでしょう)。
お気に入り:狭霧、片瀬雪希(お約束)
評点:72
以下は章別感想。ネタバレ要注意。
1、プロローグ〜銀色
これのおかげで全体のストーリーがかなりすっきりしたのではないでしょうか。ラストのまとめとしてもうまくまとまってますし。っていうか、このネタ一本でも銀色の続編(外伝かな?)が作れちゃいますよねぇ。本当に出るんですかね?
ラストシーンがあるために少しは「英語」バージョンの意味が出てきたのではないかと。欧米から秋葉へわざわざ買いに来るツワモノには存在がそのまま意味になりますが。
取りあえず石切姫は可愛いです。もう少し活躍してくれたらなぁ。
2、第一章
この章で最も強く感じたことはシナリオライターさんは大変だったのではないか、ということ。メインの二人がとにかく動かない。話を進めるのに全く向いていない二人組ですからねぇ。
全ての章の中ではイマイチ印象に残らないかな。
3、第二章
出会いのCGが最もインパクトがあるというのはいいのか悪いのか微妙なところ。
自らに意味を求めるためとはいえ、その盲目的な献身はある意味、羨望さえ感じました。狭霧を気に入っていながら、不覚にも止められないと思ってしまったほどですから(そう思ってしまった時点で私の負けでしょう)。序盤はやや冗長な気もしますが、このシナリオはかなり巧みですね。
Hシーンへの流れも必然という感じで良かったように思います(巫女の処女性うんぬんはこの際、置いとくとして)。
ほとんど無意味な考えですが、頼人が狭霧を引き止められなかったのは「弱さ」を見せられなかったからなんでしょうね。自分の想い人に「弱さ」を見つけていれば、簡単には心残りが消えることもなかったでしょうから。
4、第三章
この章はなんといっても夕奈お姉ちゃんに尽きるでしょう。あの圧倒的なまでの存在感。あとからCGモードを見てねーやんのCGはこんなに少なかったのかっ! と驚いたくらいでしたから。そのまま手本にすることは出来ませんが、キャラ立ての見本と言えるでしょう。
加えて個人的には朝奈の声優が「雪希」の声優と同じであることもきつかったというか、衝撃度が大きかったですね。
ああ、雪希が追い込みかけられてるよぅ、とか>バカ
あと三章は他の章と比べても第三者視点が強かったのでツライ面も。これがプレーヤー=主人公なゲームなら、主人公が「君が望む永遠」みたいにヘタレでも自業自得だ、とか感じてればいいんですけど、第三者視点だと逃げ場がないんですよね。何も出来ずに結末まで見なくてはならないという感じで。
5、第四章〜錆
これほとんど繋がってますよねぇ。区別する意味はどのへんにあるのかよくわかりませんが、やっぱりあの悲惨な姉妹のためでしょうかね?
銀色の設定には当然、理論的背景はない訳で、それだけにどうして現代で帰結するのか、すんなり受け止められないんですよね(納得はしてますが)。
斜めな見方をすると篠崎あやめのためにこれまでの銀色にまつわる悲劇があったようで。個人的にはあの一瞬では取り返す分として弱いように思ってしまうんですよ。特に第三章とかは生半可な不幸ではなかったですし。
そういやラストであの姉妹だけ救われてなかったような気がしますが、やはり銀色に絡んでいないから駄目だったんでしょうか。
物語の構成として第四章は非常にうまかったと思います。シンクロのさせ方が非常に効果的かと。描き下ろしシナリオのためか、インパクトは少し弱いですけど。
6、オマケ
本当のところを告白しますと、ここが一番面白かったです。満足度もかなりの高さでした。
スピードワンボックス財団は最高です。返す刀で「みずいろ」のオマケをプレイしましたよ。以前は(完全には)ネタがわからなかったので、かなりすっきりしました。テーマ曲もかなり好きです。
雪希はHシーンがなかったのは残念ですが、あのCGだけでもかなり満足しました。
「うん、お任せだよっ」はなんかいいですね。
日和先生も相変わらず最高に笑わせてくれます。雪希もですが、何気に夏服なのがいい感じです。
ああ、これじゃあ次回作にもこうしたオマケを期待してしまうよなぁ。
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