木崎ケンスケ(変更不可)は小学校の頃、同級生からラブレターを受け取るはずであった。しかし、不幸にも本人には渡らずクラスのさらし者になってしまう。この時、相手を心ない言葉で傷つけてしまったことから女に強く出れなくなってしまうことに。
それは涼華学園に入学しても治っておらず自信のないまま。そんなある日、転校生として椎名香澄がやってくる。香澄に一目惚れしてしまった主人公だが、その感覚が恋であるかわからない。確かめるためにケンスケは恋愛同好会の門を叩くのだった。
フロントウイングの新作は変わった同好会を舞台にした学園アドベンチャー。
購入動機は原画買い、というか結城マドカ買い。こんなピンポイントな買い方をしても良いものでしょうか。
初回特典はドキドキファンブック。「めがちゅ!」に引き続いてスリーブで本体と合体させるデザインで相変わらず保管には気をつかいそうです。
それほど重大なものではありませんが修正ファイルが公開されています。快適にプレイするために落としておきましょう。
ジャンルは特に変わったところのないアドベンチャー。
足回りは使い勝手がもう一歩、良くありません。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが(修正ファイルをあてないと微妙な判別具合になります)速度がかなり遅めです。2周目以降に既読文に多く触れるので結構な時間のロスになります。「次の選択肢へ」機能があると良かったかと。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが戻れる量は少なめです。加えて開始時に一行、それも今メッセージウインドウに表示されているテキストしか表示されないのでひとつ戻るだけでも2クリックが必要で無駄に面倒です。開始と同時に全行表示するようにはできなかったのでしょうか。
もはやフロントウイングのお家芸となった感のあるデフォルト状態のディスクレス不可は本作でも健在。回数制限があるのも色々と登録したり手続きしたりしなくてはならないのも同じ。このサービスがロットアップ後一年限りというのも変わらず。ディスクレス起動というのは許可されなければならない機能なのでしょうか。
シナリオは複数ライター制らしくピンからキリまであってレベルが安定していません。良いものもあれば悪いものもある、普通にそんな感じです。一部ではキャラクターの人格が統一されていなかったりするところも。
共通ルートとヒロイン毎の個別ルートでは大きな差異が生じています。サブキャラに変人や人類以外がいるからでしょうか、個別ルートではサッパリ出番がなくなります。反対に共通ルートは彼らが幅を利かせていて非常に賑やか。次に何を言い出すのかわからない面白さがあります。メインキャラは実に影が薄いです。内容的に共通と個別で明らかな乖離があるのは問題があるようにも。
メインヒロインに一目惚れする設定は都合に応じて出たり引っ込んだりします。恋なのかどうかわからないというのがポイントで、他ヒロインのルートとなると確信がないのをいいことに、いつの間にかすっかりなかったことになっています。
惹かれあう過程はとてもいい加減です。恋愛同好会の活動の一環として疑似デートすればもうそれで理由は十分という程度の扱い。この部分に期待してはいけないでしょう。
Hシーンは各ヒロイン3回程度。しかし、本編中では用意できずにクリア後におまけとしてプレイするものもあります。
CGは原画家の特性を考えるとあまりにもエロさが足りません。INO氏を起用すれば多くのユーザーは潤沢なエロ度を期待するでしょう。残念ながら本作はその期待に応えられていないように感じます。設定を考えてもエロ薄とは予期しづらいのではないでしょうか。枚数的にも差分抜きで82枚と原画買いには寂しい数字です。
立ちCGは表情、ポーズともに多彩で、ヒロインは現実よりなデザインながらも色々な姿を見せてくれます。
音楽は全体的におとなしい印象を受けました。じっくり聞く分にはいいですが、インパクトという面では弱いように感じます。サブキャラの面々を考えるともっと弾けた曲があっても良かったような気も。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題はありません。
まとめ。まさかのエロ薄作品。エロ重視のゲームではないと言われても他が充実している訳でもなく。「めがちゅ!」同様に素材の良さを活かしきれていないと思います。サブキャラにしてももっと活躍させられたのではないでしょうか。いずれにしても中途半端です。
お気に入り:芹沢マドカ、結城えみり(ただし本人シナリオのみ)
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、椎名香澄
なんつーかねぇ、微妙なヒロインなんですよね。見た目は十分に可愛らしいのですが、あの髪の毛が染めているというのはエロゲーとはいえ、ちょっと考えてしまうんですよねぇ。そんな設定がなければあり得ない色はいつものことだから気にしないのだけれど(でも、現実的に考えると染められない色はほとんどないから、そういう可能性も考えられてしまうんだよねぇ)。あと元メガネさんというのも個人的に小さなネック。たまーに思い出したように気になってしまうんですよね。
そんなことから香澄は本人以外のシナリオの方が好きかも。無情な展開に対するいじらしさが感じられるし、この場合は真実を知らない状態だしね。
シナリオはあまりにもバレバレなんで効果ゼロって感じです。結果がわかっていても面白い見せ方ってのは世に幾らでもありますけど、残念ながら本作はその例に当てはまりません。
コアーな趣のHシーンはなかなか。奥手ヒロインを引き立たせる良いHシーンであったかと。どーでもいいことですが香澄は南と一緒にお風呂に入っているカットが最も胸が大きく見えます。
2、柚木南
髪形からしてツライ。このアグレッシブなエアインテークは絵だとしてもいかにも厳しい。端的にいうとちっとも可愛くありません。この外見に比べたら私はお岩さんの方がよほど好感がもてます。
シナリオは香澄をないがしろにし過ぎるところが駄目すぎ。親友の想い人を好きになってしまった葛藤など1ミリグラムもなく、あるのは単にルームメイトに隠し事をしている一事のみ。
香澄シナリオで結果OKとはいえ主人公を裏切ったし、自分のシナリオでは香澄を裏切るしで全く信用のならない人物ですな。お調子者というか芯がないというか。ホントに駄目な奴だなぁ。
3、桜野美恋
香澄ほどではないですがエロゲーの常識というか、鉄則を考えれば真相は3秒で明らか。本当に恋愛経験が豊富な学生ヒロインは人気が出ないでしょうからね。誕生しにくいです。
結局、園内放送で告白なんかされちゃったから好きになってしまったのでしょうか。恋愛経験が豊富だからこういったインパクトのある告白に参ってしまったのなら面白いですけど、経験がないからではあまり面白くないですよねぇ。
好きと言わない理由もよく分からないままだし、どうも全体的に肩透かし、といった感のあるシナリオです。
他には全シナリオ中で最もキャラの人格が違います。主人公は悪い意味で物怖じしなさ過ぎだし、野島は異様に頼りになるしでハッキリ言って別人です。
4、結城えみり
どー見てもギャグキャラなんですけどねぇ。気がつけばえみりがうろたえたり、恥ずかしがったり、悔しがったりする様子が微笑ましく感じられるようになっていてびっくりしました。あの微妙なオツムの弱さがポイントなのではないですかね。行き過ぎると腹立たしくなってくるような気もします。
主人公とは立ち位置が対立しているというのもツンデレキャラにはやはり軽視できない要素かと。他のシナリオとの差別化も自然とできますしね。
まさに思わぬお気に入りでした。
5、芹沢マドカ
終わってみると入門編と言って良いようなシナリオに思えます。全てがあっさりモードで世界観に慣れるのに最適という感じです。ああ、リタイアしてしまう可能性もあるのですね、難しいなぁ。それとマドカは本人シナリオ以外でほとんど出番がないからなぁ。
買う前からの期待のキャラであっただけに失望度もなかなかのものでした。シナリオは諦めていたのにまさか原画まで質、量ともにもう一歩だなんてねぇ。
6、マダム・ベアー
完全に他のキャラクターを食っていますね。まぁ、反則気味のキャラデザだから当然といえば当然ですが。共通シナリオくらいしか出番がないのは残念。個別になると息抜きパートがなくなるってのは普通に弱点だよねぇ。
7、ジェット先生
出番の少なさがもったいない。マダム・ベアーに比肩する存在感の持ち主なんですけどねぇ。
8、男子寮寮長
マダム・ベアーの対抗馬としてあまりに弱い。せめて立ちCGにセリフの黒板があればねぇ。
9、高井亜子
ケンスケに駄目だしする様子が素敵です。ってあれは誰でもキレたくなりますよ。他のシナリオでも出番があればね。
10、岩井倫子
外見の活用が弱いのがもったいない。もっと攻撃的なキャラで良かったように思います。やはりもっと出番が……。
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