世界の果て−。その名で呼ばれる砂漠の障壁の向こうから少女はやって来た。すぐに行き倒れたのはご愛嬌だ。問題は彼女の髪形がクロワッサン(※食べられません)だったことで、その怪我の功名によって恋する救世主ベーグル(変更不可)と出会うことに成功する。以降も彼女のクロワッサンは救世主一行のランドマークとして名を馳せるのだった。果たして夜明けにクロワッサンは輝くのか。
リーフの新作はKaren氏をメインデザイン&原画に迎えての本格派RPG。脇を看板原画家陣がしっかりと固めてます。
購入動機はゲーム性のある作品であることと一応は原画買いも。
初回特典は設定原画集。予約キャンペーン特典は描きおろしステックポスターセットとプレミアムディスク。また、アリスソフトと合同で双方のタイトルを同じ店舗で購入すると、互いの看板原画家が互いの作品のヒロインを描きおろしたステックポスターももらえました。
修正ファイルが出ています。強制終了やプレイ続行ほぼ不可能という状態を直すものなので必ずあてておきましょう。他にも便利な機能が追加されています。なお、私の環境では適用後も強制終了はしばしば起こりました。
ジャンルは視点変更型RPG。イメージとしては箱庭を散策する感じでしょうか。この最初の部分で重要なポイントがあります。本作は視点変更がプレイの肝と言ってよく、しないことにはクリアは覚束ないでしょう。そして、マウスによる操作では視点変更は右ドラッグになります。移動はカーソルをクリックして画面上のプレイヤーキャラがそれを追う形です。つまり、マウスによる操作では移動しながらの視点変更は事実上不可能。結論としてアナログ入力が可能な2軸ゲームパッドがほぼ必須です。フルマウスオペレーションでは快適ではない、どころの話ではなくなります。恐らくはプレイ時間にも深刻な影響を与えるでしょう。
パーティーは最大4人。どういう意図からかはわかりませんが、パーティーを組むメンバーはKaren氏デザインのキャラで固められています。自在に組みかえることはもちろん、強制による変化もありません。最初から最後まで決まったメンツで旅をすることになります。せっかく原画に豪華メンバーを揃えていながらこの仕様はあまりにもったいない。3Dモデリングまでしておきながら誰も仲間にできません、では拍子抜けです。また、この措置はあらかじめ告知されているため、ある程度はシナリオが読めてしまうという問題も生んでいます。
成長はレベルアップの他にスキルポイントを各魔法や技に注ぎ込んで強化していくスタイルを採用。早い段階で強化しすぎると莫大なHPやMPを消費して使いづらいものになってしまうという面白い側面を持っています(一旦、強化してしまうと元には戻せない)。
武器の成長は合成というシステムによって行います。基本的な武器は槍なら槍でずっと変わりません。合成によってどんな槍にしていくか、そんなスタイルです。冒険によって集めた素材を2つまたは3つ組み合わせて変化を起こします。合成前に結果はわかりますが、強くなるだけではなく却って弱くなってしまうことも往々にしてあります。
フィールドの移動に限らず、街やダンジョン、戦闘に会話シーンも3Dモデリングされたキャラによって行います。フィールドの切り替えや戦闘シーンへの移行による遅滞はほとんどありません。ストレスなく楽しめるかと思います。ただ、技や魔法を使った戦闘は比較的かかる時間が長いです。簡略(高速)化することも可能ですが、数値だけで終わる、みたいなものはありません。
街やダンジョンにはセーブポイントが用意されています。これが曲者で、裏を返せば自由にセーブできないということです。よってプレイにとても計画性が求められます。止めようと思ってもダンジョンやイベントでなかなか止められないなんてことはざら。あまりにも社会人に優しくない仕様です。
ゲーム開始前に難易度を2段階から選べます。「BATTLE」は通常で「STORY」はダメージが半分ということですが、個人的な感覚では前者がハードで後者がノーマルぐらいではないかと思いました。
本作はエンディングを迎えるために必要ないダンジョンや敵が用意されています。いわゆるやり込み要素。
RPG部の世界の探索というのはなかなか楽しいです。戦闘をこなして、素材やアイテムを集め、新しい武器を作り、新しい場所へと進む。ゲーム的な基本はしっかり構築できていると感じました。
足回りはRPGとしてはほどほどなレベル。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、作動中はアイコンを再クリックしなければ止まらないので少し不便です。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、メッセージウインドウが表示されている時しか使えません。かなり戻ることが可能でロード直後にも使用できます。
ボリュームは「STORY」で40時間ほど。やり込み要素を寄り道していけばもっともっとかかるでしょう。「BATTLE」であれば言うに及ばず。エンディングを迎えると更なる高難易度モードが選択できるようになります。
シナリオは全体としてかなり説明不足気味です。後半にいくほど、この傾向は顕著になり、プレイヤーが憶測で物語をまとめるしかない面もあります。
反面、テキストは異常なほどに回りくどいです。なぜ、そこで文章(行数)を費やすのか、というほどにわかりきった場面で前に進まない描写が随所に見られます。その大きな要因は主人公の言動にあり、事あるごとに一時停止、もしくは巻き戻しを求めてきます。救世主の自覚があってなお、扉ひとつ開けるのを躊躇い愚図りだす有り様。当然、短気なヒロインの怒りを買い、さらに行数が割かれていくという悪循環。設定語りの薄さとは実に対照的です。間違いなくプレイヤーをふるいにかけています。
惹かれあう過程は文句なくありません。その何もなさには、この世界に愛や恋など存在しないのではないか、と勘違いしてしまいそうになるほど。取りあえず、釣った魚に餌をやらないのが救世主流。いちゃいちゃする様子など幻想です。諦めましょう。
Hシーンは言うなれば医師による治療です。その最中だけはいつもは使わない言葉が飛び交い、治療が無事に終われば二度と蒸し返されることはありません。よって何人でも治療しますし、ヒロインが弱った時に発生するのが大原則です。当然、複数人を同時に治療するなんてこともなく。
エロ度は低く、頻度もお世辞にも高いとは言えません。各キャラ1回が基本です。おまけでついているくらいの認識が妥当でしょう。
ネタバレ要素であるので詳しくは伏せますが、やり込み要素のある作品としてエンディングは非常に気になる幕切れでした。そのモチベーションを奪いかねない結末はシステムの方から見るとちょっとどうかと思ってしまいます。製作におけるシステムとシナリオの乖離でしょうか。
イベントCGに関してはさすがはリーフと感心しきりの出来映えです。ただし、差分を除いて90枚しかありません。2008年製、原画家5人、長期にわたる開発期間、ということを考えるといかにも少ないと感じます。また、デザインに整合性がないというか、等身などを含めてそも配慮する気がないように見えました。
3Dモデリングに関しては、この分野に対するノウハウの蓄積がほとんどないということを考えれば随分と頑張っていると感じます。人型のキャラがきちんと可愛く見えました。
ただし、リーフの売りである美しいビジュアルが比較対象であるため、どうしても「3Dにしては」という言葉がついてしまいます。立ちCGによる会話劇も代用していますが、反応が画一的な上(驚いたら全員にエクスクラメーションマークを出す、等)、SD表現や入魂のカットも使えないので魅力としては弱いように感じました。表現方法としても後ろ姿や拡大縮小による位置関係を活用した寸劇など、比べてしまうと明らかに洗練されていないことが露呈してしまうのも辛いところです。
戦闘シーンに関しては似たようなデザイン(流用)の敵キャラが多いことが気になります。主人公サイドの技や魔法が少ないあたりも戦術はもちろん、純粋な分量として残念でした。
Hシーンは担当原画家によって大きな開きがあります。けれども、全体としてはそれほどエロさはありません。
音楽はリーフミュージックということを考えるとインパクト不足に感じました。ただし、RPGというジャンルを考えた時、その旋律に飽きてしまうことがなかったのは十分に役割を果たしていたのではないかと思います。
ボイスはパートボイス。メインとなるキャラクターはフルボイスですが、サブキャラたちはあったりなかったり。演技は問題ないどころか聞き応えあり。主人公はシナリオで触れたように反りが合わないと悪い意味で高い効果を生んでしまうことに。
ボイスをオフにすると戦闘シーンも無言になります。
まとめ。各要素の噛み合わせが悪い作品。プレイする人間のことをあまり考えているようには思えない仕様の数々が気になります。コンシューマー移植前提と言われても仕方ない面がかなり目についてもったいないです。環境にもよるのでしょうが、修正ファイル後も発生する強制終了が痛い。
お気に入り:セシリア・キュベレー
評点:70
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、ベーグル
ある意味ではまさしく主人公。その存在が作品に対する好悪を決定づけるという。
素晴らしいまでの愚図りかたにもはや感動するしかなく。チャドは育児放棄して正解だったでしょう(違)。きっと赤ちゃんの頃でさえ。
こんだけビビリであったなら戦闘シーンだってもっとグダグダになるはずだと思うんですけどねぇ。毎回、戦うかどうかで一悶着。決まったら決まったでどの技をどれくらい使うかどうかで揉めて。戦闘中でヘタレないのがいっそ不思議なほどですよ。
色々と超越しているような気がします。教団に向かったセシリアが帰って来ないのを長いこと疑問にも思わないというか、そも忘れているのではという疑惑。リノンに告白されたことなんてきっと忘却の彼方であると思います。というか、告白されたら返事をするという反応そのものを知らないのかも。
2、リノン
本作では早い段階でHシーンがあるキャラほどその後をないがしろにされやすい傾向があります、を地で行くヒト。案の定、地核の門ではあわや人身御供になりかけるまで気付いてもらえなかった。
人の抱える寂しさに気付いてそっとやって来てくれるんじゃないのかねベーグルは? と思ったのは私だけではないはず。あんだけ不自然な笑顔を披露していたというのにねぇ。話しかけたらいつも笑顔って明らかに変でしょ。
3、ヤハ
分裂症の疑いあり。それくらいHシーンに至る流れは奇妙であった。冗談抜きで同一人物とは言い難いものがあったような。
リーガルフェイス戦での一幕は何の障害にもならないあたりが違った意味で切ない。同化されるよりも混乱している方が遥かに嫌であるという現実の前にはねぇ。
まー、そういう数値的な面を気にしないとしてもそもそも彼女の役割はなんなのよ、と。リノンを守るといいながら地核の門では黙っているだけでリーガルフェイス戦では言うまでもなく。悪魔たちが都合よく作られた存在であるなら、いきなり死んでもらえばいいだけの話なような。どうも中途半端ですな。よくわかりません。
4、マリア
よくよく考えるまでもなく、なぜ彼女が同行しているのか不思議。そして、なぜついてこれるほど異常な実力を、身につけられるのか。一般人のはずなのにねぇ。あと普通のシスターのはずなのに銃を標準装備して撃ちまくるってどうなのよ。
唯一無二の2回目のHシーンの内容には唖然とするばかりでした。君らは一体なにをしてるの? という。で、ここで思ったのが他に協力者がだーれもいないという厳しい現実。世界を救う旅なのに著しい人材難ですな。まぁ、救世主からしてそうか。
5、エレミア
なんか不思議な存在でしたね。デザイン的にHシーンがないことはちっとも構わなかったのですが、それはあくまで個人的な話。ところが、パーティー内でもエレミアに関しては女扱いしていないかのような会話ばかり。セシリアの時にはベーグルに狙われたらもう時間の問題、みたいな言われようだったのに。年齢的にも特にロリって訳じゃないよねぇ。ベーグルと同時期に孤児院にいたのだから。
6、セシリア・キュベレー
なんとも存在感のある方でした。彼女がいなければ物語はもっと軽く薄くなっていたと思いますよ。数少ない重みを与えてくれるキャラクターであったかな、と。
良いキャラではあったし、しっかりクローズアップもされていたとは思うのですが、それでもあっさり攻略されてしまった感は拭えませんでした。他に比較するようなキャラがいないからかもしれませんが。
Hシーンはひとりだけどうにかエロかったかな、という印象。待たされた感はうまく演出できていたと思います。RPGでは珍しいのではないかと。
7、ナタス
なんかコメントに困るキャラ。存在感があるようなないような。Hシーンもほとんど代替行為だしなぁ。ベーグルの方はともかく。エンディングでは一番、幸せそうでしたよ?
8、スウェン
声が全て。
9、チャド
対決シーンは感動的なシーンのはずがよく考えると家庭内の揉め事にも見えてしまうというツライ現実。マリアあたりの目から見てしまうとねぇ……。雰囲気から醒めないことを願うばかり。
どこかで聞いた声だと思えばまーりゃん先輩だしなー。
10、バディ
滝での一幕でようやくキャラ付けができたと思えばその後で即終了。もったいないキャラでした。結局、4人目どうこうというのはあんまり関係なかったですな。その疑惑も服装が似てる、ってベーグルのアホ発言が元だしね。
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