魔法が全てを支配する世界。デュオ(変更不可)は高名な大賢者の言いつけで魔法学園に通っていた。その理由も知らぬままに。やる気のない彼を待ち受けるものとは果たして。
クロスネットの新作はもう一つのチームFAVORITEの手がけた魔法学園ものアドベンチャー。
購入動機は原画及び彩色買いというところ。チームが違うということもあり「AYAKASHI」に対する個人的評価は全く考慮せずに買いました。動機が動機ゆえに、前作が前作ゆえにシナリオには全く期待せずに。
初回特典はポストカードセット。販促イラストが見られるという意味では良い特典かと思いますが、ポストカードである理由は相当に謎。嫌がらせにしか使えないのでは? それとせっかくの特典ながら店舗用販促イラストなどがないのは残念。
システムはオーソドックスなアドベンチャー。ゲームとして特別なところはありませんが、右クリックでメッセージウインドウを外して左クリックを押し続けることで等倍から2、4倍まで拡大させてCGを見ることができます(イベントCGのみ)。
足回りは標準クラス。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。コンフィグで調整しないとShiftキーでも未読スキップができないのは少し不便です。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが戻れる量はかなり控えめです。ロード直後にも使えるのはなかなか便利。
コンフィグで色々と調整できるのですが、ゲーム中はシステムアイコンをクリックしてからでないと何もできないのがひと手間、余計にかかっているイメージで印象がいま一つ。
シナリオというかテキストはかなりクセが強いです。順に書いていくと主人公はサトラレだったりします。登場する全キャラクターにその思考を読まれまくりです。けして考えていることを実は口に出していた、というオチではなくごく自然に読まれています。中盤以降になると主人公のモノローグとキャラクターが平然と会話したりするように。ちなみに主人公は考えが筒抜けなのにいつでも平然としています。行動まで筒抜けなあたりホンモノです。
次に主人公は設定及び状況説明が大好き。面倒くさがり屋のはずなんですが、彼はセリフでもモノローグでずっと解説してくれます。それはもう聞いていないようなことまで延々と。特にファンタジーものということで世界設定に関することは懇切丁寧に。ついでに解説役は主人公だけに留まりません。
さらに世界観を気にも止めないネタの多用。元ネタはそれなりにメジャーであってもその選びどころはマニアックなケースが多いです。また、日本のことわざや格言が非常に多く使われているのも特徴。
日常会話は上記のフィルターがうまく適合すればノリも良くなかなか楽しめるのではないかと思います。
互いに惹かれ合う過程は相当にいい加減です。最初から好きと言う訳でもなく、どうやらどこかで原因が発生しているようなのですが、普通に読み進めていてそれが全くわからない。よって展開は意味不明もしくは理解不能なことが多いです。
シナリオの分量がまともに用意されているのはヒロイン7人中3人のみ。残る4人は露骨にサブヒロイン扱いでメインとの共用差分シナリオだったりおまけシナリオ程度だったりします。そのまともな方も出来に関しては用意した設定を広げるだけで精一杯、うまく畳むことができていません。
Hシーンは当然のようにメインとサブで回数に開きがあります。メインは4回程度、サブは2回程度。純愛系にしては頑張っていますがやたらと尺が長かったり、反対に短かったりとバランスが悪いです。
CGは原画買いに応える美麗な仕上がり。2、4倍まで拡大できるだけあって彩色にはかなりの気合が感じられます。原画の魅力を殺すことなくより高める方向の塗りが実現できているかと。
立ちCGはイベントCGのように拡大はできないものの、等倍の範囲では十分に頑張りが伝わってきます。ただし、一部のキャラでイベントCGとの間に開きが見られるのは残念なところ。
Hシーンは半脱ぎ重視かと思えば全脱がしもあり、エロ度は高いながらもなんだか両極端に感じるところも。また、一部のキャラのHシーンが設定の都合によって事実上、Hシーンではなくなっていて疑問を感じなくもないです。
CG鑑賞モードは使い勝手が悪いです。拡大したCGは等倍に戻さなくては次の差分に変えられず、一度見始めたら途中でキャンセルができずに最後まで見なくてはなりません。理想は差分箇所に応じたチェックボックス形式ですが、せめて「次に進む」、「キャンセル」、「前に戻る」機能くらいは用意するべきだったのではないでしょうか。
バストショット鑑賞モードがあるのは素直に賞賛したいです。全キャラの立ちCGだけでなく背景も閲覧できます。ちなみにこちらの使い勝手はとても良いです。それだけにCG鑑賞モードはなぜ? と思えてなりません。
音楽は場面に応じた曲が用意されているものの、シリアスなシーンでかかる曲は似たものが多く印象に残りにくいです。むしろギャグシーンで使われる曲の方が個性的でした。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技レベルは高く、中でも男性陣は有名どころが揃っていて女性陣を凌ぐほど。実に豪華です。
まとめ。典型的なCGオンリー作品。それ以外の要素に期待しない方が無難といえるでしょう。目指したものは違えど結果的には「AYAKASHI」とよく似ています。ただ、理想の高さに違いはありそうで次回作への期待もおのずと開きが出てきそう。
お気に入り:ローラ
評点:55
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、シャル
最も何を考えているかわからないヒロイン、かなぁ。一体いつ主人公のことを好きになったのか完全に謎。ゲームが始まった時はもうすでに、という線はどう考えても無理があるような気がします。だって普通、成績のために好きな人を売った挙げ句に高高度自由落下とかしないですよねぇ。好意の裏返しだとしたら酷すぎます。
となると大賢者に対して共闘したのが惚れる理由ですか? それもいくらなんでもねぇ。もしそれが「あり」なら他のヒロインももれなく好きになっていないとならないし。まぁ、いくら考えても無駄でしょうけどね、きっと。
ゴンドラ関連の会話とかもう異次元の世界に突入していましたよ。よく設定ならスタッフはわかっているけどプレイヤーはわからずに置いてきぼり、というケースはありますけど心情描写でそれはちとどうかと。
2、エンフィ
声優の演技の使い分けという意味では申し分ないと思いますが、この世界の住人になったつもりで聞くとこの落差はかなりしんどいものがあります。もう思い切り嫌な奴と好きな人の声が体現できてしまっていてかなり微妙な感じです。何せ恋仲になった後もしばらくは人前では男バージョンの声だった訳ですから。もし自分が、とか考えたら相当、複雑なものがあるような。
それにしても怪我にかこつけてやってしまえ、という主人公の態度は問題ありすぎ。エンフィがその気になったらなったで怖じ気づくあたりどうしようもありません。そもそも状況を完全に忘れているあたりクズとしか言いようが。世界の危機はどうした。
3、アリス
我慢してシナリオを進めるのが大変でした。にゅるる〜、にゅるる〜とやかましいことこの上ない。もう普通に重りをつけて貯水槽とか沈めてしまいたかったです。
シナリオのオチは張った伏線が全てどうでもよくなってしまうあたり、なんか全部無意味という気がしないでもないです。
4、グラニテ
結局、羽メダマさんは何なんですか? とか考えること自体、負けなんでしょうね、きっと。まともに何かを推察しようというのが間違い。
補習を休んだら恋が芽生えるというのはある意味ではとても斬新かも。書いた時のライターの心理状態が気になります。
5、ディアナ
ただでさえシナリオがないのに本当の姿とやらを用意する意図は奈辺にあるのでしょうか。デザインするのだって時間がかかる訳だし、捨てキャラに捨てキャラを重ねるというのはどういうことなんでしょうね。
6、ローラ
立ちCGの顔の細さは正直言って異常なレベル。イベントCGとは違いがありすぎですよ。
シナリオ後半の展開はまぁ、いいとして問題はそこに惜しみなくCGを投入していること。そのおかげでまともなHシーンが半分なくなるなんて言語道断ですよ。立ちCGの演出だけで十分だと思うんだけどなぁ。シャルを立ちCGで脱がせたように。
結局、ローラ先輩はげっちゅ屋の特典テレカの絵柄(水着のやつ)が一番エロかったような気がします。
7、ソフィア
好意的に考えれば目の前で付きき合う様を見せつけられて刺激を受けて……、ということなんでしょうね。好意的に考えれば。
ローラ先輩が消えてなくなったから後腐れなく迷いなく乗り換える、というエンディングがとても香ばしいです。
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