ヴァリアブル・ジオ。かつて存在した忌まわしき大会。勝者は全てを得て敗者は全てを失う。消えるべくして消えたはずの悪夢が復活する。誰が何のために。望むと望まざるに係わらず女神たちはリングに集う。己の全てを賭けて。勝者は、ただ一人。
なんかV.G生誕10周年記念作品ということらしく、いつもの大きなパッケージだけでなく随分と色々な特典が付属しています。サントラ、デジタル設定原画集、販促イラストギャラリー、V.Gヒストリー総集編、プロモーションCDエキストラコンテンツ、マウスパッド、下敷き、コースター、ポストカードなどなど列挙するだけで疲れてくる充実具合です。私にはその価値はよくわからないのですが。
発売日当日まで買うかどうか迷ってました。過去のV.Gシリーズは一切プレイしたことはないし、そもそもこの企画自体にそれほど興味もありません。ぶっちゃけた話し、シナリオライターが丸戸史明氏であるから購入しました。よって過去シリーズとの対比とかそういったことは全くできませんのであしからず。
戯画では基本とも言える修整ファイルが出ています。一部の環境では強制終了してしまうことがあるそうなのでさくっと落としておきましょう。
システムはオーソドックスなアドベンチャースタイル。もちろん対戦格闘アクションはなく、選択肢でそれを代用している訳でもありません。
テキスト表示はやや特殊。基本はノベルゲームのように最上から背景に重なるように表示されますが、キャラクターのセリフにおいては枠線が引かれて地の文と区別しているだけでなく左端か右端にフェイスウインドウが表示されます。立ちCGがあろうとなかろうと。もちろん、これは固定ではなく喜怒哀楽によって様々に変化します。
一部の例外を除いてHシーンは全てアニメーションを採用。見たくない方のためにか選択肢によって回避できたりしますが(事実は変わらない)、手動において飛ばすことも可能になってます。
足回りは戯画にしてはかなり優秀。メッセージスキップは目で追えないほど高速。ただし、演出によってスピードにばらつきが出ます。
メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ロード直後にも使用可能、ホイールマウスに対応していてボイスのリピート再生もできますが、戻れる容量はかなり少なめ。真っ当な読み物なのだからもう少し戻れると良かったように思います。
シナリオは少年マンガの格闘モノを思わせる王道一直線。
物語は話数形式で進行していきます。各話の最後にはナレーション付きの予告ムービーが入ったりしますが、アニメ的なオープニング、エンディングの繰り返し演出はありません。
本作にとってすごく重要なこと。シナリオ展開はほぼ一本道。優勝者は決まっていて、対戦格闘アクションのように全てのヒロインに優勝するシナリオがある訳ではありません。当然、組み合わせもひとつだけ。
これを踏まえた上で書くなら本作は少年マンガに例えたように良くも悪くも非常に先が読みやすいです。対戦カードが決まった時点で勝者が容易に想像できてしまいます。人によっては対戦カードさえも推測可能。予測もつかない戦闘という感じがなかったのは残念。反対に言えば(先が読めても面白いマンガがあるように)予測がついても楽しめるだけの魅力は感じられましたが。
V.Gという世界の中で本領を発揮しきれていない感はあるものの、丸戸史明氏の描く日常会話は相変わらずセンス良く、素直に面白いと思えます。キャラクターの魅力を十二分に引き出しているのではないでしょうか。
反面、戦闘シーンのテキスト描写には若干の不満がありました。CGとSEを組み合わせた個々の描写はしっかりしていると思うのですが、ひとつの試合として見た場合に「最初は互角だが、やがてどちらかがリード、そして逆転。その後は一方的」と展開が切り揃えたように同じ(つまり最初にリードした方が必ず負ける)なのは少し工夫が足りないように思います。試合を離れたところではあまりそういった感じもなかったのですが。
各話ごとにヒロインの話を掘り下げていく手法はオーソドックスながらたいへん効果的だったように思います。望むところで欲しい話を盛り込んでくれるという感じで物語を理解しやすく、だれることもほとんどありませんでした。とくにダイアンライアンに関するエピソードの振り分けはうまかったように思います。
CGはオリジナルキャラクターデザインの他に原画家が二人いるせいか安定感を欠いている印象があります。カットによって雰囲気が異なるものが多かったような。また、立ちCGも含めて一部のカットは体のラインが明らかに変。棒立ちにしか見えないカットも散見されます。ちなみに本編では未使用のCGがパッケージに掲載されていたりも。
背景はカット毎に妙に差がありました。どう見ても豪華客船の船内には見えないものとかあって残念。
売りであるHシーンのアニメは可もなく不可もなく、というところでしょうか。同じキャラに見えないほど顔が似ていないなんてことはありませんが、反対によく似ているなんてこともありません(強いて言えばローランが一番似ていないか)。エロ度はほどほど、構図などにおいて特に刮目に値するものはありませんでした。ただし、Hシーンではないオープニングアニメは別。クオリティが段違いでこちらはまとまりの良さもあって必見の出来に仕上がっています。
音楽は物語を盛り上げることに大きく貢献しています。展開、シーンに合わせた曲がしっかりと用意されていて実に聞き応えがあります。いわゆる燃える曲も多いです。特に「女神光臨」と「We Survive」の各バージョンは作品を象徴するような良い曲かと。
どうでもいいことですが、個人的には「選ばれし戦士達」という曲が「Ripple〜ブルーシールへようこそっ」を彷彿とさせて仕方ありませんでした。曲調がとてもよく似ています。
本作はSEがとても充実していて驚かされます。予期しないようなところにまで用意されていたりしてスタッフの熱意が伝わってきました。戦闘シーン以外にも聞き応えあり。
ボイスは男性陣も含めてフルボイス。名前もないような警備員Aにまで用意されていて豪華な印象。ヒロイン一人一人とその他という区別で個別オンオフが可能になってます。演技は名前のあるキャラに関してはほぼ問題なし。多少、好みによっては厳しいキャラがいるかもしれませんが、基本的には充分合格点。
まとめ。良くも悪くも「NEO」というタイトルに相応しい作品。ファンは再出発点くらいに思った方がいいのでしょうね。私としては企画が好みでなくともやはり丸戸史明氏をスルーする訳にはいかないという嬉しいんだか悲しいんだか微妙な結果に。個人的には「V.G」シリーズではなく別の新作を期待します。
お気に入り:岡本歩美、坂本月夜、大鉄人18
評点:75
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、飛鳥優
冷静に見ると威圧感ありまくりのウェイトレスですわな。あのユニフォームもさることながらあのウサ耳がねぇ。初めて見た人は引いてしまいそうですよ。どう見たって店を間違えたと思うこと請け合い。働いている時はあれがうにょんうにゅん上下に揺れるんでしょうからねぇ。想像すると怖いです。胸元もちょっと。格闘なんかしたら大惨事ですよ、おとーさんってなもんです。
個人的には主人公というだけの魅力が感じられなかったのが辛いところ。あくまでも8人うちの一人に過ぎないという感じ。
2、三角沙奈理
悲しいほど噛ませ犬。最後の戦闘がなければ本当に救われない娘だ。というか、ああいういかにもなフォロー戦闘は男塾を思い出してしょうがなかったです。
3、アンナ・フェアゴールド
言われないとあれがウェイトレスの制服だとはとても気づかない感じ。いかにも悪役です、ってなデザインだからなぁ。Hシーンはあの格好で捕まっているのでむしろ笑いました。誰だ、考えた奴は。店の名前も同様でプロパガンダってファミレスの名前とはとても思えず。
彼女が改心(?)する過程は苦しいにも程があるって感じですが。あのシーンは単にムカついたから殴っただけかと思いましたよ。または目の前に殴りやすそうな顔があったからかとばかり。というか、裏返りすぎなんですよね、アンナは。
4、ライアンダイアン
これもアンナとは違う意味でウェイトレスには見えません。つーか、説明されても信じるのが難しい感じです。
ダイアンよりもリタの方が好きな私としてはエンディングは複雑でした。性格はともかく、それを真実の姿としなくても。
「なぁーんだ、ダイアンってたいしたことなかったんだ」というような沙奈理の言葉にリタの時でも敏感に反応するあたりが微笑ましいです。
5、武内優香
旧シリーズを全く知らないのでコメントしづらいですけど、なんか行き遅れに焦る様子が可愛かったです。だからあのHシーンに繋がるんですかね。正直、容姿とか性格とかさすがオリジナルという風格でした。優が主人公に見えないのはここらへんにも原因が。
6、相楽桂
ロリメガネ。それだけで個人的にちと厳しいキャラ。見せ場も一番、少なかったような。
7、玉真珠
正直、彼女よりもその回りの人間が面白すぎます。ええ、誰が何といおうと私は坂本月夜派ですよ。「たまころす」は最初意味がわからなくて数秒後に気づいて爆笑しました。
18人の兄弟子たちも最高です。落としどころというものを実によく分かっています。自分たちに素直な点も好印象ですよ。
8、岡本歩美
本作では最も丸戸史明氏らしさを発揮していたキャラ。他のキャラに比べて枷が少ないので作品世界で一番自由に動いている印象がありました。誰と絡んでも充分以上に面白くなるのもお得です。
彼女がお気に入りの私としては準決勝第1試合は見たくなくて仕方ありませんでした。勝者がわかるだけに最もツライ試合でしたよ。それだけに試合後は奇跡が起きたと思ってしまいました。まぁ、甘い考えだった訳ですが。
それにしても彼女のシナリオは随分と大がかりなパロディでしたな。デザインまでまんまなんで少し驚きでした。他のシナリオはそういうところもある、程度なのに。それとも私が知らないだけですか。
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