神奈川県川神市に武道を学ぶ学生の多く通う川神学園がある。ここに在籍する集団、風間ファミリーは街でも有名な存在だった。彼らが揃えばできないことはない。大人たちは信じなかったが彼らだけはその事実を正しく把握していた。ファミリーは長らく7人だったが新たな風が吹こうとしていた。 
  
 みなとそふと第2弾は川崎市を舞台のモデルに選んだ、ヒロインたちが全員武士娘なアドベンチャー。 
 購入動機は原画家が好きなので。 
 初回特典はまじこいマテリアルブック。予約キャンペーン特典はまじこいソングCDとシステムボイスCD。 
  
 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。 
 足回りは戯画謹製。「パルフェ〜ショコラsecond brew〜」や「この青空に約束を−」経験者にはとても馴染みのあるシステムです。というか、バージョンアップしている以外はそのまんまと言っていいです。SEまで同じという徹底ぶり。ただし、攻略の役に立つイベントシートはありません。相変わらず恐るべき完成度です。 
 メッセージスキップは既読未読を判別して高速。「次の選択肢へ」&「前の選択肢に戻る」機能も付属しています。 
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用できますが、それほど戻ることはできません。 
 カーソルをモニター右側面に持っていくだけでセーブ&ロード機能が使えて非常に便利です。しかも、左クリックでセーブ、右クリックでロードという使い勝手の良さが光ります。これが事実上のクイックセーブ&ロードであるためか、名称としてのそれは存在しません。 
 ひとつだけ困った点はクリック設定。うっかり左クリックを押しっぱなしにしてしまうと未読スキップが始まってしまいます。自分でそんなつもりがなくてもしばしば作動するので困りものでした。 
  
 シナリオは全12本。長編のメインヒロイン5本、中編のサブキャラ6本、長編の最終シナリオ1本とボリュームはかなりのもの。DVD2枚組7.2GBは伊達ではありません。感心するのはこれだけのルートがありながら、構成や機能によって同じ文章を読むことがほとんどないこと。学園行事などもルートによって変化をつけています。ライターの楽しませようとする意気込みが伝わってくるようです。 
 本作の特徴はとにかく豊富なキャラクターに尽きます。立ちCGのあるキャラだけで30人を越えるという凄まじさ。キャラもしっかり立っていて、笑いあり、シリアスあり、和みあり、ネタありで掛け合いは読み(聞き)応え十分。読んでいるだけで楽しめます。ヒロインが多くの登場人物の中に埋没するなんてことはありません。しっかりと輝きを放っています。 
 武士娘というポイント、当然ある数多くのバトル。この2つから連想されるのは尺をしっかり確保した高い緊張感を感じさせる戦闘シーンですが、本作においてはさにあらず。テンポの良い軽い描写の戦闘シーンがデフォルトです。熱さもありません。優秀なバトルで名高い作品群を想定していると肩すかしを食うかも。 
 戦闘の扱いからもわかるように本作は徹頭徹尾コメディです。良くも悪くも。細かいことは気にせず、おおらかな気持ちでプレイした方がより楽しめるでしょう。シナリオというか物語に期待しすぎない方が無難です。 
 惹かれあう過程はシナリオによって差があります。メインヒロインは概ねしっかりと書かれていますがサブキャラはその短さもあって最低限かそれ以下のものも。 
 お楽しみとして前作や製作チームの過去作との絡みも用意されています。ただ、知らない人のためのフォローが基本的にないので未経験者は置いてきぼりになることも。本作が初登場のキャラたちは丁寧に紹介されるため違和感が浮き彫りになっています。 
 Hシーンは本編だったりアフターストーリーで別枠扱いだったりしますが、メインヒロインはおおよそ各3回。サブキャラは1回。主人公はベッドヤクザなので純愛系作品としては異彩を放つシーン描写となっています。 
  
 CGは描いた時期に開きがあるのか、立ちCGとイベントCGで違いを感じました。立ちCGはどのような表情であれ目つきが鋭いものが多く、反対にイベントCGは優しげな目つきのものが多いです。中でもヒロインの一人クリスティアーネ・フリードリヒは別人に近いものがあります。大きなプロジェクトゆえの弊害でしょうか。基本的なレベルは申し分ないだけに気になります。 
 立ちCGは表情、ポーズ、衣装と実に盛りだくさん。差分抜きで90枚という定価とシナリオ規模の割にはとても少ないイベントCG枚数を補うだけのものを持っています。それだけに立ちCG鑑賞がないのが残念です。 
 背景は川崎市を知っているとニヤリとできるものが多数を占めています。 
  
 音楽は多彩な場面に応じた曲が用意されていますが、曲数ほどにはバリエーションを感じません。また、特定の数曲に偏って聞いていた印象が残っています。 
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。人数、レベルとも瞠目するメンバーが揃っています。中でも男性声優の豪華さは史上最高かもしれません。間違いなくボイスも本作の売りのひとつです。 
  
 まとめ。エンターテイメント性の高い作品。分類すれば浅く広くタイプの作品なので多くの人に支持される可能性を持っています。作り込みの高さもかなりのもので他メディアへの展開が今から見えるようです。 
 お気に入り:クリスティアーネ・フリードリヒ、黛由紀江、松風、川神一子、風間翔一、源忠勝、師岡卓也、大串スグル 
 評点:85 
  
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。 
  
  
  
  
  
  
  
1、宇佐美巨人 
 ゲンさんの父親というのが密かなポイントでしょうね。これがなければきっと印象は弱く薄くなり、人気も更なる下降線を辿ったと思います。マロードとは関わりなくて良かったんでしょうね、きっと。 
  
2、不死川心 
 んー、結局どのシナリオを見ても強いのか弱いのかわからない。最初がクリスシナリオだったせいかもしれませんが、この時はホント実力者とはまるきり思えませんでした。まぁ、トータルして2−Sの恥かき要員。 
  
3、井上準 
 心に次いで強さにばらつきがあるキャラ。もともと微妙な立ち位置のキャラでしたが、オーラスシナリオのために一気に不遇の立場に。なんか都合による強さの変動のようにも見えましたね。 
  
4、榊原小雪 
 オーラスシナリオまで説明がなかったゆえに奇妙に浮いたキャラに見えていました。それが伏線と言えば伏線だったんですが全て開示された今でも座りが悪いです。というか、下手にそこそこ面白いトリオとして書かれていたために繰り返しプレイにおける各シナリオの感触に変化が出そうです。少なくともこいつらの掛け合いは。 
  
5、葵冬馬 
 んー。同情はできないし、悪役としても色々と物足りない。これが全てかなぁ。たまにでも辛そうな顔を見せていたならまだわかるんですけど、どこから見ても恵まれているようにしか見えないあたりねぇ。学園生活も満喫していますし。結局は金持ちの道楽と大差がないよ、と。不幸に酔える余裕がある環境ではね。それと川神市を混乱に陥れることはできるのに、その中に立つ葵紋病院をひっくり返せないってどういうことなのか。 
  
6、九鬼英雄 
 過去作を知らないので関連する部分はちょっと敬遠気味でした。彼もオーラスシナリオでちょっと微妙な立場に。王なのにか、それとも王だからなのか。まぁ、大抵のユーザーが思ったであろうことを言ってくれたのは良かったです。 
  
7、忍足あずみ 
 最初は英雄のことを影では見下しているのかと思ってイマイチでしたが、それが違うとわかってからは硬軟の使い分けが良い感じでした。惜しむらくはクッキーに記録された乙女の記録がわずかたりともわからないことですか。 
  
8、九鬼揚羽 
 出だしが出だしですし、デモがデモですし最初はもっと強いのかと思ってました。それが姉さんシナリオでたいそう驚くことに。 
  
9、マルギッテ・エーベルバッハ 
 2−Sにぴったりと言うのは納得できるようでそうでもない面も。だってSクラスはFを見下している訳でそれに完全に同調しているというのがどうも腑に落ちません。だってFにはクリスがいるのにねぇ。例え自分はせずとも他者の言動だって放っておく人間ではないような。 
 意外と純情なところがあるのは良い感じ。未開花の鍋奉行スキルもなかなか。 
  
10、綾小路麻呂 
 正直に言うともし、京シナリオがなかったならマロードはこの方ではないかとちょっと思っていました。無論、いやいやそりゃないだろ、って理由もたくさんあるんですけどね。なんか期待というかそんな希望がありました。平安と家柄大好きな表の顔を嫌う裏の顔があるとか。 
  
11、総理 
 声優のキャスティングといいどんだけ好きなんですか、と。や、私もあまり憎めないキャラだと思いますけど。 
  
12、川神鉄心 
 最大の謎はなぜ綾小路先生を教師として採用したのか、ってことですかね。やっぱり、やんごとなき事情とかあるのかしら。 
 重要な箇所での出番はなぜか株を下げるばかり。特にワン子シナリオでの想像力のなさは、さすが持てる者の傲慢という感じでした。 
  
13、釈迦堂刑部 
 それまで良い敵役だったのですが、彼もオーラスシナリオで予想外の大暴落をかますことに。ちょっとさすがにあっさり負けすぎでないの、と。なんか待たせてそれ? というイメージが。 
  
14、ルー師範代 
 兜甲児というかマジンガーZそのまんまな技の数々が素敵。声優もノリノリです。 
  
15、板垣亜巳 
 意外にもオーラスシナリオではガクトとの絡みは一切ありませんでした。それだけではないんでしょうけど、意外と影が薄かったような気がします。超人が多すぎる中にあって女王様ではちょっとね。 
  
16、板垣竜兵 
 彼もまた本作の掟には逆らえない。すなわち男は女の引き立て役である、ということに。 
  
17、板垣辰子 
 出会いが早かったために期待が高かったです。姉と妹がほとんど当て馬であったために良いとこどりしている感がとても強いかな、と。Hシーンがないことも想定していたので、あった分だけ喜びが大きかったです。オーラスシナリオは事実上ヒロインが存在しないので是非ともアフターが欲しかった。 
  
18、板垣天使 
 てっきりモロの相手かな、と勝手に思っていただけにショックは計り知れないものがありました。 
  
19、小島梅子 
 ムチ以外は常識人なのが梅先生らしいところ。まぁ、教え子をしょっちゅう俗物と呼びますけど。なんだかんだでみんなはムチで打たれて喜んでいるところがクラスの結束を感じさせます(違)。 
 まさかシナリオがあるとは思っていませんでした。 
  
20、羽黒黒子 
 土壇場では良いところを見せてくれるので意外と嫌いではなかったりします。悪役レスラーの娘という設定がツボでした。 
  
21、福本育郎 
 クリスシナリオでの末路に思わず涙。そんなことって……。ポジションにしては声優は随分といい人を使っている気がします。 
  
22、大串スグル 
 幼なじみの話で涙を誘われ、三次元との訣別の儀式にまた涙を誘われ。スグルは僕らの分身か? 
 この役をカミーユが熱演しているという事実に萌えます。よくもまぁ、ここまでやってくれる、と感じる声優が多いですよ、本作は。 
  
23、甘粕真与 
 思わぬところで泣かされそうになりました。スイーツにはもったいなさすぎる親友だと思います。ただ、ヒロインとしては物足りなさが目立ちました。どう見ても主人公は手込めにしているし。 
  
24、小笠原千花 
 ガクトシナリオと本人のシナリオを見るに無駄に損をしているキャラなんでしょうな。プレイヤー視点だけでなく、ゲームの中で見ても。オーラスシナリオも更なる株価下落のために出てきたようにしか。 
  
25、熊谷満 
 こんな友達いたらなー、と素直に思わされます。ただ、食べているだけではなくて分けてくれるのが普通の大食漢とは違うところ。 
  
26、源忠勝 
 男ツンデレ。最後はきっちりデレて仲間入り。まさか、ワン子が好きだとは思いませんでした。てっきり兄として見守っているのかとばかり。密かなオールラウンダー。あらゆる場面で役に立つのでとても便利です。 
  
27、島津岳人 
 天才バスケットマンガクト。これだけで誰が声優かわかります。私はすっかり忘れていたので試合のシーンで気がつかされて大爆笑でした。 
 愛すべき馬鹿なんですが、それゆえに色々と悲しいことも。 
  
28、師岡卓也 
 優柔不断だけど友情には篤いところが色々な意味で好評。女装させれば天下一品。スイーツなど敵ではありませんよ? 
 しかし、自分のシナリオでは良いところを見せるどころか……。スイーツシナリオの顛末も悲しい。結局はガクトやヨンパチ同様の非モテキャラ。 
 そういやモロはなんであんなにキレキャラなんでしょうね。仲間を思うからって別にキレなければいけない訳じゃないよねぇ。 
  
29、風間翔一 
 風のような自由人。一見、無敵に見えてちゃんと弱点があるところが愛しい。風間ファミリーってなんだかんだで空気が読めない人が多いよね。 
  
30、川神百代 
 反則すぎるヒト。ラスボスが味方というのも半端ないです。しかも、MP切れないしねぇ〜。川神大戦のラストバトルはまさに大怪獣のようでした。 
 個人的にはあっさり陥落したように見えるのが残念。スタートラインに立てたらもう合格って感じで。ふられたのはあくまでスタートラインに立っていなかったから。 
  
31、椎名京 
 キャラを気に入ることができたならシナリオの出来も悪くなかったし、もっと楽しめたと思うんだけどなぁ。個人的な相性の悪さがもったいない。 
 暴言を吐いた武蔵小杉になんらかのお仕置きがあるかと思いましたが何もなし。なんでもソツなくできる、というのはこういう運の良さもあるのかな。 
  
32、川神一子 
 なんというか最初から最後まで弱い。まじこいのヤムチャとか不名誉な感じの異名がつかないことを祈るばかりです。ホント、見せ場も少ないし勝負弱いよなぁ。奥義を会得してもクリスと引き分けってさすがになぁ。将来的な実力差はともかく、あの時点でくらい勝とうよ。 
 師範代になれない=武術とはもうオサラバという極端さがちょっと気になりました。 
 ワン子の愛称通りの姿が可愛い。特に笛の音に逆らえないところが素敵。 
 モテる姿は本当に意外でありました。確かにネガティブイメージはないけど、代わりにあんまり女性を感じさせないしなぁ。第一、犬呼ばわりしておいて好きになったってなぁ。どうなのよ、それは。 
  
33、クリスティアーネ・フリードリヒ 
 素晴らしいいじりがいを持ったヒロイン。会話の楽しさは常に上位に入っていましたよ。どこまでいっても発揮されるお嬢様ぶりも良い感じ。 
 京シナリオでの活躍ぶりは予想だにしないものでした。キャップと2人ですっかり主役の座を強奪です。 
 HシーンのBefore Afterがすご過ぎ。そりゃマルさんも動揺して出てきてしまうさ。主人公の調教テクは純愛系には明らかに不似合いです。板垣姉妹ももっと時間があったなら、堂々と帰ってくるどころかマロードを捕縛していたことでしょう。 
 湯気の出ている真っ赤な顔の立ちCGが可愛い。特に白目がナイス。 
  
34、フランク・フリードリヒ 
 顔と声のギャップが凄まじいと思っていたらあのような奥義を! あの姿でもっと活躍するところが見たかったなぁ。 
  
35、黛由紀江 
 まゆっちと言えば松風。松風といえばまゆっち。そのトークたるやゲーム中を通じて楽しませてもらいました。それだけに松風消滅は頂けません。大和田さんに「大事なことを松風に言わせている」と言われてましたけど、松風が言ったことがまゆっちの責任になることは自明の理です。例えば松風が誰かの悪口を言えばまゆっちの責任は問われないかと言えばそんなことはない訳で。一旦、消えるのは仕方ないにしても帰ってきてくれても良いような。大事な個性ですよ? 
 真の強者はその強さをみだりにひけらかしたりはしない、を地で行くところが良かったです。本気を出しても大丈夫、殺すことはないと感じる相手が本作でも数人しかいないあたりがすごいです。 
  
36、クッキー 
 基本は1キャラなのに声優は3人ってどんだけ豪勢なのか。クッキー2も好きですが、何と言ってもデニーロとクッキー3の掛け合いですわ。よくもまぁ引き受けてくれたものだと思います。  
  
37、武蔵小杉 
 初登場時はまさかここまで弱いとは思いもよらず。気がつけば「プレミアム」を同じ発音で言いそうになっている自分に気がついたりしましてました。 
  
38、大和田伊予 
 悲しみのベイファン。私も今年までは同じ身分だから気持ちはよくわかります。ただ、我を失うのは無理ですけどね。個人的にはもうちょっと活躍して欲しかったです。まゆっちシナリオ以外で出番が少ないのがもったいない。 
  |