273   真剣で私に恋しなさい!S(みなとそふと)
 
 全てが正史。全てがあり得る可能性。すでにいる恋人との未来を選ぶか、それとも誰とも結ばれていない未来を選ぶか。直江大和(変更不可)の前に数多くの道が拓けている。
 
 みなとそふとの新作はタイトル通り「真剣で私に恋しなさい!」の続編プラスファンディスクの位置づけ作品。
 購入動機は前作がわりと気に入ったので。
 初回特典は真剣で私に恋しなさい!Sマテリアルブック、ドミニオンプロモカード、辻堂さんの純愛ロードA5チラシ。予約キャンペーン特典はまじこいSソングCD。
 
 修正ファイルが出ています。絶対になくてはならないものではありませんが、気になる方はあてておきましょう。
 
 ジャンルは今回もアドベンチャー。それ以外のコンテンツなどはありません。
 足回りは引き続き戯画製エンジン使用なのでとても安定しています。伊達にプログラムのクレジットに戯画と書かれていません。
 メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。「前の選択肢へ」&「次の選択肢へ」機能も用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にももちろん、使えますがそれほど戻ることはできません。また、この範囲であればクイックジャンプという戻る機能が使えます。
 カーソルを画面右端に持ってくるとセーブ&ロード機能が使えて非常に便利です。しかも、左クリックでセーブ、右クリックでロードという使い勝手の良さ。クイックセーブ&ロードはありません。
 左クリック押しっぱなしによる未読スキップ機能はなくなりました。
 
 シナリオはとても薄くなりました。とにかくひとつひとつのシーンが短くなってぶつ切りに近くなっています。前作では楽しめた軽妙な会話が多くのケースで長続きせずにあっさりと終わってしまいます。「〜というような話をした」、こんな感じのテキストが多く見受けられました。
 全体的に見ても時間がなかったのか、もしくはネタ帳を使い切ったのか、会話の密度が薄まってしまい、とても残念です。大事な長所のひとつを失ってしまったようにも感じます。
 ファンディスク的なアフターストーリーは尺が短く、ひたすらにHしている内容と言っても過言ではありません。
 新ヒロインによるシナリオもパワー不足が目立ちます。物語としての魅力に乏しく、単体や部分部分ではかなり苦しいものがありました。惹かれあう過程も同様で概ね丁寧であった前作が嘘のような唐突さで、およそあると言うにはかなり厳しいです。
 戦闘シーンの扱いはさらに軽くなりました。テキストによる地力向上ではなく、アニメカットインの導入という論点のすり替えのような手法に走ってしまっています。
 シナリオの本数ほどのワクワク感を感じないのが正直なところ。また、前作とは変わってヒロインであるのかどうかがわかりにくくなっているように感じました。
 各ルートは基本的にフローチャートから分岐可能で、進めていくと徐々に明らかになっていきます。
 Hシーンはすでに触れたように回数多めになっています。しかし、主人公のベットヤクザとアナルキングダムの重鎮という二大要素がシチュエーションや属性に大きな影を落としていてどれも似たりよったりの感があります。せっかくエロ度が上昇してもワンパターンで飽きやすくなっていてはもったいないです。
 
 CGは変わらずに大きな魅力となっています。枚数も差分抜きで127枚と大幅増加してくれました。ただ、その多くがHシーンであるため通常イベントCGに期待していると肩透かしを食うかもしれません。
 立ちCGは従来のものに追加していくといった方向性です。よって前作でやたらと目つきの鋭かった一部のカットもそのまま使われています。追加の中には前作で立ちCGが存在していなかったキャラのものも。おかげで会話劇で立ちCGがないケースというのがほぼなくなりました。これは登場するキャラの多さを考えるとかなりすごいことかもしれません。
 上述したように戦闘の一部にはアニメカットイン演出が入るようになりました。イメージはショートアニメといった感じで戦闘のラスト部分を演出しています。アイデアとしては悪くないですが、出来にばらつきがあります。単純に売りとしては見るに耐えないものが含まれており、むしろ逆効果に感じることが多かったです。言うまでもないですがテキストに代わる説得力があるはずもなく。
 
 音楽は新曲に前作アレンジという豪華な構成。今回も場面に応じた曲は用意されていますが、全体的に地味な印象は変わりません。ボーカル曲の力強さばかりが引き立ちます。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。その数100人以上だそうです。まさしく驚愕の数字ですが、前作ほどに効果的な使い方が見えないのが非常にもったいないです。テキストの分量、切れも影響を与えています。演技そのものは全くもって問題ありません。必ず好きな声優が含まれているでしょうから聞き惚れましょう。
 
 まとめ。どっちつかずが失速を生んだ作品。数字はすごいんですけど……、なケースが多く最初から続編として作っていればと感じてしまいます。9800円と前作と同じ価格にしてはボリュームも減少しており、良さよりも残念さの方が際立ちます。ライターが忙しすぎるのではないでしょうか。全力投球してこれならちょっと悲しいです。
 評点:60
 お気に入り:九鬼紋白、不死川心
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。人数に熱意のほどが表れています。
 
 
 
 
 
 
 
1、川神百代
 今回あまりいいとこなし。ひたすら燕に翻弄されている姿ばかり。決闘前のセリフさえいいように利用されている。あれは負けた時にこそ効果を発揮する言葉ですよ?
 
2、川神一子
 残念なことに犬っぽさ減退。この作品は成長によって個性が目減りする残念仕様なのです。まゆっちとおんなじで。梁山泊の一角を倒したとは言っても無警戒で与一の奥義を食らった後の話ですから、むしろより弱さが際立ったようにも。どんだけ。
 
3、クリスティアーネ・フリードリヒ
 色々と相変わらず。シナリオがあればあるほど主人公の罠にはまった感が強くなる憐れな娘さん。マルギッテシナリオがあるせいか、その後の絡みはなし。ここに関しては主人公の方が不甲斐ない。相手が期待しているのに。
 何度見てもヨンパチの姿に涙しそうになる。かつての童帝がクリスを羨むなんて……。
 
4、椎名京
 後日談だがほとんど意味がない。ひたすらHするのみ。
 今回も罠が多数。こういうのも出オチっていうのかしら。しかしながら、燕シナリオでないのはなんだか納得がいかない。主人公は騙されてますよ?
 
5、黛由紀江
 やはり、松風がいないと物足りない。キャラの魅力が褪せているように見えてしまう。恋仲であるゆえの言動の差にもなんだか違和感ばかり感じてしまう。好きなキャラなのに恋人でない状態の方が好ましいなんて厄介すぎます。
 妹が登場も結局、心と伊予を紹介するシーンがなく残念。調教されているような相手よりもやっぱり友達だよなぁ。
 心を上から目線で見るまゆっちなんてあんまり見たくなかったです。
 
6、板垣辰子
 今年は辰年ですが、それを力にすることもなくあまりパッとしないシナリオでした。なんというか、生態がワンパターン過ぎて飽きてきたというのが正直なところ。他の3人がいてこそという面もあって1人でヒロインを張るには厳しいです。
 
7、不死川心
 意外なほど魅力を感じられて驚きでした。というか、良いところに気付いた主人公を珍しく誉めたい気分に。まゆっちとの交流も微笑ましくて良い感じ。
 
8、マルギッテ・エーベルバッハ
 なんというチョロさ。トンファーがなければこうも脆い城砦なのでしょうか。下手したら難易度の低さナンバー1ですよ。予想より可愛かったというのがかなり救いになってます。
 
9、松永燕
 本作を気に入らないプレイヤーには戦犯も同然のヒト。不敗といえば聞こえはいいが、要するに毎回シナリオのような姑息とも言える情報収集を行っているということ。そして、似たようなセリフを吐いているのでしょう。納豆小町の名に傷がついていないところを見ると。
 納豆の売り込み方は異常で、これが非難されずにどうして長宗我部が非難されるのでしょう。男女の違いにしたって気の毒です。しかも、あっちは地方アピールなのに。
 仮面ライダーで衛星兵器な平蜘蛛にゲンナリ。しかも、さらに闘気が必要で命中させるのも難しいって兵器として駄目すぎ。九鬼はスポンサーを下りた方がいいと思います。
 
10、九鬼紋白
 本作の良心。最もましなシナリオが展開します。まぁ、主人公の方は酷いですけど。
 実年齢(知らんけど)の割りには分別をわきまえていて、過ちを認めることも出来るあたり妾腹とはいえさすがは九鬼の一族です。その爪を煎じて他のキャラに飲ませたい。


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