207   バイナリィ・ポット(オーガスト)
 
 今よりちょっと未来の物語。芦原洋一(変更不可)は可愛い制服とコーヒーが評判のネットカフェの店長。南の島で遊び呆ける両親(オーナー)に代わって店を守らなくてはならない。だが、社員は彼一人でウェイトレスは全てアルバイトというアレな構成。人件費という壁を前にしては他に道はなかったのでした。
 日々、待ち受ける様々な問題。しかし、なによりの問題は現実と遜色ないネットゲーム「ワールド」に洋一が仕事上の課題よりも優先してのめり込んでいることだった。
 
 新ブランドオーガストの第1弾はネットカフェウェイトレスアドベンチャーゲーム。このジャンル分けには色々と言いたいことはありますが、取りあえずはまぁ、良しとします。
 恒例の初回特典はオリジナルサントラCD。そして真の初回特典たるバグも憑いてます。幸いにしてゲーム進行を阻害するほど凶悪なものではありませんが、快適にプレイするためにあてておきましょう。
 
 システムはオーソドックスなアドベンチャースタイルにヒロインの居場所選択方式を加えたもの。一日は現実世界とネット世界に分かれていますが、システム的に区別はなく共通しています(ネット世界に居場所選択はなし)。よって某ファミレスゲームのような店長の育成要素もなければ、帰り際に同僚に声をかけるミニイベントもありません。
 足回りはなかなかに快適。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますし、そのスピードも充分に速いレベル。
 メッセージの巻き戻しは選択肢を挟んでも可能な上、ロード直後でも戻れる嬉しい仕様になってます。ホイールマウスにも対応していて、メッセージの巻き戻しだけでなく、送ることもそのままで可能。唯一、残念なのはボイスの再生。一応、付いてますが誤ってボイスをクリックで飛ばしたとき専用という感じで直後のみ使用可で、巻き戻し時には使用できません。
 
 シナリオは丁寧さが目につきます。ヒロインとの日常会話は悪くないですが、極めて現実的で無味乾燥なものが大半を占めていて、記憶に残る会話が少ないのが残念なところ。もう少しゲーム世界でしかあり得ないようなギャグ中心の会話があっても良かったのではないでしょうか。
 ネット世界では一部のキャラに現実世界とは異なる側面を出して二面性を表現したのが試みとしては面白かったと思います。
 多少気になったのはヒロイン5人のうち、2人ずつが組になるようにほぼ共通のシナリオであること。もちろんどちらかのキャラクター寄りのシナリオになっているので残ったキャラの印象が弱くなってしまっています。
 一番の問題は男女の距離の表現。お互いがお互いを好きになっていく過程が全くと言っていいほど書かれていません。スタイルとしてもヒロインの気持ちに主人公が気がつけばカップル成立という感じで主人公側の気持ちは完全にゼロ。ちとこれは問題なのではないでしょうか。
 全シナリオが収束する大団円的な(トゥルー)シナリオの存在は爽快感も感じられてなかなか良かったと思います。伏線の張り方もしっかりとしていましたし。
 一応、複数回Hは実装していますが、あると言えばあるし、ないと言えばないレベルなので売りにはなりません。むしろ中途半端なので不満に感じやすいように思います。
 全員を攻略するとトゥルーシナリオへの道が開け、おまけシナリオのプレイも可能になります。おまけはそれなりに笑えますが、もっとはじけた内容でもよかったのではないかと。
 
 CGはバイナリィ・ポットの制服のデザインが気にならなければ特に問題はないかと。少し特徴的なデザインだけに。結局、バイザーというかインカムを使っているようには見えないし(直接、声をかけている)、左腕のガントレットのようなパーツは何の目的で使用するのか不明というのも気になります。ただ、ブラジャーを脱がないと制服を着れないという設定は妄想をたくましくしていい感じかも(え?)。
 イベントCGはかなり少なめ。部分違い抜きで60枚は当確ラインをだいぶ下回っているのではないかと。通常イベントのCGが少な過ぎるのも気になります。枚数が少ないことに気づきにくいのがせめてもの救いでしょうか。
 立ちCGは制服か私服でほぼ固定。代わりにフェイスウインドウで賑やかに変化します。キャラの個性がしっかりと出ていて好印象。
 オープニングデモは本編とは別口でスタートメニューからメディアプレイヤーで起動。かなり大胆な仕様ではないでしょうか。不具合は減るでしょうが、個人的にはあまり嬉しくありません。本編中に内包してこそ演出的な意味も生まれると思いますし。その内容は極めて普通。映像素材が少ないこともあってかなり印象に残りにくいです。
 
 音楽は躍動的でノリのいい曲が揃っています。ゲームの世界観を構築する一助には充分なっているかと思います。
 主題歌はバイナリィ・ポットをイメージしたような歌詞重視の曲。個人的にはこういうのは参加声優全員のコーラスの方が効果的だと思うだけに少し残念。
 ボイスは「とらハ」シリーズか「水夏」を彷彿させるメンバーがメインを張っているので何の心配もなし。
 
 まとめ。良くも悪くも優等生的な佳作。一定以上の実力は示したと思いますが、これぞオーガストという部分が感じられなかったのが残念。それさえあればデフォルト買いの対象にさえなるんですが。
 あと、やはりこういった作品ならまともな複数回Hや結ばれた後の見ている方が恥ずかしくなるイベントは必須かと。
 お気に入り:羽根井優希(そりゃあ、やっぱりねぇ……)
 評点:63
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、羽根井優希
 やはり偉大なるは鳥居花音さんのボイス。それなくしては一歩も先に進めないことでしょう。逆に言えばキャラデザインにもっと力を注いで欲しいですな。
 何気に制服と私服でリボンを変えているところが気に入ってます。全ヒロイン中では最も主人公を想う気持ちが伝わってきたかな。
 彼女がマサトであることはその瞬間まで気づきませんでした。ちゃんと伏線は張ってあったんだけどねぇ。あまりにもわかりやすい二人がカモフラージュになっていたようにも思います。
 カプチーノのお散歩CGがお気に入り。犬ももちろんですが、優希も丸みのあるラインがいい感じ。
 
2、諏訪奈都子
 キャラクターは悪くないですが、シナリオはどう見ても里美のものですからねぇ。カレーでいうところの福神漬けでしかないというか。彼女メインのシナリオを強く要求します。現状ではオマケと変わりません。まるでお情けでHシーンがあるようで不憫。
 目が渦巻き模様のフェイスウインドウがお気に入り。
 
3、川中島里美
 弓道部的特技をネット世界にも活かすとかすれば、もっとキャラの土台がしっかりしたのではないかと思われ。
 毒クラス料理はCGも含めてなかなかのもの。個性が際立ってます。
 奈都子同様、主人公に本気で好意を寄せているようには見えない、というのが最大のネックだよなぁ。
 それにしてもメインではないとはいえ、「さとみ」ですか。本家といい、「らぶらぶティータイム」といい、こういった舞台には馴染みやすい名前なんでしょうか。
 
4、吉野佳澄
 えーと、年上メガネという回避すべき特異点なんでどうでもいいです。トゥルーシナリオのことがなければプレイしたかどうか激しく疑問。どうせ千歳のオマケですし。
 ちなみに大学をずいぶん前に卒業したような年齢であの制服はどうかと思いマス。
 
5、小津千歳
 年齢表示がないぶん、かなりヤバい匂いがします。特にHシーン。しかもいきなり嫁にもらうという連続技使用。イインデスカ? とか聞きたくなりました。個人的には主人公がペド野郎とかロリータ王とか従業員から苛められるイベントが欲しかったです。ってそれじゃほとんど「家族計画」ですが。
 正確には彼女のことではないんですけど、トゥルーシナリオでの「ここにも反体制主義者がいたか」という主人公のセリフが好きです。
 個人的には千歳が最もバイナリィ・ポットの制服が似合うと思います。なんか昔のアイドルの衣装みたいですしね。


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