異能の力を持つもの守護者(ジーニアス)。成人すると力を失う彼らはかつて迫害の対象であったが聖女の出現により時代は一変する。いまや世界の中心を担うのはジーニアスたちであった。
明智久司朗(変更不可)はジーニアスであってジーニアスではない。彼はそのふりをしているだけの偽物なのだ。久司朗が目指すものはただひとつ。特権を振るうジーニアスの世界の破壊である。
ういんどみるの新作は看板原画家のこ〜ちゃ氏がディレクターを務めるという謎の事態を生んだアドベンチャー。
購入動機は原画家にミヤスリサ氏が起用されていたから。そうでなければ悩むことすらなくスルーでした。
初回特典は原画、イラスト集。サントラにういんどみる3.0プロモーションカード「メフィスト」。予約キャンペーン特典は主題歌&エンディングCD。
いささか変わった修正ファイルが出ています。体験版と製品版が同居している状況で体験版をアンインストールするとスタートメニューが消えてしまうことがあるそうです。とはいえ、個人的にはなんともなかったので必ずしもそうなる訳ではないようです。
ジャンルはごく普通のアドベンチャー。話数形式を採っています。
足回りはやや配慮が足りない感じです。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、読めるくらいのスピード。ただし、「次の選択肢へ」機能があるのでそれほど気にはなりません。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることはできません。
1話が終わる毎にセーブの有無を聞いてきます。本作は1話のサイズが非常にコンパクトなため頻度がとても高いです。正直テンポを崩すくらいなのでコンフィグで選択できるようにすれば良かったのではないでしょうか。
シナリオは有名映像作品の影響を色濃く受けています。良く言えばオマージュ、悪く言えばパクリです。一見、意欲的な作品に見えるだけにスタッフに求められるハードルは非常に高いものがあります。結果的に作りはとても荒いです。用意した設定をライターが自分のものにしているとは言い難く、振り回されている印象さえ受けます。
当然のように複数ライター制の弊害が出ているのも困りもの。様々な面で協調性のなさを感じさせます。シナリオのパターンが被るのはその最たるものです。
シナリオの構成は大きく3本。そこからさらに派生して分かれていきます。メインヒロインである聖女候補のシナリオは設定の都合から分岐が用意されています。しかし、そこに差異は少なく全体のボリュームも乏しいため、あまり意味はありません。
メインヒロインのシナリオにも難があるというのにサブである(?)お付きの2人はほとんどおまけシナリオ状態。この6人に期待して購入するのはあまりに無謀だと思います。
本作では主人公だけでなくヒロイン側にも視点が用意されています。メッセージウインドウの色が変わるので切り替わったのがわかりやすいです。ただ、視点の変更自体にそれほど効果を感じません。どうしても必要かと言われると……。
能力を使った戦闘描写は実に淡白。やる気がないといわれても仕方ないくらいにおよそ盛り上がることがありません。直接的な効果をもたらす能力がないことも無関係ではないと思います。RPGの魔法で例えるなら補助魔法のような能力が多いです。
能力のひとつであるウイッチライブラリーは用語辞典のような性格を持っているのですが、困ったことにほとんど役割を果たせていません。用語が登録されて閲覧しても本文中のテキストがほぼそのままあるだけで、より詳しい説明などは得られないからです。面白味を感じさせるような記述もなく取りあえず用意した感が強いのは残念。
日常描写は具体性が薄く抽象的な表現が目立ちます。選挙があっても学園祭があっても新聞製作をしてもその様子が描かれることはほとんどありません。本番はもちろん、過程はそれ以下です。
色々と苦しい中でヒロインのキャラが立っているのが救いです。ここはブランドの特色らしく可愛らしく描けています。中でも明智光理はメインを張るに相応しい存在感を持っていると思います。
惹かれあう過程はとても苦しいです。最初から好感度マックスの相手を除けばなぜそうなるのかわからないシナリオがほとんど。
Hシーンはメインで2回サブで1回と明確な身分の差が表れています。テキストの淡白さはここでも健在で、連戦が多いので目立ちにくいですが尺はとても短いです。よってエロさはとても控えめ。
CGは2人の原画家が混在しても違和感なく仕上がっています。それでも、ユキヲ氏は動きを感じる原画が上手で、反対にミヤスリサ氏は固定されたポーズが得意という感じで、好みはともかく差はしっかりと出ています。
イベントCGはブランドの誇りといってもいいくらいなのでたいへん美しいのですが、困ったことにあまり効果的ではありません。Hシーンではエロさが足りず、戦闘シーンでは異能力を使っている、それっぽさが希薄です。またこれぞ、というカットが少ないように感じます。
立ちCGは鑑賞モードを見るまでもなく豊富です。特に衣装は驚くほど用意されています。ヒロインのお着替えは見どころといっても過言ではないでしょう。けれども、それがHシーンにほとんど影響を及ぼせていないところが本作の難点です。
異能力という題材を扱っていながら、本作のそれは見た目に地味なものばかりです。およそイベントCG以外に演出と呼べるものはなく、そうと言われなければわからないものがほとんど。色々な事情があるのかもしれませんが、もうちょっと派手さも考えた工夫が欲しかったところです。
音楽は相変わらず多彩で効き応えがあります。しっかりした曲作りは状況ごとに問題なく後方支援してくれます。特典が素直に嬉しくなる仕上がりです。
ボイスは条件付きのフルボイス。主人公は基本なしですがヒロイン視点の時のみボイスが用意されています。いきなり喋るよりは普段もあった方が違和感が少ないように感じます。例外的に自分視点でも喋ってしまう機会もありますしね。演技は男女とも特に問題ありません。明智光理役の澤田なつさんの演技はイントネーションに個性が感じられて好印象でした。
まとめ。オリジナルの皮を被った二次創作。それが悪いとは言いませんがやるからにはオリジナル以上の面白さを目指して欲しいです。例え部分的でも。テキストまで模倣が感じられるのは残念でした。
こ〜ちゃ氏はディレクターなんてやっている場合なのでしょうか。率直に疑問に感じます。
お気に入り:特になし
評点:50
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、葉月翠名
徹頭徹尾ダメダメな人。能力が嫌いなのに会う人のほぼ全員にロジカルダッシュを使っている。どうしようもないほどに二律背反。惚れる相手は未来が読めてはいけないけれど、そんな人は不審者確定という論理がすごすぎます。
主人公が逃亡した後の光理の問いにも答えてないよね。なにより聖女候補として人の上に立つ人間としての意見はないの、と。
2、光明寺夢子
空気を読めていないのは言動だけではなく、全キャラクターに対して存在自体もそんな風。
水無月学園編の戦闘シーンで彼女が勝ち誇るのは色々な意味で憐れな感じでした。
3、春秋詩子
説明されないと先輩だとわからない。描写も少ないのでつい忘れがち。
かくれんぼはこの人がいる限り無敵だと思うのですがテキストはまるで反映されず。どういうこと?
4、サクラ・ウインザー
主人公が倒れた状況で下着を選んでいるのはどうかと思います。
お付き2人のおかげで存在感が増してました。
5、アイリス・ウインザー
明らかに狙ったキャラデザですがそれが奏功しています。ただ、自分のよりも姉のシナリオの姉妹丼の方がエロいのはとても微妙。
6、雪見カエデ
疑問なのは東洋人の彼女がなぜ重用されているのかということ。ジーニアス全盛の時代性を考えても奇妙な感じです。そこまですげぇ能力って訳でもないし。
1000のメイド技とか笑うところなんでしょうか?
7、時雨里姫乃
いいキャラなんですけど、いきなりデレ過ぎて戸惑います。もうちょっとワンクッション置くとかしようよ。もともと主人公に甘いんだからさぁ。
ギフトが偽物という段階でシナリオとしてもうね。何でもありな感じに。
8、刀条院京香
こちらもマッハでデレるのでびっくりします。それ以上に驚きなのは彼女のギフトです。10メートル以内の直線上の転移。障害物があると例えそれがどんなものでも能力停止。ってそれは転移ではなくてただの超スピードなのではないですか。ベジータさんに突っ込まれますよ?
9、パトリシア・ランカスター
肝心なところを書かないシナリオ最右翼。でも、それに驚かないのがHHGクオリティ。
やはり、異様に好かれて驚きですが超単純なので他の2人よりは納得しやすいです。
パティの能力は強力なんですけど、なぜか有効に使われる機会まるでなし。敵の時だけということで主人公はやはり役立たずな感じが。
10、明智光理
メフィストじゃねーじゃん! とか言っちゃう人はこのゲーム的に負けなんでしょう。そう、私みたいな人は。結局、何もないんですよねぇ。基本が良キャラで本当に良かった。危うく何も残らないところでした。
11、明智久司朗
お馬鹿さん。ギアスの人と比べると露骨に偽物度高し。参謀なのに策を練らないし、分析もしないという嫌な新機軸。この男を陣営に迎えるとことごとく無意味に窮地に陥るという。ラグナレクのせいで消えそうになっても感動的なシーンにならないのは人徳のせいでしょうか。
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