始まりは2005年4月1日。ある程度のメーカーが行うエイプリルフールのお遊び。書かれたタイトル。それにどのくらいの反響があったのか、やがてそれは火種となり嘘から出た真となる。
ユーザーの声は偉大です。という教訓を残す名エピソードになるかと思いきや、世の中銭やと言わんばかりの理由から4000本限定というオチがついた複雑な生まれを持つ「碧ヶ淵」と「宵待姫」のファンディスク。発売前からファンディスク自体の抱える難しさについて考えさせられるタイトルはこれくらいでしょうね。望まれて生まれてきたんだかそうでないんだか。
購入動機はやはりなずな好きであるから。「宵待姫」をプレイしていませんでしたが、それでも買う気になったのは彼女に魅力を感じていればこそ。あと4000本になった経緯を聞いて余計に買わなくては、とも思いました。
初回特典は豪華極厚小冊子。絵本を思わせる頑丈な装丁が小冊子の名とは裏腹な感じです。中身は2作品の販促に使われたカラーイラストや描き下ろし漫画など。豪華の名に恥じない内容です。
コンテンツは誤解を恐れず言うならひとつだけ。ファンディスクというとアドベンチャー以外にもミニゲームやクイズ、壁紙といったものが収録されていますが本作は男らしくひとつ。ミニシナリオのみの直球勝負です。
足まわりは当然のことながら全て共通。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
バックログはネルの伝統かメッセージウインドウ単位のものと別画面のものと2種類が用意されています。操作としてはホイールで開始するのが前者でアイコンから開始するのが後者。基本的な機能はどちらも同じです。
好みで使い分ければいいと思いますが、メッセージウインドウ単位のものは戻ると自動的にボイスが再生される(つまり、一番新しいセリフのボイスがキャンセルされる)ので使い勝手がイマイチかも。
シナリオは全部で5本。内訳は「碧ヶ淵」2本、「宵待姫」2本、新作予告編が1本。詳細を書くと2作品ともメインの短編が1本でオマケのようなショートストーリーが1本。どうもショートストーリーはユーザーの要望を叶えたネタであるようです。
「薺ヶ好」:「碧ヶ淵」本編後のアフターストーリー。それまで週代わりで主人公のお嫁さんを務めていた3人娘。そのローテーションになずなが加わることになり、その初めての1週間、というストーリー。
発売から2年近くということで久しぶりの再会というイメージが強いですが、ヒロインたちの魅力は色褪せることなく、良い意味で相変わらずと思わせてくれます。改めてキャラクターの出来の良さに感心しました。
しかしながら、小さくはない問題が。そもそも本作は本編で不遇であったヒロインをクローズアップするという企画です。それ自体はかろうじて守られているものの、シナリオのネタが「すれ違いでぎくしゃく」というのはどうかと思います。演出まで用意された1週間のうち月曜から土曜まではうまくいかないという構成。果たしてユーザーはこんなお嫁さんの日々を求めていたのでしょうか。もっと尺が長い話ならわかりますが短編でこれはどうなのでしょうか。
個人的にはどうでもいいポイントですが、属性持ちの方にとってはなずながメイドではないというのは非常に重要な要素ではないかと。パッケージに表記した方がよいのでは? というくらいには。
Hシーンは私見で6回。その内でなずなに関するものは5回。それなりに頑張っているとは思いますが豪華極厚小冊子内の漫画「なずなであそぼ」の方がエロく感じられるのは微妙なところ。
「若葉の頃」:「宵待姫」本編後の物語。上で書いたように本編を未プレイなのでよく分かりませんが、それでもストーリーの復習をしてくれるのでついていけないということはそれほどありませんでした。ただ、プレイしていない身からすると若葉の専用エンディングがないというのは信じがたかったです。
Hシーンは私見で10回。その内で若葉に関するものは9回。データ面はもちろんですが、中身も踏まえると本作のタイトルは「若葉ヶ好」ではないのかと疑いたくなります。確かに近作はこちらでありますが、なずな目当ての人間からすると納得いかないものが残るような。
「新作予告」:発売時期不明な新作の予告編。主人公とヒロイン1人しか出ません。キャラクターデザインと演出の方向性がリアル→SDというくらいに変わっているのでこれまでのファンだと戸惑う可能性も。
あくまでも予告編なのでHシーンはありません。寸止め。
CGは絵買いに応えるクオリティですが、分量不足は否めません。純粋にアドベンチャー1本勝負なのだし、もうちょっと欲しかったです。それでも、立ちCGにも新しい衣装を用意するなど意欲は見てとれます。
音楽は新曲と旧曲を組み合わせた構成のようです。ヒロインたちの再会という意味では相応しいものの、場所が変わっていることを考えると厳密には微妙な気も。田舎から都会ですし。
ボイスは基本的に主人公以外はフルボイス。主人公の名前を変更することが可能な「宵待姫」シナリオはデフォルトネームだとボイスのフォローがあります。もちろん声優はそのままなので演技の方は全く問題なし。
ちなみに新作予告にはボイスはありません。まだ決定していないということでしょうか。
まとめ。タイトルに偽りあり気味な作品。2人とも好きなら問題ないでしょうが、なずな>若葉な人は要注意です。半分くらいはネルへのお布施のつもりでいた方がいいかも。
お気に入り:沢渡なずな
評点:50
作品の性質上、キャラ別感想はありません。
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