神崎真一(変更可能)は懐かしき病院に帰ってきた。研修医として幼き日の約束を守って。そこに恩人たる看護婦の姿はすでにない。だが、真一にとってそこが大事な場所であることに少しも変わりはない。研修を終えた時、真一はどのような思いを抱いているのだろうか。
Cronusの第5弾は原点回帰の感もある看護婦AVG。いつの間にか、CD3枚組になるほど出世していたようです。体感的には不思議とそれが感じられないですが。
前作は買い控えたものの、絵と馬鹿度がかつてのそれを取り戻しつつあるようなので、期待票的な意味で購入。
システムは場所選択型のアドベンチャー。
しかし、いつもとは違って主人公が病院内を移動する様がSDキャラで描かれています。だからといってこのキャラが人形劇を繰り広げる訳でもなく、ひたすらのんびりと移動するのみ。マウスをクリックすることで高速移動はしてくれますが、キャンセルはしてくれません。これが鬱陶しいことこの上ないです。無意味にプレイ時間を延ばしているだけでなにもいいことはありません。
設計者がこれでなにを表現したかったのか非常に謎。1階、2階、3階がそれぞれ画面切り換え方式なのもいたずらにストレスを増幅してくれます。病院の見取り図から直接、選ぶ方式(例えば「失格医師」のような)ではいけないのでしょうか。
わかりやすく、快適な動作。基本中の基本だと思うのですが。もしかしてこの移動システムをゲーム性とか考えてはいませんか?
今作の最大の特徴はイマジネーションシステム。簡単に言えば病院内でネタを拾って夜、妄想してスッキリとそんな感じのシステム。
目的は純愛シナリオでは表現できない、主人公にとって都合の良いHシーンを構築すること。ゲームクリアには一切、関係ありません。「Sweet Pleasure」は妄想どころか現実がそんな感じだったとは言ってはいけないのかも。
ネタは適度に馬鹿でそれなりにエロくて宜しいのですが、問題も。純粋なネタ数の少なさもありますが、どのようなネタでもCGは1枚な上、いわゆる行為の入り口しか描かれていないこと。主人公がかえって欲求不満にならないのが不思議なほど、しり切れとんぼに終わることが多いです。
恐らくは全体の構成として、お楽しみ(本番)は最後という意図でこうなったのではないかと推測されますが、このシステムの第一義が「エロの不足を補う」である以上、本末転倒かと。
そもそも姉妹ブランドを見るまでもなく、エロありきのメーカーであるCronusがなぜエロを補う措置を必要とするのかまるでわかりません。どうも自分たちの得意分野がイマイチわかっていないのではないでしょうか。
足回りはほぼ完璧。必要なものはほとんど揃っているでしょう。
メッセージスキップは高速で使い勝手も問題ありません。既読未読もきちんと判別してくれますし、コンフィグをいじれば強制スキップも可能です。
メッセージの巻き戻しはロード直後にも可能。ページもかなり戻れますし、ホイールマウスにもしっかりと対応しています。あとはボイスが再生可能になれば完璧かと。ホント、これだけはいつも文句ないんですけど。
シナリオは相変わらず進歩なし。自称純愛シナリオにはつける薬もありません。あくまで真面目に受け止めるなら、ですが。
日常会話は地平線の果てまで当たり障りなく、そうかと思えば動機も見えないままヒロインを口説き始めます。それもただひたすら相手を表面的に誉めるだけ。それでヒロイン全員が頬を染め、一週間後には両想いに。もはや異次元の出来事としか思えません。
個人的にはいい加減、純愛とやらは諦めるべきかと。まさかこれで「Canvas〜セピア色のモチーフ〜」や「みずいろ」あたりと勝負できると思っている訳ではないのでしょうし(ちょっと微妙なタイトルを上げてみました)。
また純愛を謳っているのに当直の休み時間に当直室で初体験とか、昼休みに空いている病室で初体験とかいうのはどうかと思います。そんなのがやりたいならそういった作風(zyxやトラビュランスのような)のゲームを作るべきかと。
CGは未だリハビリ中(あるいは修行中)といった感じ。見るべき構図、表情があるものの、どうもレベルが一定しません。中には同じキャラに見えないものさえ混じっています。
前作からの登場人物がいるとはいえ、キャラが思い切り被っているのはプロとしてどうなんでしょうか。葵羽鳥氏はあまり多くのキャラを描き分けられるタイプではないのでヒロインは人数を絞ってそのぶん一人当たりの密度を増やすべきではないかと。
3種類のナース服もいま一歩デザインが洗練されていないように思います。少しは「Pia」シリーズの気合を参考にした方がいいのではないでしょうか。
立ちCGも種類によって同一人物に見えないものもあります。どうも事前のラフスケッチとかが足りてないんじゃないですかね。こなれているという印象が受け取れません。
音楽はお馬鹿なノリの曲がないせいもあってまるで印象に残りません。強いて言えば妄想シーンへの導入曲くらい。古典的馬鹿馬鹿しさの演出。
ボイスはヒロインのみフルボイス。メインヒロインの声がレベル的に一番ヤバいというのはどうなんでしょうか。ちなみに個別のON/OFF設定が可能な今作において私は即刻OFFにしてました。
まとめ。どんなゲームを作りたいのか、それが見えない作品。あるいは自分たちの作りたいものとユーザーの求めるものが合致していないのかも。お馬鹿なテキストのお手軽ゲーを望んでいるのは私を含む一部の人間かもしれませんが、エロ重視のゲームは間違いなく多くのユーザーが望んでいると思うのですが。
容量の無駄遣いをしているようにも見えますよ。お手軽ゲーでないというなら評価も自然と厳しくなると思います。
お気に入り:藤園綾乃、若宮弥生(イマジネーションシステムのネタの馬鹿さゆえ)
評点:53
こんなですからキャラ別感想はありません。
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