176   DEEP VOICE(クロスネット)
 
 見知らぬ少女の不可解な夢を見た主人公、荻巧(変更不可)。目覚めるとそこは古めかしい洋館であり、人里はなれた病院なのだという。巧は交通事故に遭い昏睡状態に陥ったのだ。
 目覚めた巧は奇妙な能力を身につけていた。空間に漂う過去の言葉……、巧は視覚としてそれをとらえ、触覚として触れることで他人の思考を自分のもののように感じることが出来るようになっていた。
 
 ゲームとゲームのちょっとした合間に悩んで購入。極めて衝動買いに近いですが、一応はデモを見てそれなりに気に入ったというなけなしの理由もあったり。
 
 初回版には「DEEP DISC」が同梱されています。内容は壁紙やシステムボイスなど。簡単に言えばメッセの特典ディスクというところでしょうか。しかし、メーカーホームページのタグが単なるアドレスに過ぎないのはどうかと思います。ネット環境のないユーザーのために、という発想はないのでしょうか。
 
 システムはこれが一番の売りなのか、「ボイスリンクシステム」が搭載されています。なんだか声優ブーム時のプレステの怪しいゲームを彷彿とさせないでもないですが、もちろん関係ありません。
 簡単に言えば電波系システムとでもいいましょうか。夜になると部屋の中に会話の一部が複数浮かび上がります。これが選択肢にも当たります(もちろん通常シーンの選択肢もあります)。その他は通常のアドベンチャーと同じと考えてもらって問題ありません。
 ただし、デフォルトでメッセージ送りが「自動」に、メッセージ表記も同様に「無し」に設定されています。つまり主人公のセリフとモノローグのみ表示される訳です。
 この仕様はユーザーの好き好きでしょうが、今作の場合は問題があるように思います。その理由は「ボイスリンクシステム」も含めて選択肢には時間制限が設けられているものもある、ということです。「とらハ3」のように見た目にわかるのならばともかく、そんなこともありません。結果、それが選択肢だったのか、自動送りによるものだったのかわからないのです。コンフィグでいじれるとはいえ、このあたりどうかと思います。
 足回りは上述した理由とも絡んでややツライかと。バックログがないのはメッセージ送りが自動であることを考えると明らかなマイナス。テンポを重要視したのかもしれませんが、巻き戻す手段は残されてしかるべきかと。
 メッセージスキップは既読未読を判別してくれません。加えてキーボードでしか操作できないので不便です。
 
 シナリオは極めて意外性に欠けます。ミステリーやサスペンスものに「謎」は重要な要素だと思うのですが、マニュアルやゲーム序盤の情報から真実がほど近いところにある、というのは問題があるのではないでしょうか。予想の範囲内でしか明かされない、新たな事実というのはひどく退屈なものでした。
 主人公の能力はミステリー系作品の探偵役ならば喉から手が出るほど欲しいものです。しかし、今作の主人公には宝の持ち腐れであるように感じました。
 それは主人公が受動的である、ということもありますが、その能力によって見るものが証拠固めになるようなものではなく、エロ画像に限定されてしまっていることです。なんというか、エロビデオ入らずという程度の能力にしか感じられなかったんですよね。主人公の考察力も異常に低いですし。
 複数のヒロインを抱えていながら物語が一本道であるというのもツライです。純粋に繰り返しプレイが単調ということもありますが、知り得た謎を次回以降に活かせないというのもこういった作品では歯がゆく感じてしまいます(まぁ、活かすほどの謎がない、というのが根本的な問題なのですが)。
 
 CGはゲームの雰囲気に則した美しい仕上がり。キャラクターの表情もたいへん魅力的です。特にイッちゃった目は出色の出来で実に印象的。
 「ボイスリンクシステム」の演出もまぁ、悪くないと思います。なんと書いてあるのか読みにくいですけど。
 立ちCGも個性が良く表現されています。イベントCGとの差を感じさせないのもうまいです。キャラによって数に差があるのが唯一の難かと。
 
 音楽は及第点以上ではありますが、今一つ印象に残りません。曲が使用されていないシーンがあるというのも無関係ではないと思います。
 ボイスは各キャラとも特徴を把握した高レベルの演技を聞かせてくれます。ややオーソドックス過ぎるきらいはありますが。もしや担当は有名声優なんでしょうか。クレジット名に聞き覚えはありませんが、どこかで聞いたような声が多いです。
 
 まとめ。システムとシナリオがうまくかみ合っていない残念な出来。やはりアイデアに応じたシナリオが必要ではないかと。
 デモの方が良かった、とか言ったらマズいですか?
 お気に入り:残念ながらなし
 評点:50
 
 どうにも感情移入できなかったのでキャラ別感想はなしということで。


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