130   しろくまベルスターズ♪(PULL TOP)
 
 12月24日−。ただこの日のためだけに全てを費やす人たちがいる。それは言わずもがなサンタクロースとトナカイ。中井冬馬(変更不可)は中堅のトナカイであったが養成学校時代の新米サンタとコンビを組むことに。サンタたちは難所と呼ばれるしろくま町で無事に幸せを届けられるか。
 
 PULL TOPの新作はサンタとトナカイを題材にしたファンタジックなアドベンチャー。
 購入動機はブランド買いというかチーム買い。微妙に異なる面もあるので不安もありました。
 初回特典は2枚組サウンドトラック、プレゼントディスク、クリスマスカード。プレゼントディスクにはファンディスクを作らないPULL TOPなりのアプローチか、過去作キャラ共演の「ゆのかにベルスターズ♪」が収録されています。クリスマスカードはシリアル番号入りで様々なコンテンツをダウンロード可能とありますが発売当初の時点では未公開。果たしてクリスマスまでに間に合うのか(無理でした)。
 
 星名ななみルートで強制終了がありました。修正ファイルが出ていないことから環境に依存するバグである可能性が高いです。再現性がありましたが該当個所で強制スキップを用いることで対処できました。参考までに。
 
 ジャンルはごくごく普通のアドベンチャー。実はそう呼ぶのも語弊があるほど選択肢は少ないです。どのルートも最高で3つ(実質2つ)しか選択肢がありません。同ブランドの「てとてトライオン!」をイメージすれば間違いないと思います。
 足回りはやや貧弱。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的なスピードから少し遅いくらい。ですが、使用機会が少ないためそれほど気になりません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。また、スクロールバー等もないので戻りにくいです。ロード直後にも使用できます。
 
 シナリオは複数ライター制の弊害が素直に出ています。主人公やヒロインのキャラが違うことがあるなんてのは当たり前。描写において何を重視するかまで違いが出ています。
 架空の職業であるサンタとトナカイに対する描写は読み手を上手に実感させるレベルに到達しておらずいつもどこか抽象的です。いつだって突然、何かが起きる造語込みのテキストは地に足がついていません。これに起伏の少ない日常の描写が重なることで、退屈に感じやすい可能性が上昇しています。長いわりに密度を感じられません。
 日常の掛け合いは笑いの成分が少なめなのが困りもの。それでいて唐突にコアなネタを出されるため、笑うよりも呆気にとられがちです。良くない意味で落差があり過ぎるように思います。作品内で完結するネタで笑いを提供できていないのが痛いです。
 サンタやトナカイに関連した設定の活用は巧みとは言いきれず、放置状態のものやせっかくの設定を活かしきれていないものが散見されました。
 そして、シナリオ全体に言えることは無茶で強引すぎる展開が各所で目立つと言うこと。中にはあまりにも馬鹿馬鹿しくて読む気をなくしてしまいかねないものまであります。どうもサブキャラの活用を含めて丁寧さが足りていないように見えました。
 惹かれあう過程は複数ライター制もあってかシナリオによってまちまち。比較的まともなシナリオもあれば、言い訳が苦しいシナリオもあり、肉欲にしか見えないシナリオもありました。
 Hシーンは各ヒロイン基本的に2回ですが、なぜか月守りりかだけは水増し風味なシーン構成となっていて随分と多いです。エロ度は見た目のイメージ通り期待してはいけません。やや浮いている感さえあります。
 
 CGは相も変わらず少数安定です。イベントCGは差分込みで67枚SDカット込みでも82枚というのは2009年作品として少なすぎるのではないでしょうか。パッケージまで作中のカットの流用となるとさすがにどうかと思ってしまいます。また、使いどころも欲しいところになく、使っているところも「ここぞ」という感じがあまり伝わってきませんでした。CG自体は非常に良い出来であるだけに無駄に損をしているように感じてしまいます。
 鳥取砂丘氏によるSDカット群は数は少ないながらもメインに劣らぬ存在感です。笑いの少ないテキストもこれによって随分とフォローされているように感じました。
 エロ度はやはり、可愛さの方が遥かに勝っていてもうひとつな印象です。テキスト込みならまだしも単独ではやや厳しいかもしれません。
 
 音楽は冬のイメージを良く表した旋律が心に残ります。作品の雰囲気をしっかりと構築しています。数曲用意した定番クリスマス曲のアレンジも高い効果を上げているのではないでしょうか。2枚組サントラも納得の充実度です。
 ボイスは異様な充実度を見せています。メイン級も安定していますが、実際にはそれ以上に男性キャラやサブキャラに有名かつ有能なキャストが起用されています。スタッフロールで見るとどちらがメインであるのかわからなくなるほどです。
 
 まとめ。企画が煮詰まっていないように見える作品。当初の予想図と完成図にどれほどの開きがあるのか、それともないのか。作品を高いレベルでまとめるスキルを持ちながら、その力を発揮しきれていないように見えます。架空なればこそもっと面白い物語を。
 お気に入り:柊ノ木硯
 評点:60
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、星名ななみ
 アルコールでごまかすのはやめましょう。そんなのは現実でだって後悔する事例が多いと思いマスヨ?
 昔から好きといいながら他シナリオでの反応が不満。嫉妬どころかまるで反応しないってのはどうかと思います。
 きららシナリオのいらんこと言いが異常レベル。殴りたくなったななみはこのシナリオだけ。
 
2、月守りりか
 えーと、ニューヨーク帰り、つったって彼女は日本人な訳で。なのに作中の描写は金髪。よくエロゲーにも日本人の金髪さんは登場しますけどそのほとんどはキャラのイメージカラーみたいなもの(金持ちとか性格がゴージャスとか)で真実金髪ではないケースがほとんど。つまり、彼女は染めているのですか? だとしたらエロゲヒロインとしてはどうなんだろうか。
 ライターの趣味丸出しのレトロゲー趣味は普通に退く領域。他シナリオとの差が激しすぎて、当人のシナリオでだけ明らかになる魅力なんていいものには見えません。
 偏食の理由に腰を抜かしそうになりました。つーか、そんな理由なのにジャンクフードは食えるっておかしいでしょう。美食家的な理由なんだから。やはり、フィッシュアンドチップスは食べられないのだろうか。
 
3、柊ノ木硯
 最もまともな人なので安心する。料理の例を持ち出すまでもなく基本スキルに他とは差があり過ぎ。共同生活したくないレベルだよ、他のメンツは。
 硯が主人公を好きになる様子は無理がなく微笑ましい。部屋で転がるあたりも愛らしい。
 立ちCGのジト目の白目バージョンが素敵。ほとんど使われないのがもったいないですが。目を描かない大照れもなかなかですが。
 
4、鰐口きらら
 正直、シナリオよりも進さんネタの活用の方が面白い。声優が変わっていないのも嬉しいし、主人公だけでなく、きららがやってくれるのもまた嬉しい。
 それでも人車ネタは色々と強引すぎました。


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