108   秋桜の空に(Marron)
 
 学園で迎える二度目の秋。主人公、新沢靖臣(変更可能)とその悪友たちの問題児ぶりはすでに全校に知れ渡っていた。誰よりも学園生活を満喫しているような靖臣。だが楽しければ楽しいほど、心の内は諦観の念で満たされてしまう。果たして彼に何があったのか。そして、その未来は?
 
 この夏デビューのブランドMarronの処女作。発売延期、バグ搭載ともはや定番の感もある誕生のし方でした。
 
 ネットでの評判が良く、その推奨する条件(笑えるテキストが好きで「ONE」を未プレイであること)に私が合致していたのと、再販がかかったところを偶然発見したのを機に購入。
 
 システムは非常にオーソドックスなアドベンチャー。
 選択肢は基本的にどれを選んでも展開そのものは変わらない、小イベントだけが変化するタイプ。ゲーム内時間の10月4日にルート分岐が決定。条件となる選択肢がわかりにくいのがやや難。
 主人公の名前の設定はあだ名に加えて、その敬称も設定出来ます。ちょっとした遊びも可能かと。
 足回りはなんともデビュー作らしい仕様。画面の設定、メッセージスピードなどコンフィグの内容を記憶してくれません。立ち上げる度に変更するのはやはり面倒。
 メッセージスキップは既読未読お構いなしにすっ飛ばします。肝心のスピードは今ひとつ速くありません。
 メッセージの巻き戻しはわずか30行ほど(発言者名も1行に含まれる)に加えて、そのスペースに次々と上書きしていくので、どこだか非常にわかりにくいです。ちょっと誉められた出来ではありません。次回作以降は改善を要求します。
 
 シナリオはゲームを構成する様々な要素の中で燦然たる輝きを放っています。正確にはシナリオというよりテキストといった方がいいかもしれません。
 とにかくナチュラルに笑いを誘う文章で飽きさせることがありません。こと笑いに関してこのゲームは非常に得難いものを備えています。笑いのベクトルこそ違いますが、個人的傑作「ぶるまー2000」や「奥さまは巫女?」にも匹敵します。
 恋人になったあとの甘々な描写はかなり恥ずかしくて良いですが、Hシーンが一度きりなのは残念。
 この手のゲームの常として、後半はシリアスな展開となりますが、その移行は実にスムーズ。序盤からその気配を匂わせているので戸惑うこともありません。ただ展開そのものについては少し唐突な印象を受けましたが。
 エンディング近辺の演出にもやや疑問。今作はプレイする順番は特に定まっていないのですが、演出的にはメインヒロインを一番最後にまわすような作りになっています。ところが、シナリオ的にはその逆で、メインヒロインを初めに終わらせなければ話を受け止めにくい作りになってしまっています。
 あちらを立てればこちらが立たず、とバランスが悪いように思います。プレイする順番を固定しないのであれば、もう少しメインヒロイン以外のシナリオで情報を露出させた方が良かったのではないかと。
 
 CGは塗り、原画ともに発展途上中。基本的には良いものを持っていると思うので更なるレベルアップを望む、ってな具合です。枚数もけして多くはありませんし。
 イベントCGに関してはどのポイントを選ぶか、という部分とその構図に少し疑問を持ちました。もう少し熟考した方がいいかと。すごーく好意的にとらえれば斬新な発想と言えなくもないですが。
 立ちCGも同様。基本となる表情は良いと思いますが、顔の向きが変わったりすると場合によっては同一人物に見えなかったりします。喜怒哀楽の表現ももう一歩な感じ。全体的に惜しいと思わせることが多いです。
 
 音楽はCD−DAとは思えぬ地味めな曲作り。もう少しだけでも音源を考えた曲を揃えた方が良かったように思います。
 ボーカルはオープニング1曲、エンディングに2曲の計3曲。メッセージ性が強いのは昨今の流行りでしょうが、それにしても強過ぎです。曲を殺してまで表現しているような印象さえ受けました。加えてその歌詞がダイレクト過ぎます。ほとんどネタバレの域です。
 キャラが実に魅力的なだけにボイスがないのは残念な限り。まぁ、それだけに高い演技力が必要とされるでしょうが、最近はレベルの高い声優さんも多いことですし、実装して欲しかったです。
 
 まとめ。テキストが全ての要素を牽引するお笑い系アドベンチャー。欠点すらも覆い隠してます。ゲームで笑いたい方にはオススメです。
 もしキャラに則したキャスティングでボイス付きDVD版とかが出るなら私は確実に買います。
 お気に入り:桜橋涼香、佐久間晴姫
 評点:75
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、桜橋涼香
 甘やかしにかけては右に出るものなし。意外といそうでいないタイプのヒロインですよね。幼なじみだが年上というのも割と珍しいかも。
 その言動にはひたすら笑わせられますが、実際にいたら駄目人間が出来ること確実。まぁ、そこがすずねえのいいところ(?)なんですが。
 細かな不満は晴姫やひよりシナリオにおいてやきもちモードが炸裂しなかったこと。特に晴姫なんて絶好のシチュエーションだったと思うんだけどなぁ。
 
2、楠若菜
 カナ坊は正面カットと斜めからのカットで差があり過ぎ。同一人物に見えませんよ。
 主人公がカナカナ言うからといってセミ人間を思い出したのは私くらいでしょうとも。ええ、そんな変な人は(自己完結気味)。
 このゲームに限ったことではないけれども、病み上がりの人間に手を出すのはどうもね。痛々しいを通り越してますよ。
 
3、尼子崎初子
 メガネと牛並みの巨乳。そこに巫女を掛け合わせるとなんともしんどいキャラが出来上がりました。ってな感じです。
 性格的にはいいやつですが、ビジュアル的にやっぱりキツイです。しかも、こういうキャラは馬鹿やってる時の方が楽しいんですよ。
 
4、小泉ひより
 ……。こーゆーフォロー不可能なキャラはなんとも苦手です。独特の口癖もその過去も。なんか腫れ物に触るようになってしまいそうで。
 基本的に尊敬する要素の感じられない年上キャラはどうも。
 
5、佐久間晴姫
 的確に私のツボを突いてくる人です。序盤と中盤〜終盤のギャップによる破壊力が大き過ぎます。恋仲になるシーンは本気で驚きました。「そうくるかっ!?」って感じで。
 晴姫だけはメインとなる登場人物が違うので新鮮でしたね。そのかわり、共通ポイント(銭湯イベントなど)に出番が少ないのが残念。
 もう少し武彦さんについて色々と書かれるかと思ってました。
 
 うーん。本編で満足しているせいか、意外と書くことがありません。これっていいことなんでしょうかね?


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