毎日食物が廃棄されている
海外に食料を依存しながら、飽食に浸る日本。残飯大国の「食べない消費」が農産物需要の一角を担い「少食療法」が民の心を捉える。台所とは無縁の冷凍食品や惣菜が食卓に欠かせないものとなり、メーカーは商品開発に熱が入る。
そして、命を病む食。こうした食の病理は、食と農の分断が顕在化した姿である。消費現場で毎日繰り広げられるいびつな断面を「食べもの異説」として取り上げた。
◆年間、ご飯3,500トン
5万人が1年に食すると同じ量がコンビニの一つの会社から捨てられる。弁当などをマニュアルに従って消費期限の1時間前には棚から下ろす。手つかづの食べられる状態での廃棄が容赦なく行われている。
セブンイレブンは昨年度、弁当2億8千万食。おにぎり6億6千万個を系列の店舗に供給。この中、廃棄率2.3%。夜、閉店後に捨ている。翌日の午前中くらいまで大丈夫だが、翌朝開店時には新しい弁当がくるからと店長はいう。
戦後の食糧難を経験した者は、もったいないと食品衛生第一と仕方がないの板挟みで複雑な心境、今は商売と割り切っている。
◆大都会東京の朝は、つぎつぎに残飯を押し込んだポリ袋の山が築かれる。ちなみに可燃性ごみは、年間250万トンを超す。このうち3分の1余りの87万トンが台所のごみと推定する。ホテルやスーパーは大量で別の一般廃棄物処理業者に以来する。
◆京都市内50世帯の無差別家庭ごみの中身を分析した。37.5%が食べ残しで、そのうち14%が買ったままの姿。気楽に捨てる。正に放食の生活スタイルである。
◆1人1日当たりの供給熱量は、2,638キロカロリー(95年度食料需給表)だが、摂取熱量は、2,042キロカロリー95年度国民栄養調査。その差の600キロカロリーが消費する際のロスと無駄な食べ残しなどである。
農産物需要の一端を「食べない消費が支える」その矛盾が拡大している。
=1997/08=