●クリエイティブコモンズ
■クリエイティブ・コモンズとは?
クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)とは、インターネット上のある著作物に対する著作権者が、その著作権を部分的に放棄することで、著作物の様々な利用を促進することを目的としたプロジェクトです。
一般的な著作権の考え方は、著作権者の権利を保護し、その権利が他者によって侵害されないように”守る”ことを指向する傾向にあります。(日本の)著作権法においても”公正な利用に留意”しながらも”著作者等の権利の保護を図り”、これをもって”文化の発展への寄与”をその目的に掲げているわけです。
しかしながら、すべての著作者、著作権者が、その著作物(作品)の”保護”を望むわけではない、という現実があります。
例えば、自作の楽曲を自らのホームページからインターネット配信したいアマチュア・ミュージシャンは、その曲が他人に盗作されて市販されることを恐れるよりは、むしろ、出来るだけ沢山の人に人に聞いてもらい、場合によっては曲を聴いて好きになってくれた高校生が文化祭で自分の曲を歌ってくれることの方がより価値があると考えることでしょう。
また、プロの漫画家がある作品をクリエーティブ・コモンズの下に一般の人に”リミックス”させ二次利用を促進させる、といったケースもあるようです。
とはいえ、クリエイティブ・コモンズは決して著作権法にある権利者の保護を”緩和”させよう、という運動ではなく、(例えばある作品については)著作権の保護を緩和しても構わない著作権者が、著作権法によって著作物の流通・利用促進が過度に制限されてしまわないようにする、というスタンスの運動です。
端的に言うと、著作権を全て留保する"All Rights Reserved"と、いわゆるパブリックドメインである"No
Rights Reserved"の中間の"Some Rights Reserved"が、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが規定する領域であるといえます。
■クリエイティブ・コモンズの成立経緯
クリエイティブ・コモンズは、2001年にスタンフォード大学教授のローレンス・レッシング氏を中心として提唱されたプロジェクトです。
元々、コンピュータのソフトウェア開発の世界では「オープンソース」という、そのソフトウェアの設計図にあたるソースコードをインターネット上などで公開することで、誰でもがそのソフトウェアを改良でき、結果、より質の高いソフトウェアが開発される、という考え方・姿勢が浸透しています。
インターネットの普及により、ソフトウェア以外の各種著作物(WEB、小説、音楽など)についても同様のアプローチが有効ではないか、という考えが芽生えてきました。
そこで、無償ソフトウェアのライセンス機関である GNU General Public License
(GNU GPL)に倣い、ソフトウェア以外の著作物(デジタル・コンテンツ)全般を、オープンソースのように扱い、著作物の活発な流通、利用促進を図ることを目的とし、クリエイティブ・コモンズが立ち上げられました。
レッシング教授のほか、法律関係者であるジェームズ・ボイル、マイケル・キャロル、モリー・シェーファーヴァン・ハウウェリングなどの各氏や、MIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピュータ・サイエンスの教授であるハル・アベルソン氏、弁護士/ドキュメンタリー映画製作者/電子法律の専門家エリック・サルツマン氏、映画製作者デイビス・グッゲンハイム氏、日本の企業家(デジタルガレージ社長)の伊藤譲二氏とパブリック・ドメイン・ウェブ出版者のエリック・エルドレッド氏などが取締役会として参加しています。
機構としてはこのほかにテクニカル・アドバイザリー・ボードがあります。実際の運営はクリエイティブ・コモンズのスタッフのほか、各国におけるサポーターによって行われています。
■クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
次に、実際の利用について説明します。
ある著作者がインターネット上に著作物を公表するとき、クリエイティブ・コモンズが提供する『クリエイティブ・コモンズ・ライセンス』というパターン化されたライセンスをインターネット上で掲げることで、その著作物はクリエイティブ・コモンズとして流通されることになります。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスには以下の4種類のライセンス・オプションがあります。
・帰属(attribution、by):ライセンスの許諾者は著作物の利用を許諾する代わりに、受諾者は必ずライセンスのクレジットを掲載する必要がある
・非営利(Noncommercial、nc):ライセンスの許諾者は著作物の利用を許諾するが、営利目的の利用は認めず、その際は別途著作者の許諾が必要
・派生禁止(No Derivative、nd):ライセンスの許諾者は著作物の利用を許諾するが、受諾者は著作物を一切加工して利用してはいけない
・同一条件許諾(Share Alike、sa):ライセンスの許諾者は著作物の利用を許諾するが、受諾者が著作物を加工し二次的著作物を頒布する場合、受諾者は当初の著作物の同じ条件でのみ頒布が可能
これら4つのライセンス・オプションの組み合わせにより、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの使用の際は以下の6つのバリエーションがあります(帰属(by)は6バリエーションすべてに必要)。
1.帰属(by)
2.帰属-派生禁止(by-nd)
3.帰属-非営利-派生禁止(by-nd-nc)
4.帰属-非営利(by-nc)
5.帰属-非営利-同一条件許諾(by-nc-sa)
6.帰属-同一条件許諾(by-sa)
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