今年は世界中で流行した疾病の為に何もかもが狂った様な年だった。――尤もまだ八月であと四か月残っているけれど。
望海は学校のプールの女子トイレでビキニに着替えながら少し強く鼻息を漏らす。家族旅行も出来ず修学旅行の予定も未定になりしかも体育のプール授業も中止でこのまま高校受験に突入するのかと考えれば憂鬱にならない方がおかしい。そんなある日『求む。プール開き用掃除要員』と聞けば胸が逸ってもおかしくあるまい。ただし問題は咄嗟の事でスクール水着が間に合わなくなってしまった事だった。入学時に購入していたスクール水着はここ最近成長した胸では窮屈で、だが今年はもうプール授業はないからと新調せずに終わると思っていた為サイズが合わない…流石に乳房や下腹部に激しく食い込むスクール水着は避けたく、今日持ってきたのはビキニだった。
「まぁ…授業じゃないし」飾り気のない水色のビキニは布は乳房と下腹部を覆うだけであとは紐だけというかなり大人びたデザインだが中学三年生の望海では健康的な印象を強めるだけでありいやらしさは感じられない。――少なくとも、当人としては。「さぁて頑張ろう!」
そう言い望海は女子トイレから陽光下へと出ていった。
嘘、嘘、嘘。
藻だらけの水を抜いてデッキブラシで擦り続けて小一時間。漸く終わりが見え始めたプールの中で望海は顔を上げる事も出来ずに操っているデッキブラシの先だけを見ながら耳まで真っ赤になっていた。
他にも掃除要員はいる。但し、全員男子だった。プールが好きであっても引っ込み思案な所のある色白でおさげ髪の望海は一クラス分…恐らく三十人前後の男子の中でただ一人掃除に勤しんでいた。海パンと言っても競泳用の水着は男子の腰にぴったりと貼りついておりしかも濡れたそれは尻肉や股間の形をはっきりと浮かび上がらせており望海の瞳にはいやらしく映ってしまう。しかも一人だけの女子である自分はこの場では当然浮いているらしく全員の視線が容赦なく絡み付いてくる。何故ビキニで来てしまったのだろうと後悔するものの食い込むスクール水着ではもっとまずい事になっていたかもしれない。
男子に興味がないと言えば嘘になる。だが、海パン一枚の男子が目の前で大勢うろうろしているのは刺激が強過ぎる。ましてや……、
『あれ…大きくなって…る、よ、ね……?』
何人も海パンの前の部分が必要以上に盛り上がり、まるでフランクフルトを中に忍ばせているかの様な形が判るのに気づいてしまってからは、望海はどうしてもそれを意識してしまっていた。放課後の学校のプールだから何かおかしな事はないだろうがだからこそ密かな異常な熱気が水を抜いたプールの中に漂い、少女を興奮させてしまう。男子も大勢であるし何もない。何もないからこそ、中学三年生女子は密かに妄想してしまう。まだ見た事のない異性の性器や、少女漫画では判らない現実的な性交の姿。
『どうなってるのかな…硬いのかな……』
ドキドキと高鳴る胸の鼓動と八月の陽気と掃除の運動で白桃を連想させる薄桃色の肌に汗が流れ、デッキブラシを操る為に足を開いて踏ん張る望海は、自分の乳房がたぷんたぷんと弾みビキニのその奥を迂闊に見せつけるかの様な腰を突き出す体勢がどれだけ男子を刺激しているかに気付いていない。気まずい、だが妖しい期待を帯びた空気は、やがて破綻する。
「わ…あ!」
藻だらけの水を洗い流すホースの水流から逃れようとして転びかけた望海は僅かに溜まった水に足を取られて足首を軽く捻った激痛に悲鳴をあげた。そのまま転んでしまいそうになる望海を反射的に助けようとした近くの男子にしがみつき、ばちゃんと水音を立てて縺れる様に尻もちをついた少女は、何かが自分の指に引っかかっているのとそれとプールの床とは異なる熱く硬いものに乗っているのに気づく。
「え……、あ…わ……!」
男子の脚に跨る形で尻もちをついた望海は、あるべきものが目の前にないのに気づきおかしな声をあげた。
日焼けした腹部の下に生白い、だが引き締まった腰…だが腹部の下は望海よりは濃い剛毛が生え、そして十五センチ程はある赤黒いモノが天を仰いでいる。灰色の皺だらけの付け根の巾着袋みたいな物から先端へ伸びている細い襞、浮かび上がる血管、そして琵琶に似た膨れ上がった先端。それがびきびきと跳ねている。足首近くに尻もちをついてしまった望海の目の前にあるそれにおさげ髪が当たっていた。髪の量が多い望海の三つ編みはかなり太いのだがそれよりも初めて見た男子の性器は太かった。転んだ時に引っかけてしまった男子の海パンは未だに指にかかったままであり、そして望海のビキニのパンツは、紐がほどけて足元に落ちているのだがそれに気づく余裕もなく少女は目の前の性器に身動きが取れなくなってしまう。はぁっはぁっと漏れる熱い息がかかる度に男子の性器がびくびくと跳ねあがり、そして誰も触れていないまま先端から蜜の様な粘り気のある液体が垂れていく。痛々しい程赤い果実の先端の亀裂や、続く棒状の手前のぷっくりとした膨らみから目が離せずにいる望海は、周囲の男子が異変に気付き近寄ってきている事すら気付けずにいた。
「井上ってさ、痴女?」
「ちが……」
全身が脈打っている様な激しい動悸の中、思わず手を振って否定しようとした望海の指から海パンが離れぴちっと音が鳴る。自分が男子の水着を引きずり下ろしてしまったらしいと気付き頭が真っ白になる望海の身体を左右から他の男子が引き揚げ、そして目の前で足首まで海パンが落ちている男子が立ち上がった。日焼けした引き締まった水泳部男子の身体に強烈に異性を感じ、顔を背ける望海は、自分のビキニのパンツが脱げているのに気づき慌てて腰を隠そうとしたその腕を、男子が引き寄せる。
「大体さ、何その恰好。学校で紐ビキニとか見て欲しくて仕方ないんだろ?」
「ちが……っ」
「先刻から腰突き出したやらしいポーズで掃除してエロいんだよ」
「わざと等々力の海パン脱がしてチンコじっくり見て興奮してるとか、お前狙いすぎ」
「いや…っ、いや……ぁっ」
足首から海パンを抜き全裸になった男子に背後から二の腕を捕らえられ、他の男子へと向きなおらされた望海のビキニのブラジャーの蝶結びがするりと引かれ、大勢の男子の目の前に少女の乳房が露わになる。巨乳とまではいかないもののそこそこの大きさの処女の乳房とピンク色の乳輪と乳首が陽光に晒され、だがそれは既に淫らに尖りつつあった。
「――っ……ひ!」
背後から自分を捕らえている男子の腰が重なり、ぬちゅりと望海の下腹部の溝に先刻見たあの立派な威容が密着した。少女自身の汗と男子の先走りの汁が天へと反り返る幹に絡み付き、他の男子達が眺める毛の薄い牝の下腹部から赤い亀頭が生えているかの様な光景になる中、望海は現実から逃れる様に首を振る。振る度に、剥き出しの乳房が揺れる。
「井上に襲われたって言ってもいいんだぜ」
「ゃ……、ぃゃ……っ…うごか…さない……で……ぇ……っ」
ずりゅっずりゅっと下腹部で硬く熱いモノが動く度に望海の全身に震えが走った。見過ぎてしまった…じっと注視してしまったモノが自分の性器を擦っていると嫌でも想像してしまい小声で制止しようとする声がはしたない媚びを含んでしまう。それに軽い中腰になってくれている男子のモノは天へと反り返り、何か間違ってしまえば望海の膣内へと突き進んでしまいそうな恐怖が抵抗する動きを凍らせる。それは、他の人間から見ればビキニのブラジャーをだらしなく引っかけているだけの少女が牡の性的悪戯に逆らう様子もなく見悶えているだけでしかない。いやっいやっと小声で繰り返すだけの望海の下腹部で潜り込んでは姿を現す男子の傘に小粒なクリトリスが露出し、ぬちゃっぬちゃっと鳴り響く粘着質な音が、徐々に大きくなっていく。
「――井上のまんこ、濡れてきてないか?」
「ぐちょぐちょになってきた」
「やっぱ痴女じゃん」
「ちが……っ…ちがうの……っ…あっ…いや…ぁ…っ、ぁ…っ、だめ……っ…そこ……ぉ……っ」
「大声出すなよ?近所に聞かれたら即バレるからな」
周囲の住宅街から辛うじて視界を遮られているプールのその中で、男子の腰の動きが荒々しくなると望海の足はそれに合わせる様に踵を浮かせて男子に腰を突き出し自ら腰をくねらせるものへと変わっていく。自慰では得た事のない強烈な刺激と衆人環視の中背後から弄ばれる異常な興奮に、小声で喘ぐ望海の腰から滴る愛液は下腹部だけでなく内腿にまで垂れていき、水の濡れとは異なる滑りでプールの底の水が弾く陽光にぬらぬらと輝いていた。密かな自慰では予想もつかなかった夥しい濡れに気付く余裕もなくクリトリスと溝を擦る傘と幹の刺激や、背後から重なる男子の剛毛や自分を捕らえる腕の逞しさに悶える少女の精神にじわじわとしてはならない妄想が過る…このまま貫かれてしまったらどうなるのだろうか、避妊具など当然着けていない…着けていない、あの、猛々しい男性器。あれが今いやらしい部分を擦り立てていて、とてももどかしくて、初めての凄い刺激で、堪らなく…たまらなく…気持ちがいい。
ぐちょっぐちょっと卑猥な水音をひっきりなしに立て続ける二つの性器のその奥で、望海の処女地が疼き拙い蠢きを繰り返す。
制止の言葉が溶け落ちた望海の唇から零れる甘える子猫の様な微かな声は、やがて快楽に支配されて我を失っていった。
夕闇。
掃除の終わったプールサイドで一人崩れ落ち全身が精液と汗に塗れた望海はぼんやりと空を見上げていた。
近所でどこかの家が作っているカレーのにおい。校外の街路の微かな灯り。まだ校門の閉鎖まで時間はあるのだろうか。取り敢えずシャワーを浴びなければ外には出られないだろう…腰が痛い…何人と交わってしまったのだろうか…?多分全員、明日も、全員。明後日も、明々後日も。疲れ切って動けなくなっている身体をのろのろと動かして指先で触れると、クリトリスが驚く程膨れ上がっていて過敏になっており腰がびくんと跳ね、そして膣口からどぷりと大量の粘液が溢れ出した。とても強い栗の花の臭い…本当に精液は栗の花の臭いがするのだなと少女は不思議な感動を覚える。プールの塩素の臭いよりもはっきりと身体中に染み付いている臭いはよく洗わないと家族に気付かれてしまうだろう。髪にもべっとりと絡み付いているから時間がかかりそうだった。
はぁっとついた溜息まで、精液の臭いがした。
『男子って……すごい……な…ぁ……』
クリトリスに触れても少しも性交には及ばないのを痛感し、望海は全身で息をついた。
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65『二人きり』
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