甲高い悲鳴がホールに響き渡った。
煌々とリングを照らすライトの下、吊り天井を決められた亜矢子の背筋がぎちぎちと悲鳴をあげる。新興プロレス団体所属の亜矢子の透ける様な白い肌が汗に濡れ、しなやかな黒髪が宙を舞う。ああああっと悲鳴をあげながら必死に技から逃れようとする娘の豊かな乳房が仰向けに反り返った状態の中ぶるんぶるんと激しく弾み、そして膝まで固められ客席へ大きく開いている脚の奥底で、コスチュームの極狭な布が紐状に下腹部の柔肉に食い込み、ふっくらとした丘の中央へ寄っていく感触に亜矢子は悲鳴をあげる。
今身に着けているコスチュームは亜矢子の専用のコスチュームのデザインでありながら亜矢子のものではなかった。それは試合前に身に着けている時に気付いていた。サイズが小さい。確かにデザインは同じなのに、布の面積がどうしようもなく小さくなっているのにはすぐに気づいた。――だが試合に穴をあける訳にもいかず、亜矢子は顔を強張らせたままリングに向かった。新興団体だからこそ白雪姫のリングネームを持つ一番人気の亜矢子を応援する観客の為に、その期待を裏切れなかった。だが、今日の観客は何か雰囲気が違う。カメラ撮影の率が半端ない。そして、野獣の様なぎらついた目で誰もが入場時から亜矢子を見ていた。――当然かもしれない。極薄極狭のコスチュームは白地の部分は柔肌を透かし、そして胸刳りは深いどころではなく柔毛の近くまで到達して乳房の三分の二は露出している。確かに鞄に入れていた筈のニプレスもサポーターもなく、今、リングの中央で亜矢子のコスチュームの股間は一本の紐状になって柔肉と柔毛を観客に晒していた。
「っあああああああああああー！」
骨と筋肉が軋む激痛の中、悲鳴をあげる亜矢子の鍛えた…それでいてしなやかさを失わない美脚の奥底で、ひくひくと牝肉が蠢いていた。
確かに窮地だった、だがまだ亜矢子は負けてはいない。この窮地を脱すれば逆転は出来る。だが、白雪姫の華やかなリングネームに不似合いな淫猥な光景に無数のフラッシュが焚かれ、亜矢子の隠すべき恥部が大勢の観客のカメラに収められていく。ぎしぎしと身体が軋む度に乳房を包んでいる薄布が左右にずれ、鍛え上げながらも豊かさと形のよさを誇る白い乳房の露出面積が増えていき、そして白桃と思わせる生白い乳房の頂にある艶やかな乳輪が布の隅から零れだしていた。ぎしっと身体が軋む度に徐々に露出していく乳房のその頂点は、闘いの興奮か妖しい刺激にか、硬くしこり、そして、下腹部では細い紐状になっている布の左右にはみ出しきってしまっている小振りな襞までもが露出し、汗とぬめりにライトを照り返しリングの処女姫の鴇色の粘膜を曝け出してしまっている。
悲鳴をあげている亜矢子は気付かない。
何故か自分のセコンドが会場内からいなくなっている事を、自分の試合をいつも応援している筈のファンが一人もいない事を。自分の味方が一人もいない現実を。
そして、亜矢子の柔毛の辺りを辛うじて包むコスチュームの縫い目が、それだけでなく所々の要所がまるで汗に溶けて千切れる様に解れだしている事を。
苦悶の悲鳴をあげながら、亜矢子の白い身体はリングの中央で汗に塗れぬらぬらと滑り輝いていた。
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61『初めてのプールテント・５幕目(完)』
FAF202003112348