2022余所自作112『耳掻きサービス』

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「いらっしゃいませぇ」
 そう言い座布団に正座したままひらりとスカートの裾を捲った少女に俺は踵を返して部屋から出ようとした。
「ちょっと待ったぁ!何で出ようとするのよ」
「どう考えても耳掻き屋じゃないだろそれ」
 一般的に耳掻き屋は浴衣姿のうら若きお嬢さんなどが浴衣姿で丁寧に膝枕して耳掻きをしてくれると今更聞いてうきうきとやってきた俺のスラックスにしがみついてきたのは浴衣姿には程遠い胸下ですっぱり終わっている浴衣モドキの上とそれの揃いの超ミニスカート姿の痴女だった。部屋は三畳程の安っぽいなりに雰囲気のある和室だが痴女はどう見てもえぐい風俗嬢である。
「用心棒呼んじゃうぞー?あーれーとか悲鳴あげたらお客さんぎっちょんぎっちょんにのされて迷惑料絞られるだけ絞られてすっからかんだからねー」
「俺は耳掻きして欲しいだけなんだ!」
「耳掻きしてあげるよー?でもこっちもちょっと気持ちよくして欲しいだけだもん、ねー?」
「どちらのしても金搾り取られる奴だろうそれ」
「取らないとらない。普通の耳掻き料だけでいいから…ね……セックスしよ?」
「病気が怖い」
「大丈夫私初仕事だから!」

 三畳の狭い個室内で、俺は出来るだけ音を立てない様に腰を突き動かしていた。
 本番禁止店なのは一応本当らしく、少女が声を殺しながら四つん這いになってそれを受け止め続ける。ぐちょっぐちょっと派手に音が鳴りそうになる度に膣奥に肉槍の先端を押し付けての細かな腰遣いに変える…なりふり構わず腰を振りたくりたくなる程に具合がよくて少し気を緩めればあっさりと射精してしまいそうになっていた。まだ女子大生、いや高校生であろう少女はとんでもなく貪婪で、前戯も程々に朝から洗っていない肉棒にしゃぶりつき、そして避妊具なしでの性交を求めてきた牝肉は内腿までねっとりと濡れそぼっていた。
 あふぅ……んっと声を殺してよがるのに慣れている白い身体が柔らかな行燈の光に照らされていやらしくぬめる。基本は三十分と一時間。初めての耳掻きに期待して一時間の指定にしているがまだ時間は残っている。
「そろそろやめるぞ」
「やだ…やめちゃやだ」
 おちゃらけていた時は少し小五月蠅かった声は挿入から暫く経ってからは上擦った囁きになり、その声音は何処か頼りなく危なっかしく、そして切実だった。
「もっともっといじめて……まいのいやらしいおまんこにおしおきして……ぁ……それ、いいっ…おくぐりぐりされるの……まい…すき……ぃっ」どろどろに愛液が垂れて狭い和室内ににおいが籠る。個室と言っても鍵の施錠は出来ない、だが換気はしっかりしているのか、個室の並ぶ通路に漏れ聞こえたりしないか心配になるが少なくとも少女は営業違反の行為を中断しようとは微塵も考えていない様子だった。「もっと…いじめて……?」
 肩越しに振り向く少女の顔は蕩け切っていた。本気でこれは病気が怖い。どう考えても処女ではなく、はっきり言えば淫乱で、しかもゆきずり。だがぎゅっと絞ってくる牝肉の具合の良さに俺は溺れそうになる。四つん這いの少女の尻肉を両手で掴み左右に大きく開かせながら肉槍を引き戻すと愛液でどろどろに濡れた結合部とひくひくと震えている窄まりが見えた。ゆっくりと、自分でも辛くなる位にゆっくりと腰を使って切っ先から根本までの長いストロークを繰り返すと、少女の腰が激しく揺れる。あぐっあぐっと呻き譫言の様に性器の名称を繰り返して首を激しく振りたくり、肩と顔で畳に埋もれながら少女が自分の乳房を荒々しく揉みしだく。真っ当なセックスしかしてこなかった自分に嗜虐を植え付けてくる少女に、俺は部屋の隅にある小さな棚から綿棒をとり、とりあえず一本少女の窄まりに当てた。
「綿棒、突っ込まれたい?」
「……」
 こくんと頷いて少女は軽く尻を振る。繊細な個所は綿棒でも傷がつくと聞いているからまさか同意されるとは思っていなかった俺に焦れたのか、少女は自ら腰を後ろに突き出してきた。つぷり、と白い綿棒が窄まりに含まれていく…その感触は抉じ開けると言うより飲まれていくに近く、掠れた歓喜の喘ぎにこれが少女にとってはありなのだと判る。茶色の長い髪が悦びに激しく舞い、喘ぎ声を抑えたまま少女は小刻みに腰を前後に揺らし続ける。どうしょうもない淫乱娘。それなのに、何故だろう。壊れ物の様に思える。
「綿棒突っ込んだままだと奥に射精出来ない」
「ぬいて……めんぼうぬいていいから、おちんちん、おくまでちょうだい……っ、おまんこもおしりもどっちもだいすきからぁ……っ、わるいこのまいに……せいえきくださぁい……っ」
 芝居ではない、切実な哀願に理性はない。純粋に見ず知らずの男の精液を強請る少女に背筋がぞくりとする。それなのに、その切実さに、肉欲ではなく精神が絡め取られる。暖かな行燈の灯りの中、白い尻がうねうねとくねり、自ら開けさせた豊かな乳房が畳に潰れながら捏ねられた。少女に埋めたままの肉棒の傘が膣口のくねりの直前で淫らに食い絞められ、膣口が締まる。突っ込んだままの綿棒が勝手に弧を描き、暴れる。
 おまんこして、おまんこして、おまんこして、おまんこして。
 甘く上擦った声で少女が執拗に哀願する。
 ずん、とお互いの身体が跳ねる程激しく、俺は少女の膣奥に一気に肉槍を突き入れた。ぽたぽたぽたぽたっと四つん這いの少女の脚と脚の間の畳に結合部の辺りから緩い水分が迸り、畳に頬を押し付けていた少女が猫の様に背を仰け反らせて無音の歓喜の絶叫を漏らす。搾り取ってくる。精液をぶち撒け慣れているであろう牝肉が他人の生の肉槍を締め付ける。何処までも貪婪で、発育の良い身体の中でそこだけが子供の様な透明なマニキュアの爪が畳を掻き毟る。いくいくいくいくいくいく、きて、きて、まいのなかにぶちまけて……!何故声を殺しての哀願に慣れているのか、精神の何処かで判っている気がした。深く関わりたくない。それなのに。
 絶頂の貪婪な締め付けの中、俺は少女の膣奥で、射精した。
 人生で一番、大量に出たそれは途轍もなく気持ちがよかった。

 一時間プラス延長一時間。計五回の射精の後、俺は畳の上で汗塗れでぼんやりとしている少女を残して部屋を出た。噂の用心棒に咎められる事もなく会計を済ませ退出した俺はまだ賑わっている電気街のネオンを憂鬱な顔で見上げる。あれだけは聞きたくなかった。五度目の射精の間際の彼女の小さな、微かな声。
『――おにいちゃん、すき』
 慰めは求められていない。それが苦かった。

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