1993年
恋人が自殺した
簡単に、飛び降り自殺
彼は井の頭公園が好きだった
彼と一緒によく散歩した
画家志望の二人はスケッチする事も多かった
バブル経済の破綻序曲
株の大負け
なんで金の事なんかで死ねるんだろうか
籍を入れていないから借金を負う事は無かった
二人は、新居まで借りあげていた
引っ越したのは女が独り
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1994年
吉祥寺の家から徒歩数分
井の頭公園の夕焼け
彼との思い出とは別に、よく散歩する場所だった
夕日が池に照り返して綺麗.......
朱い風景に、黒い影法師が一つ
ベンチに腰掛けて池を眺めている
手にスケッチブック
夕日が目に染みた
ぼろぼろと頬伝う涙は、夕日が染みたから
私がスケッチをしていると隣に腰掛けてきた女性が居た
名を弥生と言った
程なく、二人はお互いに安定と安らぎを求めた
手段はSEX
狂おしい程、浅ましい快楽
麻薬にも似た陶酔
頭の中を真っ白にするには手っ取り早い手段
それがいつか失われる楽園である事に気付きつつも、そうする以外に何も出来なかった
失う事を思わなかったとすれば、嘘だ
私は連絡先を告げなかったし、弥生も聞かなかったのだから
そうして、夜毎公園を歩き、部屋に戻り睦み合った
季節は秋から冬へ
暮れも近づく師走
私が巻き込んだ闘いに彼女が陵辱される
調べ、助け出すのに三日
私が唯一、糞虫を潰す事ではなく救出を目的として動いた事実
そして例外なく、弥生だったからではなく、私が巻き込んだから助けた事実
弥生は泣いていた
それが安堵の為か別れを決意した為か、或いは他の原因の性なのか私には分からなかった
治療を済ませ、弥生の部屋で抱き合う
自然と睦み合う
ひとしきり抱き合い、弥生は私の胸に頭を預けている
「ねぇ.....別れて、あげるよ」
もう一度、抱きしめた
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2000年 元旦
偶然の再会
吉祥寺 井の頭公園
弥生は結婚し、姓を変えていた
同じベンチ同じ黒ずくめ
同じ、目つき
私は相変わらず同じ生活同じ道を歩み続けていた
もう私が触れて良い相手ではない
とっくに失われてしまった文明の遺跡を発掘しても、文明を手に入れる事にはならない様に
そしてそれはお互い様という奴だ
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2001年
偶然の再会
再び、井の頭公園
弥生は身籠もっていた
ゆっくりと、臨月の近い胎を撫でる
幸福とは連続性に帰属する
今がしあわせなら過去から幸せと云えるだけの力を持っている
風が優しく凪ぐ
時代が新世紀に入っている事に気付いた
私はソレを横目で観ながら想う
この子はどんな時代をどう生きるのだろうか
少しは私にも似た生き方を望むだろうか、と
願わくば、私に似た生き方をしてくれるように
或いは、魂がつらなるように
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the end this stores and to be continued for
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