１９９３年
強姦されていた
都内と言っても２３区から外れればまだ背の高い草むらくらい有る
一人が右手で口を押さえ、左手で左腕を押さえる
一人が膣を蹂躙している
一人がカメラを回している　右腕は此奴に踏まれている
当然避妊なんてされていない
おぞましい事に蹂躙者は快楽を得る為に女の体を使っていた
モノとして扱われているだけではない
陵辱している事に快感を得ていた
性感を求める以上に人間をモノとして扱っている嗜虐感覚に酔っていた

夕刻になり、獣が去る
髪に草の匂いと精液がこびりついている
口腔に残ったカスを吐き出す
歩いて数十ｍの車道
いつもの世界
草むらは数多の入り口を持つ魔界
出口は見えない

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１９９４年
泣きじゃくる妹を説得し、断腸の思いで捜査依頼を提出した
公安局員の妹が数週間前に強姦された事件だ
当然、どの事件でも肉親や親しい職員は捜査から外される
妹は事情聴取により過去を思い出させられ、語らせられた
俗にセカンドレイプと呼ばれるのがこの事情聴取だった
それを承知しながら、兄である公安職員は法を信じていた

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１９９４年
事件から一年
管轄部署から何も報告は無かった

そんな折り、見るからに事件性のある二人連れを見かける
一見すると長身黒ずくめのロングコート
よく見ると女性を担ぎ、その上からロングコートを羽織らせている
もっとよく見ると男は頭と腹から血を流している
ふらふらと歩き、膝を折った
慌てて近寄り、支える
二人とも意識がない様だった

私は病院で目覚めた
意識が覚醒し、すぐに状況を確認する
腕には各種の点滴
私に公安が声を掛ける
どうやら命の恩人という奴らしい
「連れの女は.......」
「隣の部屋で寝ている　ここのベットはいつでも空いて居るんでな」
「失礼だが、貴方は」
「国家公安局局員　そこは伝手で借りたベットだ」
「........先ず、感謝するが、あいにく身元その他を明かす気はないよ」
「結構だ　善良な市民を護るのは職務だからな」
「へぇ.......善良」
「女庇ったんだろ？」
「..........答えない事にするよ」
「女の方から聞いた」
「じゃぁ、そういう事で　誘導には引っかからないよ」
「妙に慣れてるな　職業は？」
「たんてーさん」
「業務上にしちゃやりすぎだ　彼女に聞いてみよう」
「それでいい..........起きて良いかな？」
「まだ寝ていろ　失血死しかけたんだ増血剤と輸血少々で回復せんよ」
「じゃ、お休み.........」
フェードアウト

「世話になった　何か有れば力になろう」
「連絡はどうすればいい？」
「「蛇頭のスモモ」で検索かけるんだな　アンタの身分が名乗ったとおりなら私に繋がるだろう」
「お前、中国人か？」
「私は日本人さ」
「ふ、ん　蛇頭が日本人の女一人のために血だるまになるか？」
「私は組織の人間ではない　私にとってアンタもスモモも協力者でしかないさ」
「犯罪者なら拘束するんだがな」
「現段階で起訴対象が無い、と」
「そうなる」
「では、また逢おう　公安さん」

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１９９５年
私は素直に感嘆した
写真の女性は楚々として綺麗なひとだった
私はもう相容れない世界に居るであろう空気
「妹だ」
と、公安さんは言った
見事私を捜し当てていくつか事件を手伝っていたのだが、私的な話しは初めてだった
「二年前にレイプされた　コレは直前の写真」
「お気の毒です」
「犯人を見つけろ」
「私向きとは思えないな　それこそそっちの得意分野だ」
「肉親は私情を挟むので直接携われない　そして法律は........」
「能なしだ　調査動機がおまんまの為じゃ一生懸命やるハズねぇわな
　セカンドレイプされた分損でしたね」
「御上には愛想が尽きそうだよ　だからお前に頼みたいんだ」
「証拠その他資料は？」
「奴らは三人組で一人はビデオ記録していた」
「裏ビデオでも漁る？」
「しか、あるまい　これ以上妹を辱める事は出来ないが......」
「同居してる上に職務上まずいって事、か　費用は？」
「１００万でも１０００万でも」
「一財産潰す気かい？」
「妹は一生の傷を付けられた」
「..........分かった　引き受けよう」

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１９９６年
一本のテープを差し出す
奥歯をかみしめながら受け取る公安局員
流石に確認以上眺める気はしないが、私もその痴態を観ているのは明白だ
勿論、タイトルさえ分かれば誰でも手に入れる事が出来るビデオである
しかしそれ以上に一体何人が、誰が観ているか知れないのだ
一枚、メモを挟んで於いてやる
公安もメモに気付く
開くとカタカナと数字
「コレは......」
「サービスだ　業者の車ナンバー一つあれば追えるだろう？」
「助かる」

その後、或る公安局員の不祥事が揉み消された

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１９９９年
強姦が民事訴訟の有無にかかわらず捜査ができる法案が可決した
或る三人組のレイプ犯が即座に拘束されたとも聞く

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to be continued