500系「のぞみ」には速く走る以外に大きな課題があった。それは、騒音を抑え沿線の環境を現行の新幹線レベルに維持する事だった。なかでもパンタグラフから発生する「風切り音」の低減が課題で試行錯誤の連続だった。
パンタグラフは電気を安定的に集める役割を担っているが、パンタグラフを過度に架線に押しつけると、架線の構造上、火花が出やすくなるし、従来の新幹線のパンタグラフのままでは「風切り音」も大きい。画期的で新しいパンタグラフの開発を迫られた。
新開発のパンタグラフは空気抵抗を減らすために断面形状を「楕円形」にした。さらに、支柱部分に小さな突起をつけ空気の小さな渦を発声させた。この結果、パンタグラフの支柱の後ろにできる空気の大きな渦を出さないようにした。
騒音は全区間で「300系のぞみ」より低い水準に抑えられた。環境庁が住宅密集地での暫定基準として定めた75デシベル以下を達成できた。
トンネルに突入するときにトンネル反対側から発生する「ドーン!」と言う衝撃音の低減も課題だった。これは先頭車両の先頭部分の長さを300系の2倍以上の15mにしたほか、車両の段面積を10%減らす事で解決した。500系の衝撃音はすべてのトンネルで300系より低く抑えた。
環境保全とあわせて力を入れたのが乗心地の向上。連結部分に初めて車体間ダンパーをつけて揺れを吸収。セミアクティブサスペンションと呼ぶ電子制御装置を導入して、横揺れを3割程度減らした。
500系は約100億円を投じて6年がかりで開発した。従来の地上設備をそのまま使うと言う制約上、問題に車両の改善で対応しなければならず、苦労が多かった。
=1998/06=