上ブタに点字で「ビールです」と表示された缶ビールが、国内大手4社共通に出回ってきた。
障害者に使いやすいものは健常者にとっても使いやすくなる、というバリアフリーの観点から、共用品の研究・開発が進み、すでにシャンプーとリンスを触感で区別できる容器では競合企業間連携の実をあげている。
アルコール飲料では「宝カンチューハイ」が発売当初に誤飲防止の声にこたえて導入したのが初めてのようだが、ビールではアサヒビールが業界初。
96年4月の製造開始分からで、当初は一部工場のみだったが、97年からは全工場、250・350・500ミリリットル缶全製品に広げた。
みるまに競合他社に普及したのは、別に同社が音頭をとったわけでもないというが、こんな企業間競争ならおおいにけっこうだ。
誤飲防止というだけではなく、視覚障害者にも多いはずのビール党には楽しくうったえるだろうし、晴眼者には共感をもっての企業イメージ媒体となる。
そこに発生する意識のバリアフリーは、それがなくてはバリアフリー社会は築かれないとする共用品運動の一つのねらいでもある。
よくみると一部大手の出遅れ感もあるのは、アサヒビールに追いぬかれるのも道理とうなずけるようで、損をしている。
=1998/05=