Terry Riley
1935年、カリフォルニア生まれのテリー・ライリー。シュトッ
クハウゼンなど同時代の前衛音楽に傾倒した後、1964年の"in
C"で極度の単純化と自由な構成を持った音楽へと転身する。瞑想、
即興、純正調律のピアノなどが以後のキーワードとなる。ミニマリ
ズムという彼に対して多く用いられる言葉が、実際には意外なほど
にその音楽を説明し得ないことを知っておいたほうがいいだろう。
ライリーのモニュメント作品、そしてミニマルの先駆のひとつとさ
れる"in C"は、53種類の旋律断片を任意に演奏する作品だ。
演奏者の数、楽器指定、速度指定、断片の演奏順序と組み合わせ、
リピート回数など、一切が指定されていない。
ただひとつ、全体のテンポを決定するためにC音のパルスが終始演
奏されるが、演奏者に許される広範囲な即興性からも、生まれ出る
響きのすべてにミニマル的ファクターを聴き取ろうとすることに拘
泥する理由はなさそうだ。
他の作品についても、ライリーの作品にはあらかじめ用意された断
片(モデュール)の組み合わせによる音楽が多いが、「断片」だか
らと言って「ミニマル」ということをただちに意味するものではな
いし、ミニマルの本質とも言える「反復」も、ライリーの場合その
モデュールの配置にはやはり演奏者による(ライリー本人だけでな
く他の演奏者にも許される)即興的要素が加わるなど、一般的な意
味ではシステマティックなものとは言えないことが多い。
彼の音楽の魅力は、即興をも含めたその極めて流動的な旋律の連な
りと交錯から生まれる有機的な音楽の美しさにこそ見い出されると
言えそうだ。スリリングで叙情的でもあり、時折訪れる反復の陶酔、
あらかじめ書かれた展開とは異質の、一回性の強い瞬間の連なりの
妙を味わうことのできる音楽を響かせる音楽家である。
Disc Guide
■ In C
■ Shri Canel
■ Cadenza on the Night Plain
■ The Harp of New Albion
・h o m e・
・minimal・