プレイ時間はボイスを全て聞いて3時間程度。
中途中途を飛ばして進行するダイジェスト的な作りをしていますが十分に雰囲気は伝わってきます。ちょっとプレイするだけでも力を入れて作っているのが自然と伝わってくるぐらい丁寧に仕上げられています。多くの人にうまいこと期待を抱かせてくれるのではないでしょうか。
とにかく驚かされるのがキャラクター群。なんでそんなにいるの? というくらい用意されていて普通に驚かされます。体験版の範囲内だけでも女性陣はヒロイン5人以外に9人、男性陣は主人公以外に16人+ロボ1。って男の方が多いよ! とか突っ込みたくなる始末。しかも、これ全て立ちCGが用意されているキャラですからねぇ。どうやってこんだけ(本編ではさらに増えるのに)使うんだって感じですが、体験版の範囲では問題なく掛け合いを演じています。まぁ、どうしても必要なの? と聞かれれば疑問符のつくキャラはいますけど。
日常の掛け合いはネタはそれほど多くはなく、世界観やノリ重視の印象です。ところどころ笑いを誘われたという程度ですが、くだらないことが大事な学生時代の会話の雰囲気はうまく出ているように感じました。言うまでもなくサブキャラのメインキャラではありえない言動の数々が支えているのですけど。
キャラ立ちもしっかりしています。自然にメインとサブがわかるような書き方も上手だと思いますし、メインがサブに負けていると感じることもほとんどなさそうです。まぁ、さすがにネタキャラに対してはインパクトで負けるのは止むを得ないでしょうけど。ヒロインもちゃんと魅力的でこの点で心配することはなさそうです。
サンプルがひとつしかないんでアレですけど、戦闘シーンが不安を誘われました。武士娘恋愛ADVということで重要な要素かと思うのですが、どうもやる気を感じられないというか、他に比べて盛り上がるどころかその逆になっていたような気がします。演出的にももうひとつというところで、格ゲーを意識したような演出が浮いてしまっているようにも見えました。
描写にもちょっと気になるところが。前後がはしょられているので不明な点もあるのですが、風間ファミリーに仲間が2人加わって初めて隠れ家に案内した時のくだりがそれ。まぁ、通過儀礼というか仲間たちの一体感を出すことが目的のイベントかと思うのですが、どうも論理展開が強引で風間ファミリーよりも新参2人の気持ちの方がよくわかってしまうような内容でした。
隠れ家が大事な場所だというのはわかります。しかし、風間ファミリーの誰かはあの廃ビルがどれだけ重要か少しでも説明したのでしょうか。相手は育ちも価値観も違って当たり前のドイツ娘さんですよ? しかも、恐らくは風間ファミリーの方が連れてきたのでしょうし。黛にしても、これまで友達がいなくて携帯ストラップと腹話術で会話していたような娘さん、それもただ1人の後輩ですよ? それをわずか1週間足らずでタメ口がきけないような態度は腹が立つみたいな言い方は酷すぎるんでないの、と。それほど重要なことなのに一切の感覚的な摺り合わせもすることなく仲間認定したのかと。正直、馴れ合いによる風間ファミリー側の増長にしか見えないような。これじゃ、「廃ビルを不良学生が不法占拠」みたいなニューステロップが相応しい人間たちに見えてしまうのでは。
ほんの1イベントに過ぎないのでしょうが、各シナリオにおいては焦点での細かな描写が出来を左右します。筋書き優先で雑な展開、帰結のシナリオにならないことを願うばかりです。
CGは川崎市住民は色々とニヤリとしそうです。稀にしか川崎に行かない私でも思わず反応してしまうようなところがありました。背景でも手を抜くことがないので感心させられます。
イベントCGは数も少ないのでなんとも言えませんが、立ちCGはキャラ数が多くとも被ることなくきちんと描き分けられています。出来自体も上々で長い物語でも問題なく付き合えそうです。ただ、難点を上げるなら画面における1人の占める割合が狭いので表情の変化がとても小さく見えることでしょうか。全体的にキャラは線が細いです。
ボイスはもうとんでもないです。キャラ数のところで想像がつく方もいるでしょうが、果たして予算は幾らですか? というくらいの布陣で構成されています。男性キャラへのこだわりに定評あるpropellerでさえ怯みそうなキャスティングです。もう人気、実力ともに一流ばかり。誰も聞いたことがないという人はいないのでは、というくらい。女性キャラにもそれは言えてメインだけでなくサブもとても豪華。間違いなく本作一番の魅力はボイスと言い切れます。個人的にはここだけで買っても悔いはなさそう。
みなとそふとは戯画系列ということでシステムはとーってもどこかで見たようなデザインを踏襲しています。まるで「パルフェ〜ショコラsecond brew〜」や「この青空に約束を−」のよう……、って効果音まで同じデスヨ。ワイドモニター時のアスペクト比の固定などしっかりとバージョンアップもしています。ということでシステムは問題ないでしょう。
全体的な出来は良いので心配なのはやはりボリュームでしょうか。キャラクターを意味ある使い方ができたと最後に言える内容に仕上がるのか。期待したくなる1本です。
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