前途は多難かと思っていたんですけど、さっくりと本道(?)に戻って参りました。購入してインストールだけはと、「Dear My Friend」を開封したのが良かったようです。デモ冒頭のメインヒロイン麻衣の告白(とは少し違いますが)が効果的な引きになりました。や、あれはなかなかの破壊力ではないでしょうか。思わずプレイしたくもなりますよ。
ということで1人目は久城麻衣。まぁ、ひねくれ者としては親友の都香も捨て難かったのですが。
1周目を終えての感触は悪くない、どころかかなり良いです。「PARADISE LOST」のライター正田崇氏はディレクターでシナリオはサブということであまり期待していなかったということもありますが、それにしてもの好感触。正直、驚いてます。
メインと思われるNYAON氏と正田崇氏の配分の仕方がわからないんであれですが、シナリオは全体的に高レベルでまとまってます。日常会話は素朴で面白く確かなセンスを感じます。爆笑を狙うのではなく、小さな笑いを断続的に用意しているような感じ。イベントCGはそんなに多くはないんですが、それを感じさせないだけの魅力あるテキストを立ちCG込みで持っているかと。
グラフィック面も非常に頑張ってます。立ちCGはすでに書いたようにイベントCGの少なさを感じさせない良いものが揃ってます。キャラクターの性格に則した豊かな感情表現が描けているかと。惜しむらくはどてら姿が見られないことですか。真剣に見たかっただけに残念デス。体温計をくわえる姿もとてもラブリーではあるんですが、どてら……。追加シナリオで期待したいところです。あーあと犬のタロウもお気に入りデスヨ?
イベントCGも絵買いに応える見事なカットが多数(見たのはほとんど麻衣のものだけですが)。余談ですが、くすくす氏のイベントCGって壁紙にしたくなるようなものが多いです。
注目なのは背景。ころころと表情を変えるキャラクターを文字通り後ろから支える見事な仕上がり。両者の溶け込み具合も申し分ありません。
音楽は予想外といっては失礼かも知れませんが、しっとりと聞かせるような良い曲が揃ってます。lightはサントラを特典に用意するのに相応しくなってきましたね。そういや「PARADISE LOST」も曲の出来は良かったな、と今頃になって思ったり。
で、久城麻衣シナリオ。
1周目なのでまだ共通シナリオはイマイチ把握していませんが、共通シナリオ内の多人数による掛け合いがけして多いといえないのはもったいないところ。キャラも立っているし、黒崎小麦を除けばキャラ同士の距離も近いと思うんだけどねぇ。
個別シナリオはかなり優秀です。移動場所の選択がダイレクトにヒロインということもありますが、焦点のぶれることのないヒロイン中心のシナリオが書けていると思います。
すでに書いた笑いの面だけでなく細かな伏線の張り方にもセンスを感じました。読み手に「ああ、ここがあとあと響いてくるんだな」と感じさせることが数ヶ所あったように思います。
物語の展開のさせ方も秀逸の一言。先が読めてもそれが楽しみになるような、といいますか自然なシナリオ運びがうまいです。ただ一点、ここからはネタバレになりますが、最後の最後で画竜点睛を欠いた感があるのは惜しいところ(以下反転)。
麻衣との間に血が繋がっているかどうかで家族会議を開くシーン。ここから後ろが唯一おかしかったように思います。兄妹でない=恋人になれない、という前提が成り立っていないのではないでしょうか。コタツの中で二人が手を握っていたのはそれが運命の別れ道だったからだと思うのですが。恭一がモノローグで言っていた通り、繋がっていたならば恋人にはなれない、兄と妹にならなければならない。繋がっていなかったなら家族にはなれないが恋人になれる、そういう分岐点のはずなのになぜかどちらに転んでも別れることになるという展開はやはりおかしいです。
恐らく最後ということで展開を急いだのでしょうが、ひとつのイベントでふたつ(二段階)の結果を求めるのはやはり性急に過ぎるというか間違いだと思います。ふたつめのポイントが告白であるのは伝わってくるのですが、それはあくまでも結果からでしかありません。「好きと言っていない」と「好きと言ってもらったことがない」、この二点を浮き彫りにすることができなかったのが欠いたしまった点睛ですな。特に恭一が好きと言えない事情なんてとうにクリアされていたんですから。
個人的にはラストに解決しなくてはならない問題が多いかな、と。外すことができないならやはり、きちんと恋人になった後に「本当の家族」問題として浮上させなければいけなかったと思います。そうしたら複数回Hも搭載できたかにゃー と夢を見てみたり(麻衣に限らないとはいえ追加シナリオの存在が夢を見させます)。
なんだか厳しいことを書いてますが、それだけこのソフトが気に入っているということで既にファンを表明している方はご容赦ください。現在の手応えでは今年の五指には入りそうな勢いです。ベストスリーも夢ではなく個人的な好みオンリーならば1位もあり得そうデスヨ。
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