真剣で私に恋しなさい!!10話。百代の本音が遂に露出。しかし、これがこれまでこの作品が築いてきたものというのか、すっかり悪役にしか見えません。まゆっちのせめてもの抵抗に対して力ずくで黙らせようとするあたり救いようがなく。フォローの隙さえないというどうしようもなさ。相手も人質をとったというのに百代のほうだけ露骨にイメージが悪いあたり……。
ところでこの作品、声優の豪華さが売りのはずが気がつけば同じメンツばかりになってしまいましたね。
「晴れときどきお天気雨」。3人目は佐倉水希。
個別シナリオに入って声優の演技がそれまでとはちょっと変わって恋仲になったのがうまく出ているな、と感じました。なんかより活き活きとしてきたようで。
出足は好調、と思ったのも束の間。そこには正気を失ったようなバカップルがいました。羞恥心が完全に欠落して、耳は遠いけれども自分の正しさを信じてキレやすいという水希はつける薬がありません。作中でも言ってましたが甘いを通り越して苦しくなってくるという恐ろしさ。しかも、主人公さえそれを肯定してしまうのです。
足の悪いなずなは逃げようもなく、おはようからおやすみまでバカップルの絨毯爆撃を受けてしまいます。中でも手をつなぎながら車椅子を押すという共同作業はまさに拷問そのもの。頭上ではちゅっちゅもしますよ? ストレスを貯め込んだなずなは本気で怒って家出を画策するほど。やー、罪に問われそうなほどのバカップルって怖いですね。完全になずなに感情移入してました。
この後に悲劇的な展開が待ち構えているのだろう、と予測がつきましたがちっとも気の毒とか可哀相とか思いませんでした。むしろ待ち遠しく思えたくらいで。
まぁ、好みの問題で済んでいれば良かったんですけどね。本質的な問題はこの後に待っていたんですよ。
子供時代のもうひとりのみずきが登場して主人公との仲がおかしくなります。急に態度を改めてよそよそしくなる水希。避けられているのですから当然ですが、すれ違いが起こり周囲から見ても2人はおかしな雰囲気に。
信じ続けても一向に元通りにならない彼女に主人公は問いただします。けれども、そこでも返って来たのは要領を得ない言葉。破局を覚悟しますがなぜかそうはならず水希がすがってきます。けれども、事情を話せないの一点張り。
すっきりしないのにHだけはして帰るとなずなが事故に遭ったという一報が入ります。それはまさに7年前を再現するかのような状況。ただ、幸いなことになずなに大きな怪我はありませんでした。そして、事故現場では小さなみずきが目撃されていました。
翌日からバカップルが大復活。ただ、問題は何も解決していないはずなので違和感ばかりが目立ちます。演技なんてできないはずの水希があっさりと周囲を騙しおおせてしまうあたりはとても不自然でした。
ところで、このカップルご覧のように浮き沈みが激しすぎて困ります。およそ中間が存在せず迷惑なバカップルか見てはいられないダウナー状態かの二者択一。色々と厳しいものがあります。
小さなみずきの正体は7年前に生まれた水希の一部。好きになった相手が次々に不幸になっていくことを苦しんだ彼女の望みをアヤカシが叶えた結果、生まれたもの。果たして水希は主人公への恋心を忘れました。誰も好きにならなければ不幸にならずにすむから。けれども、再び恋してしまったがゆえに眠りに就いたみずきが目覚めてしまった。
疫病神を自称する少女は水希が好きになった相手を不幸にしようとなずなを狙ったのです。そして、主人公の一番大事な相手である水希本人を神隠しに遭わせてしまいます。
とまぁ、これが個別シナリオの主立ったあらすじなんですけど、奇妙な点が幾つか見受けられるんですよねぇ。なずなが再び事故に遭った時、水希はそれが主人公を好きになったことが原因であるとわかっていたはずなのに(そもそもだから一度は恋仲になった2人の仲がおかしくなったのだし)。なぜか事故の翌日からバカップルに戻ってしまう。なんと罪悪感を感じることもなくただ開き直っただけ。これには驚愕するしかありません。てっきり何か理由があるのかと思ったら何もないし。
他にもアヤカシがやったことだからと思っているのか、自分の浅慮ゆえに発生した出来事を気にも留めない。主人公は因果関係はなく偶然だ、と言ってますけどそれは言い換えれば超常現象が絡んでいなければ反省さえしないという意味ですからね。なずなを守るどころか自分たちの方を理論武装するというのはどうかと思います。というか、論理が擦り変わっているような気がします。アヤカシのせいなんだから軽率な行動をとっていい、とでも言っているように聞こえてしまうのはちょっと。
設定の部分では8歳で初めて会う幼なじみというのが属性持ちには微妙な感じがします。せめて妹がいないならまだしもねぇ。パワーバランス的に厳しいものがあります。あと本作だけではないですけど、互いのことを深く理解している関係にある幼なじみがツンデレというのは無理がないですか。
ところで、シナリオの主題には全く関係ないんですけど、サブキャラの梶原陽菜子がちょっと印象に残る言動をしてました。水希がおらず香奈恵も絢音も生徒会活動で忙しい。なずなのお風呂介護をする人間がいない。主人公がやるには外聞が悪すぎる。ということで彼女に白羽の矢が立ったのですが、本人が気にしたのは普段そういうことをしている水希が周囲には主人公と夫婦に見られているという客観的事実でした。生徒会長が好きな陽菜子はそれを危惧して口に出してしまいます。普段であればいざ知らず非常事態に空気を読めない姿勢。さすが香奈恵と同じで、頭空っぽで胸だけの女とか評されてしまうだけのことはあります。無駄に株を下げる姿がなんとも印象的でした。
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