映画のCMというものは役に立つようで役の立ちません。だいたいは劇場か家でこれを見て鑑賞するか否かを決定する訳ですが、当然先行イメージというものが脳内で形成されます。正直なところ、見る側の思い込みを差し引いても、先行イメージを助長しつつ映画がまとまってくれるケースは稀有です。たいがいは良い方向か悪い方向に裏切られます。
今作の場合は稀有なケースと言ってもいいかも知れません。まぁ、それほどCMで方向性が示唆されていないということもありますが。
構成は最初にクライマックスから始めて見る側の興味を引き、どうしてそうなったのかを過去に戻って進めていくという「ファイトクラブ」あたりと同様の作りになってます。
少しだけ異なるのは現在(クライマックス)と過去(スタート地点)の間にもうひとつ時間帯が設定されていること。徐々に進んでいく過去が時折、その地点に進んでは戻るというスタイルがいいアクセントになっていて見る側を飽きさせません。この構成の欠点である、過去が現在に比べて退屈だと寝てしまいやすいという点を見事にカバーしています。
物語は紳士的な銀行強盗というテーマを軸に小気味よい会話が展開され、随所で小さな笑いを誘います。エキセントリックな言動のヒロインも主役二人に負けない存在感を持っています。
また伏線も見事。ここまでうまく張られている伏線にはなかなか出会えません。それに関した物語上の誘導もうまく、見る側に気づかせません。
ほとんど文章の長さがそのままオススメ度になってます。かなり久しぶりの個人的ヒット作品。劇場を出る前にDVDを買う決意を固めましたよ。
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