どんな願いでもひとつだけ叶えてくれる四つ葉のクローバーばかりが生えている場所がある。そんな噂の根付いた街に住む天川裕真(変更不可)は大食いと体を鍛えることだけが取り柄。そんなであるから寮生有志によって催される舞台劇に出番などないはずであったが一冊の台本から運命は変わっていく……。
meteorの新作はパッケージによると四つ葉のクローバーが叶える、恋と不思議のハートウォーミング・ストーリー。
購入動機は体験版をプレイしてほどほどに面白そうだと感じたから。
初回特典は謹製サウンドトラックCD。主題歌もフルバージョンで入ってます。
ジャンルはごくごく普通のアドベンチャー。ただし、選択肢の数が空前絶後との少なさ。特殊なケースを除いて本作よりも少ないケースはないのでは。基本は1つだけ。つまり、それ以前が共通ルートで、以降が個別ルートというわかりやすさ。最終的にも2つにしかなりません。ここまで来るとさすがに「ゲーム」とは言いづらいような。
足回りはシステムのシンプルさに比べて完成度はもうひとつ。メッセージスキップは既読未読を判別しているように見えてそうでもなく、個別ルートに入って以降に挿入される各シナリオ共通の文章が既読扱いになったり未読扱いになったりします。スキップを使う機会が少ないせいかスピードはそれほど速くありません。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でロード直後にも使用可能です。戻れる量はそれほど多くはありません。
本作はデフォルトでテキストにカラーが設定されています。ところが、初期の「縁取り」ありの状態ではほとんどカラーを識別することができません。「縁取り」をなしにするとメッセージウインドウが薄すぎてとても読みづらい。ウインドウカラーを変更すると今度はキャラクター毎に割り当てられたカラーがあまり見やすくない。ということで全面的なカスタマイズが必要だったのは普通に残念です。
シナリオは共通と個別ルートでかなり雰囲気が異なります。複数ライター制の影響もあるようですが、本質的なところで違いが認められます。
舞台劇を上演する共通ルートは複数のヒロイン、サブキャラクターが満遍なく登場しますが、選択肢後の個別ルートに入ると当該シナリオのヒロイン以外の出番はほとんどありません。ほぼ全てのキャラクターが寮生という設定でありながら、複数人による会話をなくしてしまうのは非常にもったいなく感じます。たまにあってもそれは未読扱いの共通テキストだったり、呼吸の感じられないさみしい会話だったりします。
基本はやはり萌えゲーです。テキストでも存分に魅力を打ち出そうとしています。しかし、一方でヒロインの印象を悪くしかねない展開も平然と用意されているので、やはり萌えられるかどうかが大きな別れ道なのだと感じます。
惹かれあう過程はかなり厳しいです。というのも本作の主人公は下半身主体で生きています。頭は帽子の台でしかなく、下半身を反応させてくれる相手こそが好きな相手なのです。好きだから色々したい、ではなく色々させてくれるから好き、だったり。これは各シナリオの大きな流れにも影響を与えています。
シナリオの構成は全体的に難あり。各シナリオのテーマをうまくまとめていなかったり、起承転結の「転」から「結」への繋ぎが急すぎたり、エピローグがうまく機能していなかったりと、勢いに振り回されているような荒さを感じます。
Hシーンは1〜7回とヒロインによって差があります。ただし、特殊なポジションの1名を除けば素材的にはそれほど大きな差はありません。純愛系のゲームとしてはかなり頑張っていて(主人公の特性もあって)ねちっこくエロいです。
CGは可愛さとエロの二大ポイントだけで勝負! という感じ。個々の要素はもちろんですが、どれだけ可愛らしさとエロさを同居できるかに気合が入っているように感じられました。全体では胸よりも下半身に重点が置かれているように見えます。
立ちCGはイベントCGに負けない仕上がり。様々な表情を、感情を見せてくれます。スタッフが自信を持っているのも納得かと。
SDカットは他に比べて質、量ともに苦しい感じ。エロさは仕方ないとしてもSDならではの可愛らしさが弱いように見えてしまいます。せめてもうちょっと数があれば……。
音楽は雰囲気重視で控えめな印象。前に出すぎることなく、それでいて空気になることもなく良い効果を導き出していたように感じました。ただ、曲の開始が早いので早々にそのシーンの内容が大体わかってしまうのは少し難点かもしれません。
ボイスは主人公と名前のないキャラにはありません。演技は問題ありませんが、ヒロインと同じくらい男性陣の健闘が光っていました。
まとめ。萌えとエロこそ全てな作品。萌えられれば全ての問題は些細なことになる可能性がありますが、そうでないなら長所が短所になってしまうこともあり得そうです。色々な意味で体験版はあんまり当てになりません。
お気に入り:稲森真星
評点:60
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、小鳥遊夜々
冒頭の出会い(?)のシーンでは転生ものかと思って密かに焦ってました。夜々シナリオを終えたところまでは笑い話で終わる直感でしたが、ラストまでやると当たらずといえど遠からずでビックリ。実際、ちょっと企画が変わっていれば可能性はある訳で。
カップル化して以降は辟易しておりました。空気を読まないカップルは果てしなく痛いなぁ。ましてや寮という閉鎖空間ではね。少しくらいは公共性を考えようよ。主人公の忠言を聞く気ゼロというのも厳しいところ。寝ている(と思っている)ところを襲いかかってひとりで満足してしまうのもなんだか。恋人としての自分の存在に疑問を抱きます。下半身さえあればいいんじゃないの、と。何かの漫画でありましたけど、自分(主人公)のことが本当に好きならもうちょっと優しくしてよ、とかそんな気分になりました。
シナリオも急転直下すぎてどうも。結局、平行線は解決することなく、状況によってそうするしかないとなったのみ。真星シナリオもそうだけど、いきなり終わらせるこの手法ってどうもうまさを感じません。全然めでたしめでたしに見えないというか。
2、柏木月音
他のキャラクターたちが物足りないと言う共通ルートの月姉が気に入っていただけに個別ルートに入ってからは正直、不満たらたらでした。空気の読めないバカップル、主人公の言葉を完全無視、というネタで中盤を持たせるあたりが夜々シナリオと全く同じで手抜きを感じます。月姉の場合は社会性を放棄というポイントも加わりますからねぇ。単純にカップルの形を同じにするというだけでもどうかと。
月姉の悩みとそこから生じる傲慢さに共感できないあたりがどうにもツライ。お父さんがすでに亡くなっていて、お母さんがあの性格ということを考えるとああまでヒステリックになる理由が余計にわからない。個人的には百年の恋も冷める感じでありました。年上系にしょうもない理由で落胆させられると厳しいです。何があっても、と事前に思わせるだけの仕込みがあればまだしもね。
お父さんのようになりたいけどなれない、という悩みならまだ理解しやすかったと思いますが、月姉のあれは持てる者ゆえの悩みとしか映りませんでした。その後暴れるところも全くの自業自得でフォローのしようもないし。月姉は障害に苦しんでいる友人でも持った方がいいのでは。
3、稲森真星
学園のアイドルという点に果てしない疑問を感じます。のちにそれは違うよ、ということになりますが、そもそもの前提がおかしいような気がします。勘違いする機会がない要素が多々あるように思えるのですが。
基本的なシナリオの構築に問題あり。シナリオの書き方という基礎的な問題もさることながら、それが恋愛とリンクしているという考え方が理解不能。まともに考えると正解はないという結論に至ってしまい、どう終着しようとも納得がいきにくくなる。夜々シナリオと同じくいきなり終わる手法には感心できず。投げているようにさえ見えます。カップルとして中盤で行き詰まったのも結局は、2人の自業自得という感が強いですし。告白しなかった主人公にも、言わなくても大事なことは伝わるよと言った真星にも問題あり。
ヒロイン描写としてはなかなか。アイドルとのギャップというのも前提を認めれば面白いですし、齟齬のあった数年間のためにまごつく姿も良い感じ。夜々シナリオその他で(本人にとっては)後から来たヒロインにあっさりさらわれてしまうあたりも哀愁が漂っていて憐れを誘います。ああ、帰省しなければ……。
一色ヒカルさんというと凛々しいor格好よいヒロインというイメージが強いだけに今回のドジなヒロインは実に新鮮でした。いつもとは演技も少し違うので最初は確信が持てないくらいでしたし。可愛い声はとても聞き応えがありました。
4、日向美緒里
舞台劇でキャラがぜーんぜん出ていないことが個別シナリオで明らかになってきます。下手すれば夜々以上に協調性のない人間、もしくは嫌われている人間ではないのかね。普通に無視されているよなぁ、この設定。ここでのシナリオに意味がないからって。
シナリオとしては本作中でかなりまともな部類ですが、肝心のキャラである悪徳高利貸し(10日で1割という利子に高いと思わない主人公は大物だ)が本筋に対してあまり必要性に欠けるあたりが残念というか構造的な矛盾っぽい。それでも願いが何でも叶う訳ではないという実例の示唆(叶ってしまっては身も蓋もない願いもある)と願いを使わないという王道から外れる選択肢は効果があったように思います。
他シナリオと比較すると恋愛スケジュール(?)も大きく違い異色シナリオと言って良さそう。属性も年下のお姉ちゃんキャラと変わってますしね。ただ、これは最終的に解消されてしまうのでキャラの売りとしてはやはり微妙です。もしファンディスクが出てもこのネタを使うのは難しいですからねぇ。少なくとも後日談では無理。「プレイ」ではそれは偽物だし。個人的に上級生の制服でのHシーンが欲しかったかな、と。ギャップも売りである美緒里には相応しいと思うだけに。
5、シロツメ
基本的なキャラは面白い、んですけどねぇ。シナリオとしてはどうにもこうにも。夜々シナリオと意見が一変しているのが笑えます。まさにオマケ。作品のフィナーレとしては何とも物足りない。エピローグもないしね。
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