列国に対して国力で大きく劣るグリンスヴァール王国。その打開策のひとつとして国の名を冠した人材育成機関グリンスヴァール学園を作ることに。その学園長として白羽の矢が立ったのがクライス（変更不可）であった。一見、人と変わらぬ彼は長い時を生きる長寿族。長い時を見据える計画には最適の人材であった。

 

　キャラクターデザインの問題か、佐々木珠流氏と外部のもう一人で交互に作品を送り出すというスタイルが定着しつつあるようです。ただ、シナリオライターが固定であるせいか作品単位の開発期間は順調に延びつつもあるようです。佐々木珠流氏に惹かれる身としてはメーカー買いが微妙に怪しくなってきております。本作はまさに決め手なく悩みながら購入しました。

　恒例のラフ・設定資料本は健在。

 

　ジャンルは学園育成シミュレーション。目的は学園を１００年維持すること。他に細かい目的も色々とありますが、これを達成できれば自然とこなせます。もちろんエロゲーのお題目である目的も。エンディングは「巣作りドラゴン」以降すっかりおなじみとなった選択式を今回も採用。条件さえ満たせば複数のエンディングを同時に見られます。今後も継続して欲しいです。

　ゲームは繰り返しプレイを基本としていて特定のエンディングを迎えるごとにモードが増えていく仕様になっています。最初のモードは５０年で終了。２つ目のモードからが本番とばかりに１００年になります。モードによって特定のイベントが発生済みになっていたりして目指せるエンディングやスタート時の状況が異なります。

　基本行動は「建設」、「臨時予算投入」、「方針決定」、「教師生活」、「ヒロインとの会話」、「休息」の６つ。

　「建設」は文字通り敷地内に各校舎や施設を作ります。最初は作れる施設、面積ともに少ないですが徐々に増えていくように。基本的に場所による制限は特にありませんが一部、園外にしか作れないものも。

　「臨時予算投入」は資金を使うことで各要素を成長させます。

　「方針決定」は学園全体の方針。選んだものによって諸国の評価が上下したり、卒業生の質が変化したりします。

　「教師生活」。実際には次の「ヒロインとの会話」と同列にあるもの。学園長としてだけでなく、教師としても力を入れます。主に学園や主人公に関するイベントが発生。

　「ヒロインとの会話」。全ヒロインに対して用意されていますが、２人目以降は条件が揃わないと出現しません。内容はこちらも読んで字の如く。攻略には欠かせません。

　「休息」はこれまでのソフトハウスキャラ作品と比べて意味が薄いです。ほとんど何も起こりません。従来の作品で起きるような内容は概ね教師生活の方で発生します。

　各行動は１年に１つしか選ぶことができません。行動を決定するとそれに応じたイベントが発生、続いて進路指導画面に。卒業生の一部の進路を指導できます。これは指導とは名ばかりの決定なので逆らわれたりすることはありません。指導した卒業生は他よりも大きな影響力があるようです。他国を強くするも弱くするもこれにかかっているといっても過言ではありません。

　状況によっては戦争を仕掛けられたりすることもあります。こちらから仕掛けることはありません。戦闘は自動でチビキャラ同士の戦いで演出されています。２回負けると学園での戦闘となり施設に影響が出たり、場合によってはゲームオーバーになることも。

　１年の最後に収支結果が出ます。ここで資金がゼロになってもやはりゲームを続けられません。

　時間の経過によって施設は大きく立派になっていきます。しかし、見た目で楽しめるのはここだけで他に学園の成長を肌で感じられる要素が少ないです。他画面で国や学園の様子を見られたりもするのですが、これはパラメータによるものだけでどのような国や学園か、というのがわからないのでさみしいです（施設の配置がどうであっても関係ない）。

 

　足回りは標準クラス。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。

　バックログは別画面で行います。これまでに比べてかなり戻れるようになり、ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後やメッセージウインドウが出ていない時にも使えるなどより便利になりました。個人的にソフトハウスキャラ作品に待望の機能だったのでかなり嬉しいです。

　些細なことではありますがセーブ画面に入ってから３回クリックしないとセーブできないのはやや不便でした。

 

　シナリオは従来に比べても薄い味付け。ヒロインの個性が若干、弱いせいかいつものソフトハウスキャラテイストでありながらもう一歩楽しめません。ヒロインごとのシナリオと呼べるものがないのもツライです。また、声優との絡みもありますがデザイン的にマンネリ感が出ているようにも見えます。ヒロインたちとの会話よりも名もない学園生の会話の方が学園らしさを感じられたのは微妙なところです。

　Ｈシーンにも似たようなことは言えてカップル化して以降はみな似たような展開になってしまうのも悲しいところ。一学園生の不幸な未来を消す、という名目のＨシーン。言わば使い捨てのキャラを用いた、賛否両論のありそうな方がバリエーションに富んでいるのは皮肉なところです。

 

　ＣＧはソフトハウスキャラらしからぬ鮮やかな色使いが目立ちます。学園ものに相応しい雰囲気作りがＣＧでできているのではないかと。

　立ちＣＧはポーズ変化こそ少ないですが表情は多彩に変化、会話を盛りあげる一助になっています。私服なども用意されているのですが普段は圧倒的に制服が多いので変化が少ないように感じてしまうのはもったいないところです。

 

　音楽は１００年という年月を意識してか、穏やかでしっとりした曲が多いです。もちろん、戦闘など激しい局面の曲も場面に応じてしっかりと用意されています。サントラとして聞いても予想以上に良さそうです。

　ボイスはいつも通りの安定した声優陣が担当。しかし、安定しすぎてソフトハウスキャラの作品はいつも同じ声が聞こえるという気がしないでもないです。

 

　まとめ。きつく言ってしまうと地味な佳作。ほどほどにまとまっているものの突き抜けた魅力が感じられないです。学園育成に飽きやすいのも大きなマイナス。せっかくの２ラインなのでもっと冒険して欲しいところ。

　お気に入り：名もない学園生たち

　評点：６５

 

　特に思い入れはないのでキャラ別感想はありません。