木ノ本家は女ばかりの家族。矢崎家は男ばかりの家族。隣り合う両家はとても仲が良かった。しかし、互いに早くに相方を亡くしていて、残された家長は子供たちと同じ性、すなわち木ノ本家は母親で矢崎家は父親であった。そうしてはや十年。両家の家長はほぼ同じ結論にたどり着いた。
「息子(娘)が欲しい!」と。普通ならただの無い物ねだりであったが両家には望みを叶える妙案が可能であった。
そして、家族交換という信じがたい行いがまかり通ったのである。これが愚行かはたまた偉大な思いつきかは3ヶ月後の期間終了の時に出るであろう。
ASa Projectの第4弾は実妹でも義妹でもないのにお兄ちゃん!?な家族交換アドベンチャー。
購入動機はちょっと話題の作品が気になったので。ここのデビュー作を買っているので懐かしい気持ちになって、ということも。
初回特典はFullサントラ入り希桜の作業用BGM。
修正ファイルが出ています。なくてはどうにもならないものではありませんが、気になる方はダウンロードしておきましょう。
ジャンルはいつもの通りのアドベンチャー。
足回りは平均程度。メッセージスキップは既読未読を判別して標準的なスピード。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。それなりに戻ることができますがスクロールバーがないのでちょっと戻りにくいです。ロード直後には使用できません。また、ボイスの発声中に起動すると音声をカットされてしまいます。
些細なことですが厳密にはメッセージ表示にNo waitがありません。最速にしてもちょっと流れるように表示されます。
シナリオはギャグがメインです。デビュー作でもそうでしたが、どうやらここのブランドのお家芸的な感じになっているようです。ネタはパロディなどはほとんどなく、概ね作品世界内のネタで勝負しています。ただし、例外があってキャラクターたちはみんな自分たちがエロゲーの登場人物であることを知っています。それを踏まえたネタ振りがわりと多く用意されています。
これは突発的な笑いに繋がっている反面、どれほどシリアスになってもそれに徹しきれないという弱みにもなっています。実際、そうしてキャラクターがオチをつけてしまうケースも少なくありませんし、なくともプレイヤー側との間で温度差が生じるのは否めません。それでも、頑張って綺麗にまとめようとしているところは好感が持てます。
テキストは複数ライター制を採用しているわりには差異を感じにくくなっています。その代わりに個人で書いているものの得手不得手、といったような印象を受けるところがあります。
日常の掛け合いはボケとツッコミの一辺倒と表現しても過言ではなく、隙あらば笑いに持っていこうとします。爆笑度はかなり高く、相性が合うならば腹筋が痛くなるかもしれません。
惹かれあう過程はシナリオによって差があります。丁寧に書かれているものもあれば、ちょっと苦しいもの、初めから好きなので端折り気味なものもあります。
Hシーンは各ヒロイン平等に3回ずつ。尺は短めであまりエロさは感じません。乱暴に言えばシチュエーションが変わっても代わり映えしないようなところがあります。
CG。シナリオのハイテンションさに負けないギャグ用素材が用意されています。2人ほどヒロインがまるで生贄のように変顔や笑いのための表情が立ちCGにあります。白目なんてありがちなおとなしいものではありません。サブキャラに負けないクオリティは一部とても美少女に見えません(ほめ言葉)。
一方でイベントCGにはあまりそうしたギャグっぽさは打ち出されていません。SDカットもありますが、それも笑いというよりはとても「可愛い」寄りの仕上げとなっているので。
Hシーンはエロさよりも可愛さ重視のように見えます。差分もそれほど多くはなく、強いこだわりは感じられませんでした。
音楽は意外とまともな感じの曲が揃っています。作品全体のギャグテイストほどには影響を受けていません。サントラが用意されているのも納得な感じの聞き応えある曲が多いです。ボーカルも何気に4曲と気合が感じられます。
ボイスは主人公のほか、立ちCGがないようなキャラには一切、用意されていません。演技は五人姉妹が競い合うかのような個性の表現が見事です。迂闊に飛ばすには惜しいセリフ(演技)がたくさんありました。
まとめ。少しばかり歪に感じるところが気持ちいい作品。典型的な世界観に浸る作品ではないかと思います。好きな人はアフターシナリオとか作ってくれるとすげぇ喜ぶような。普通のアドベンチャーにちょっと食傷ぎみな人にお勧め。もちろん、大作に疲れた人にも。
お気に入り:木ノ本家全員と言いたいですがあえて乃来亜、華
評点:75
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、木ノ本マヨ
希桜さんは川崎麻世のファンとかそんな感じだったりするのでしょうか。そんな無理矢理っぽい理由以外にはちょっと不思議に思えてしまう名前です。カタカナだしねぇ。プレイ中はマヨネーズが頭から離れませんでした。
マヨ姉はいい性格しているんですけど、本人シナリオではあんまり出番がなくてちょっと残念。正直、妹たちのシナリオの方が存在感があるような気がします。
2、木ノ本咲耶
色々とまずいヒト。姉妹きっての変態であることは疑う余地がありません。下手したら主人公よりも主人公グッズの方が大事そうなあたり笑えます。だって本人を前にしてあんな風に悶えたりできないでしょ。でも、あの時間が自分でもすげぇ大事だろうっていう。
指輪の件はしなくてもいいほどに株を下げました。せめて自分で半額だしていればまだしもましだったろうにねぇ。全て計算付くではないからこそタチが悪いという典型。そういう生態の生き物だっていうあたりが。
実咲シナリオで明らかになる大罪はこの指輪の件で繋がって来ないのが不思議なほど。またしても大事なものを奪うのか、と。実咲の立場からすれば大概にして欲しいでしょうね。
3、木ノ本実咲
本作が基本ギャグ調だからあまり深刻になってないけど、過去が重すぎる。あの実咲がかつては咲耶のようだったなんて。あまりに貧乏くじ過ぎますな。主人公も別人を同じ人間として扱ってしまったのだから罪深すぎます。
姉妹の中で比較的まともだからこそ被害者になりやすいという構図が泣かせる。なぜかおっぱい担当らしい。巨乳は他にもいるのに。
そういや冬の外出着がなんか変です。どうして鎖骨が剥き出しなんでしょう。あまりにも寒そうです。
4、木ノ本乃来亜
1人だけ貧乳、1人だけ家族に髪の色が被る人がいない、1人だけ立ちCGに変顔がある、1人だけぶっちぎりで名前が変である。このような理由から血がつながっていないのではないか、本気で疑っていましたがそれらしい記述はなし。まぁ、もしかしたら裏設定という可能性もありますよね。もし、そんな設定があると乃来亜がさらに気の毒になってしまうし。
作品を背負うお笑い担当。大抵の笑えるネタは乃来亜が何らかの形で絡んでました。
シナリオは後に回したからこそ意義深くなったような気がします。姉妹の絆という主題にも合致していたし、他のシナリオでさんざん乃来亜のアレな姿を見ていただけに自分のシナリオが活きてくるという。中学生みたいな恋愛もなかなか良かったです。
5、木ノ本華
思ったことと正反対のことを言ってしまうというある意味で咲耶以上の素直でないキャラ。なぜか、木ノ本家の言ってはいけない秘密ネタ担当でどうしてか、主人公と一緒にいる時にそれを実咲にばらされてしまうという。咲耶の漫画に関する掟イベントの華は可愛かったです。
全体的に誘い受けのような華はなんとも愛すべき妹だと思いました。格好いいところはマヨ姉シナリオに集約されてましたからね。そんなところもまた控えめな末っ子らしい。
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