奴隷シィルを連れて冒険に出たランスは今日も鬼畜でした。ところが今回訪れたゼス国は特別な身分制度の国。魔法使いが偉く、非魔法使いは偉くない。そんな国だったのです。よってシィルは歓待されランスはあえなく牢獄行きに。まさに天国と地獄。しかし、理不尽帝王のランスがこのまま黙っているはずはないのでした。
「5D」から意外なほどの早さで発売された本作。予想通りというか「5」ではありませんでした。まぁ、本シリーズにおいてはそれほど数字の意味は大きくないのですけど。もう定着したシリーズものなので。
購入動機は同梱の「ウルトラ魔法少女まななVOL.1」のみ。正直なところ本体のみなら回避の予定でした。
正規のシリーズということでジャンルはRPG。ただし、2Dから昨今では珍しい3Dダンジョン形式に。もちろんエロゲーですから(?)オートマッピング機能を搭載しています。
システムの設計はプレイヤーの環境によって3D時の描画設定を複数用意していたり、同じく3D時のマウス操作を3種用意するなど色々と気配りがされていて好印象。
ゲームの基本スタイルは任務をこなしていくことで進行します。任務の時にだけ3Dマップに入るのでワールドマップを闊歩することはありません。
任務の遂行は完全にプレイヤーに任されています。基本画面において起こすことが可能なイベント一覧(含む任務)が用意されていて、いわばこれが行動予定表。ひとつひとつのイベントには起こすために必要な3種の玉と数があり、これは冒険に出かけることによって入手できますが、どの玉も一度に3個までしかストックすることはできません(無目的でもダンジョンには入れます)。任務にはストーリーを進める上で重要なものとそうでない寄り道的なものがあり、見た目で判別できるようになっています。
任務を選択した後もその遂行はやはりプレイヤー任せ。目的地ではないダンジョンに入るのも自由ですし、どう見ても緊迫した状況でも何度となくトライできます。こうした面に見られるように全体的な難易度は優しめ。バランス調整にもかなり時間がかけられているであろうことが窺えます。
こうした自由度と適度なバランスの上に成り立つゲームの基本は高い中毒性を持っています。どのイベントからこなそうか。そんな感情を抱かせるところにテンションを保つ秘訣があるのかも。
戦闘はここしばらくのアリスの大型作品にはお馴染みの気力制を採用しています。どんな強力なキャラもこの値がゼロになってはどれほど体力が残っていようと戦えません。恐らくはパーティーが大所帯になることを考慮してのシステムかと思われます。
戦闘に参加できるのは最大6人。ただし、これ以外のメンバーも探索には参加しているので経験値は平等に入ります。入れかわり立ちかわり戦闘に参加する感じです。
戦闘をこなしてレベルを上げる、このあたりは従来通りですが、今回は才能限界というものが各キャラごとに設定されています。文字通り特定のレベルになるとそれ以上アップしなくなるという厄介なシステムで困ったことにかなり早い段階でこれが起こります。対処方法は各キャラごとにあることはあるのですが(主にランスとのH)、効果が長持ちしないため中盤以降は半数近くのキャラの処理に絶えず追われることになります。その様はまるで爆弾処理のようであからさまに進行を遅らせる仕組みが透けて見えてイメージは悪いです。もちろん、ここでも上述の玉を集める必要があります。純粋に成長が止まるというのはRPGの楽しみをかなり損なっているような(平均的なクリアレベルでほとんどのキャラの成長は完全に止まっている)。
足回りは安心の大手の仕事。メッセージスキップは既読未読を判別した上で非常に高速。RPGには珍しくバックログも用意されています。セリフ以外の数値的なものも残されているので安心です。ただし、メッセージウインドウ枠が表示されていない時には使えません。
安定したシステム回りをきっちりと作り上げた上で本作は驚くほどのボリュームを用意しています。その規模はコンシューマーのRPGと同じかそれ以上。クリア後の仕掛けまであり、たっぷりと遊ぶことができます。間違いなく今年No.1のボリュームでしょう。
シナリオは基本的に「鬼畜王ランス」のゼス国パートの焼き直しであるため、経験者には予定調和に感じられます。新規の部分も大筋は先が読みやすいため、物語的な楽しみは薄いです。
テキストはかなり厳しい出来。主人公であるランスはもともと人間的な魅力に溢れるキャラではないのですが、今作ではさらに悪い方向に進化してしまっています。語彙が減り単調なセリフばかりが繰り返されるのでプレイヤーはサッパリ感情移入できません。そのくせ都合の良い時だけ理知的になったりして相当に不自然。明らかにシステム的な面白さにカバーされている印象があります。
しかし、その割にというか新しいヒロインの魅力は悪くありません。従来ヒロインに負けない存在感を持っているかと。ただ、ウルザの方は後半失速してマジックに食われてしまった感があるのが残念なところ。
Hシーンのテキストも同様。よりセリフ回しが短調になるため、もはや救いようのないレベルに達しています。RPGというジャンルのせいか尺も短くどうにもフォローできません。「女の子とエッチするのが目的で冒険します」といううたい文句は間違ってはいないものの、残念ながらプレイヤーの目的にはならないように思います。
他に長丁場のゲームにしては異様なまでにエンディングがあっさりしているのは少し気になりました。もう少しくらい余韻を感じさせてくれてもいいような。それと、続編が作られると決まっている訳でもないのに未解決なまま、あからさまに「次に続く」なエピソードが多いのもどうかと。
CG。シリーズ経験者には絵柄そのものが違ったり(「鬼畜王」にも従来にも該当しない)、一部のキャラのデザインが変わっていたりと不可決とは言えない理由で人を選ぶ要因を作っている気がします。塗りも配色がどこか中途半端でなぜかあまり綺麗に見えません。また絵柄もやや安定に欠けているかと。
イベントCGのカットの選択にも疑問を感じます。ゼス美女図鑑なるものを用意するのはいいとしても、そのせいで図鑑に載っている半数のキャラの事実上のカットが1枚しかない(図鑑と合わせて2枚)というのはどうかと思います。期待を煽る演出と結果に差がありすぎるような。
立ちCGは状況に応じて多彩に用意されています。ただ、本当に必要なものしか用意されていないのでキャラによって差が大きいです。ヒロインでいうならマジックはイベントCGに負けない魅力的なカットが多く用意されていますが、反面ウルザは性格も手伝ってか少ない感じ。
音楽はゲーム用のループミュージックとしては悪くないものの単独で聞くにはかなり苦しいです。ゲームを終えると途端に印象から抜け落ちるのもRPGとしてはやや厳しいところかと。
SEはかなり凝ってます。足元の材質によって細かく変わるなど、こだわりの音が耳に残ります。
ボイスはありません。これ以上プレイ時間が増えてもあまり良いことはないし、従来作品でもなかったので正しい判断かと。
まとめ。数々の問題はあれどもどうにかひとつの作品にまとめた秀作。まぁ、作られたことを喜ぶべきかと。続きも気になるところですが個人的には「闘神都市」の新作の方を作って欲しいです。あちらならキャラ的な縛りはないですからね。ランスシリーズはデザインとしてシィルがメインヒロインというのはそろそろ限界のような。
お気に入り:マジック・ザ・ガンジー、セスナ
評点:70
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、シィル・プライン
彼女がメインヒロインであることに納得する人は果たしてどれくらいいるんでしょうかねぇ。カミーラとの最終戦で二人きりになったりとか凄い不自然ですよ。ランスが土壇場で依怙贔屓したりしなければ問題ないんですけどねぇ。土壇場どころかもっと手前で差別が起きてるし。
2、見当かなみ
今回、一番不幸なのは彼女かしら、という気がしないでもないです。よもやランスに脅迫されるような立場に立たされるとはねぇ。情勢がどう転んだところで幸せになれそうもないのが涙を誘います。
戦闘キャラとしてはもう一歩。魔法に弱すぎるし、回避力をいくらあげても数字ほどに避けてくれる感じはしないし。
3、セル・アーチゴルフ
シィルが軟弱なので体力が低くともセルさんに頼るしかないというのが中盤から終盤の実情。
それにしても膜が無事なら後ろはどうでもいいんですかねぇ。どうも納得いかないものがあるような。正直なところ、アベルトに狙われて欲しいキャラだったり。
4、マリア・カスタード
援護射撃を覚えるとまさに別人。それまでは当たらないわ、弱いわと泣きたくなりますがそれを我慢する価値は充分に。彼女がいれば対ハニー戦でもセルさんや魔法使い’sが遊ぶことはありません。キャラとしては昔も今もどーでもいいなぁ。どう見ても志津香の引き立て役だし。
5、魔想志津香
ラガールイベントは「鬼畜王ランス」と大差なく正直、肩透かしの感あり。キャラ的には今も凄く好きなのですが今回はちょい役に近いのが残念なところ。イベントCGがイマイチな分、立ちCGが良い出来なので救われました。数少ない赤くなった顔が良い感じ。今後に活躍は期待できるのかなぁ。
6、サーナキア・ドレルシュカフ
Wをプレイしていないせいか全く愛着湧かず。戦闘キャラとしても魅力低し。
7、コパンドン・ドット
上にほぼ同じ。金にがめつい関西系キャラは温泉パンダを思い出すのでノーサンキュー。
8、リズナ・ランフビット
5Dをプレイしていない私でも彼女はなかなか魅力的でした。和服とエロい体の組み合わせはクるものがありました。景勝とのエピソードはなんか安心できるのでお気に入り。戦闘でも非常に役立ってくれたので。
9、ウルザ・プラナアイス
彼女はあの工作員のような姿ではなくてレジスタンス時代の格好の方が好みです。ボウガンとショートソードを両手に持った姿は凛々しくさえあったので。なんか某月の姫に雰囲気がそっくりでしたけど。
10、マジック・ザ・ガンジー
メガネさんながらでこ娘さんでもあるせいか不思議なほど気に入っています。恐らくは立ちCGのぐるぐる眼が決め手だったのではないかと思われますが。ツンデレと呼んでいいものかわかりませんが、反応の変化が素直に面白いです。伊達にガンジーの娘ではないな、と。
11、ウスピラ真冬
好きなキャラだけにもっと活躍して欲しかったなー。できれば戦闘キャラとして一時的にでも加わって欲しかったですよ。エンディングはなかなか笑わせてもらいましたけど。
12、カオル・クインシー神楽
序盤はあれほど強かったのに……。その凋落ぶりが泣けます。「鬼畜王ランス」時代から好きなキャラなのですが、今回もガンジーラブなので悲しい結末に。まぁ、ランス君では確かにどうしようもないのですけど。
13、カロリア
嫌いなキャラではないので気になるのは次回作以降は生き残れるのかなー、ということ。まぁ、ぶっちゃけ本人ではなくあげはや毒やんとかが好きなんだけどねー。戦闘キャラとしても充分役に立ってくれました。最初に会った時はまさかあれほど強くなるとは夢にも思いませんでした。
13、セスナ
渾身の一撃に惚れ込みましたよ。一体何度、あの一撃に窮地を救われたことか。行動不能になると100%当たるようになるシステムも嬉しかったですわ。FFやSFなんかではよく避けてたからねぇ。平然と。後半は溢れる愛を注ぎ込んだおかげで最後まで活躍。アベルトを殴り殺してくれましたとさ。
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