西暦2030年。大都会の片隅の雑居ビルで、恋愛交渉人を天職と信じて疑わない男がいた。その名は根越栄太(変更不可)。 
 年収12万5千8百円にも負けず、周囲の無理解にも負けず、愛に迷える少女たちのために栄太はハードボイルドの道を突き進む。 
 言うまでもなく彼に欠点は多い。だからそこにロリコンが加わったくらい、どうということはないのである。 
  
 ライアーソフト第五弾。個人的には前作「サフィズムの舷窓」がライアーらしくないと感じたので、巻き返しを期待して購入しました。 
  
 ライアーソフトと言えばこれを抜きに語ることは出来ないでしょう、残念ながら。そうバグです。本当に残念ですが、今回もあります。 
 かつてのソレほどひどくはありませんが、環境によっては強制終了とかしている模様。どうも今回は人によって症状に違いが大きいみたいです。私のところではテキストの読み込みエラーが発生したりしました。 
 全て、かどうかはわかりませんが、修整ファイルが出ています。メーカーコメントによると場合によってはセーブデータが使えないことがあるそうなので、素直にあてておきましょう。 
  
 システムはオーソドックスなアドベンチャーにタイピング要素を合体させたもの。ジャンル名は不条理ネゴベンチャーだそうです。 
 イメージとしては、マイナーなゲームですがPSの「キャプテンラブ」でタイピング、と言えばいいでしょうか。 
 このゲームでは戦闘シーンは全て交渉(説得)で相手を負かします。相手の主張を聞き、効果的な反論をしなくてはなりません。 
 具体的には三つに分けられた文章を正しく組み合わせます(タイピング)。ただし、文脈的には正しくても相手にそれが有効でなければ逆効果です。思わぬ反撃を受けてしまいます。 
 これを数ターン繰り返すことで決着をつけます。負ければゲームオーバーとなりますが、コンティニュー可能です。 
  
 物語は全6話。5話まではゲストヒロイン(個別エンディングなし)が登場、騒ぎの発端となってくれます。また、たいていネゴバトルの相手はこのヒロインです。 
 各話のあとにはメインヒロイン(個別エンディングあり)のエピソードの選択を行います。条件を満たさないと登場しないこともあります。 
  
 足回りはいつものライアー仕様。 
 メッセージスキップは高速ですが、未読既読を判別しません。選択肢単位のスキップ(戻しもあり)も用意されています。こちらは未読既読を判別してくれます。状況に応じて使い分けるといいでしょう。 
 使い勝手に不満はそれほどありません。マニュアルが間違っていたことを除けば。テキストコンパネの説明は正しいのですが、その配置が間違っています。気をつけましょう。 
  
 今作はこれまでのライアー作品にはない新しい試みがされています。簡単に言えばエロの不足を補うものとして用意されたもののようです。 
 ひとつは凌辱ルート。一定の条件を満たしてネゴバトルに敗北すると突入します。全てのヒロインは容赦なく悲惨なバッドエンドに向かってまっしぐら。しかし、オマケ的なので尺は短いです。 
 もうひとつはモノローグモード。通常、凌辱の両Hシーンをヒロインの視点から見たもの。ボイスがありますが、ヒロインの思考なので非常に饒舌です。コンフィグから入れますが、条件あり。 
 個人的には両モードともあまり歓迎できる内容ではありませんでした。凌辱ルートはエンディングに繋がる流れとしてならわかりますが、そういう訳でもないので、後からわざわざ見るというイメージを強く受けました。初めから見ることも可能ですが、流れが寸断されてしまって効果的とは思えません。また、基本的にギャグ主体でこういうルートがあること自体、どうかと思いました。 
 モノローグモードはオマケとしてはいいですが、今作はフルボイスではありません。キャラによってはシナリオ冒頭とHシーンくらいしか喋りません。本編のボイスを減らしてまで作る意味があったのか、疑問に思います。 
  
 シナリオはギャグ主体のドタバタ劇。ライアー作品の中では「ぶるまー2000」の血を最も濃く受け継いでいるでしょう。ただし、マニアックさは薄れてやや一般的になっています。ネタ的には直球勝負から変化球勝負になって迂遠というか、わかりにくくなりました。ぼーっと流し読んでいると気づかないネタ多数。ヤバいのは相変わらずですが、方向が異なっています。 
 複数シナリオライター制ですが、今回はしっかりと統制が取れています。違和感を感じることはありませんでした。テキストのレベルは高く、しっかりと笑わせてもらえました。 
 ただ「ぶるまー2000」とは違って要所でシリアスに締めるといったことがなかったので、印象としてやや弱いかと。このへんは主人公のパワーの違いではないかと思います。 
 もうひとつ。今作の主人公は恋愛交渉人です。つまり迷えるカップルを基本的に応援する役割なんですね。例外もありますが、各話のヒロインとのHシーンは主人公とは関係ないところで行われます。個人的にはなんかものすごい疎外感を感じました(だからゲストヒロインなのかもしれませんが)。 
  
 CGはロリコンハードボイルドの名に恥じない仕上がりになっています。年齢は実に特定しにくい感じです。 
 立ちCGは変化なし。代わりにフェイスウインドウで表情が多彩に変化します。このへんは「ぶるまー2000」より進歩していますね。 
  
 音楽は今作も雑音工房NOISEが担当。やはりこういう作品のほうが実力を発揮するのでしょうか。コメディにあった曲が多く用意されています。 
 オープニングは英語の歌詞の男性ボーカル。その和訳の内容もなかなかすごいです。映像が某カウボーイに似ているあたり、ライアーの真骨頂でしょうか。体験版ではなかった2番まで収録されています。 
 ボイスは前作「サフィズムの舷窓」に引き続いてロックンバナナが担当。相変わらずのレベルの高さで安心して聞けます。ただ、同じ事務所でももう少し違う方をメインに持ってきてもいいかと思いますが。 
  
 まとめ。ライアーらしさを取り戻したギャグ中心の作品。「ぶるまー2000」が好きな方なら問題なくオススメ。シリアスな作品や大作に飽きた方にもいいかと。 
 お気に入り:滝みゆき、ジム・リード(お約束) 
 評点:67 
  
 以下はキャラ別感想。ネタバレはないかと。 
  
  
  
  
  
  
  
1、滝みゆき 
 このゲーム一番のとんがったキャラ。あまりにもライアー的でむしろ安心を覚えるほど。おまけに1話登場なのでことあるごとに各ヒロインと絡んでくれて、たいへん笑わせてもらいました。桜井さちえとのコンビが素敵です。 
 メインヒロインでも良かったのではないでしょうか。 
  
2、倉持浩子 
 正直、登場時の期待が大きかったキャラ。もっと笑わせてくれるかと思ったんですが。シナリオ的にもやや尻すぼみな感じ。 
  
3、北村はるか 
 どうもホームズと名前が馴染みません。呼ばれる度に誰だっけ? という感じでした。 
 出番も少なくそもそもシナリオが短いのが残念。 
  
4、ナタリア・リフトスカヤ 
 ホームズと同じ欠点を抱えています。あまりにも話が急展開で短過ぎるかと。テキストは面白いのですが。 
 キャラ的には魅力的なので良介と結ばれるのは納得がいかないなぁ。もっと出番も欲しかったです。 
  
5、三島のぞみ 
 倉持浩子同様、スタート時の期待は異常に高かったです。特に決起を促すCGが実に印象的なだけに。話も短いなぁ。 
  
6、岡田勇気 
 ツッコミの才能に非凡なものを感じます。幽霊のため滝みゆきと会話が成立しないのが残念。 
  
7、明石亜美 
 色々あって結局、別れた原因がわからないというのが残念。結ばれた理由もよく分からないだけにちょっと……。 
 ハードボイルド的には別れた妻は一生、そのままの方がいいような気がします。 
  
8、桜井さちえ 
 意外とツッコミ上手。加えてどこか天然っぽいところが魅力かと。大家さんというところも個人的にはポイント高し。 
 エンディング的にはもっともオーソドックスでいいかと。人生の墓場でエンドというのもなんかいいです。 
  
9、日向一重 
 シナリオに引きずられてイマイチ個性が発揮されていないような。事前情報では期待していただけに残念。 
  
10、根越栄太 
 「ぶるまー2000」の主人公、常葉愛と比べると明らかにパワー不足。仕方ないかもしれませんが、それが物語全体に弱さを感じてしまう原因かと。 
  
11、ジム・リード 
 このゲームになくてはならないキャラ。桜井さちえが光るのもおやっさんあってこそ。オチや場面転換にも使えるナイスガイ。 
 個人的にはおやっさんを死なせた回数とかエンディングで表示されるともっと嬉しかったのですが。 
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