282   娘3動物園(ぱんだはうす)
 
 天乃川玄人(変更不可)の家は祖父の代からささやかな動物園を営んでいる。大学生活を送っていたある日、事故で両親を失った。残された動物園のことを考えて、途方に暮れながら帰宅した玄人を待っていたのは3人の捨て子だった。
 その日から十数年。赤ん坊は玄人の娘として立派に成長していた。そんな時、未だ細々と続けていた動物園の隣に新しく動物園ができるという話が飛び込んできた。潰れるのは目に見えている。動物園を畳もうとする玄人に娘たちは猛反対するが……。
 
 個人的なぱんだはうすの2本目。「新体操(仮)」に引き続いてさとう氏の原画目当てに購入。
 
 後述するショートケーキフレーバーシステムのルート確認をする際に強制終了が発生することがありますが、今のところ(7月30日現在)修整ファイルはアップされていません。見る際にはセーブしてから、を習慣づけましょう。
 
 システムはオーソドックスなアドベンチャースタイルに加えて、すでに触れたショートケーキフレーバーシステム。
 聞き慣れない名前のシステムは3×5の形に並んだオムニバス形式のシナリオ(全15話。ただし、例外あり)をそれなりに好きに選んでいくといったもの。左端の中央から右へ向かって進行していくので謳い文句ほど好きに選べる訳ではありません。中央を進んでいても下に行けない、といったケースも見受けられますし。
 ルート進行の仕方によってエンディングが分岐していきます。
 足回りは標準程度。メッセージスキップは既読未読も判別してくれますし、選択肢の後も継続してくれますが各画面効果があまり省略されないのでスピードはイマイチです。
 メッセージの巻き戻しは別ウインドウで。かなり戻れるようです。ただし、ボイスは再生できません。
 よくわからない仕様として、ボイスを発声中にセーブロードメニューを呼び出すことが出来ません。これが意外と不便なんでなんとかして欲しかったです。
 
 シナリオはどう評していいやら苦しむ内容。オフィシャルホームページのライターの発言によると超口語体だそうですが、それをどこまで許容できるか、ついていけるかが評価の分かれ目。
 その馴れ馴れしい文体の最大の欠点はシリアスが不可能といっても過言ではない点。シナリオが引き締まることがないのであまり良い印象を受けません。
 テキストにしても自分の娘を「たん」付けで呼んだり、ヒロインのセリフに「これがギャルの生きる道」といったものが頻繁にあったりと、かなり痛いというか寒いような気がするのは私だけではないと思います。ボイスがついているのがさらに良くない方向に効果を倍増させています。
 また、このゲームの肝は「娘」と「動物園」で間違いないでしょうが、それがまたどうにもこうにも。この二つのキーワードに対してプレイ中に「なぜ?」と思わされることが多いです。
 なぜわざわざ「動物園」なのか、なぜヒロインが「娘」なのか、そういった疑問にシナリオが少しも答えてくれません。「動物園」はぶっちゃけ移動場所に動物園がある程度でしかないですし、「娘」はそれが妹でも姉でも全く問題ないと思います。
 娘たちとの掛け合いは前述の一名を除けばそこそこ楽しいのですが、娘たちが父親である主人公に惹かれる描写が全くないというのはどうかと思います。父親たる主人公の方にも義理とはいえ、娘に手を出す葛藤がサッパリないのも解せません。
 スタート時の動物園の経営難という設定がシナリオ上で少しも展開しないのも納得できず。主人公も少しも真剣にならず打開策としてツチノコを探す始末。脱力させるにもほどがあるかと。
 終盤、娘たちのそれぞれの母親が唐突に出てくるのですが、その展開にも疑問。立ちCG、シナリオの流れ、Hシーンと全てが一緒(色違い)というのはやる気がないとしか思えません。
 これまで書いてきた欠点に比べれば些細なことですが、名前のセンスが妙です。主人公の「玄人」を筆頭に「びうら」、「えーた」、「りら」、「あるた」など(全てヒロインの名前)。代わりにサブキャラは「おりはら おりお」など何も考えていないものが多いです。
 
 CGは原画買いするくらいですからなかなか良いんですけど、相変わらずHシーンを初めとして目を閉じたカットがみな同じに見えます。
 イベントCGの少なさは「新体操(仮)」を継承してしまったようです。一作あたり70枚前後が限界なんでしょうか。このボリュームで満足する方はあまりいないのではないかと。
 立ちCGはポーズ、表情とも多彩に変化しますが表情はかなりマンガ的に描かれているので好き嫌いが分かれるかもしれません。
 場面転換にはアイキャッチが用意されています。これが種類もあってなかなかセンスも良いかと。
 
 音楽はどうにも地味な仕上がり。けしてレベルは低くないと思いますが、どうも印象に残っていません。
 ボイスは他の要素に比べるとかなり光っています。声優さんのレベルが総じて高いだけでなく、キャラにしっかりと合ったキャスティングになっています。ただ、メインだけでなく、サブキャラまで何役もこなさせるのはあまり良い印象を与えないのではないでしょうか。演技もほとんど変わりませんし。
 
 まとめ。誉めどころに悩む出来。チーム的に「新体操(仮)」と同じなのかわかりませんが、進化するどころか退化しているように思えました。はっきりと残念な内容。次は買わない可能性大かと。
 お気に入り:あえて言えば琴宮りら(北海道弁なので)
 評点:25
 
 キャラに愛着を感じないのでキャラ別感想はなし。


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