三上辰雄(変更不可)はたった一人の家族である母を失ってただただ自失していた。母の病を治したいがために医大生であったのだからそれも当然であった。
葬儀が滞りなく終わった夜、二人の訪問者が辰雄を訪ねてきた。二人の話は突拍子もないもので、死んだと聞かされていた父はつい先日まで生きていて、とある村の当主であったという。さらに辰雄を新しい当主として迎えに来たと。
当主の件はともかく、父のことが気になった辰雄はその村へ同行することを決めたのだった。
失礼な話ながらこのタイトルで目にするまではネルというブランドのことは全く知りませんでした。それでも魅力的な原画とほどほどに期待させてくれる体験版をプレイして購入を決意。
初回特典はラフ原画設定資料集。当初はこれが通販特典だったのか、表紙に張られている白い訂正シールが微笑ましいです。
一応、修整ファイルが出ています。プレイを継続し難いような極悪なものではなく、一部の男性キャラのボイスをオプションでオフにしてもそのまま垂れ流し続けるケースがあるというもの。男のボイスはどんな時でも不要という方は確認することなく落としておくべきかと。
システムは特別変わったところのないオーソドックスなアドベンチャー。選択肢の数はそれほど多くないので難易度的にはかなり低いです。
足回りは及第点クラス。メッセージスキップは既読未読を判別した上で常に高速を維持。オプションで選択肢後もスキップが継続するのは非常に重宝しました。
メッセージの巻き戻しは珍しいことに別画面とウインドウ単位の双方が用意されています。しかしながら、戻れる量にも特別、差はないのであまり意味はありません。好みで使い分けろ、ということでしょうか。戻れる範囲内であれば、どちらでもボイスのリピート再生は可能。
シナリオはジャンル名からは想像できないほど丁寧にきっちりと描かれています。本作のジャンル名は「夜這い愛好者対応田舎系エロエロADV」といういささか長いもの。よもやこれを見て純愛ゲーム並にヒロインの心情描写がしっかりと描かれていると想像する人がいるでしょうか。
物語の期間は一週間程度ながら、その期間に互いが惹かれ合う過程が充分に描写されています。特殊な要素なくヒロインたちのキャラが立っているので会話がすごく自然に流れます。ただ設定が設定だけに話題が豊富とはいきませんが。
残念なのはHシーン以外に個別シナリオというべきものが存在しないこと(エンディング除く)。重要な部分が全て共通シナリオ扱いというのはやはり悲しいです。テキストの出来が良いだけに尚更そう感じます。
Hシーンはジャンル名に相応しいエロさではあるんですが、「夜這い」の部分にコアなこだわりがあると肩すかしかも。有り体に言えば屋内Hが夜這いであり、屋外Hが昼間という区分けになっているだけなので。
微妙なのは集団凌辱。ヒロインたちはプレイヤーの感情移入を誘うに充分な魅力を持っているのでいくらバッドエンドとはいえ、人によってはダメージを受ける可能性大。反対に凌辱スキーな方がこれで満足するかといえば疑問の余地あり。少なくとも分量において。
CGはシーン数や尺に比較して枚数は少なめ。夜這いシーンに使い回しCGが多いのも気になるところです。
体にかかる影のラインを手描きっぽくするなどCGそのものはたいへん魅力的。だからこそ枚数不足が寂しく感じられるのですが。
立ちCGはポーズ変化が少なく、多彩な表情で勝負するタイプ。イベントCGとの間に落差がないのは嬉しいところ。
音楽は田舎ゲーに相応しい穏やかな曲と古い因習に縛られた村をイメージする曲が大半を占めています。そのレベルは高く、かなりの聞き応えあり。繰り返すようですがジャンル名からはちょっと想像できません。
ボイス。名前を持つキャラは主人公を除いてフルボイス。演技は声優買いも考えられるほどの有名どころが揃っているので全く問題ありません。イメージに合わないということもありませんでした。
まとめ。厳しいことをいえばどっちつかずな作品。個々の要素は非常に良くできているのですが、方向性が二兎を追いかけて分散している印象を受けました。結果として純愛ゲーとして見ても、凌辱ゲーとして見ても物足りない感じがします。
お気に入り:沢渡なずな
評点:65
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、御島せり
素朴な田舎少女。まさに全身でそれを体現する存在。胸のことはちいとも気づかなかったですよ、私は。
2、御國梓
学校での姿が全く想像できません。クラスでひとり浮いているという訳でもないようだし、友人とどんな会話をしているのやら。このゲームってやっぱり本来の日常がすぽーんと欠けているのがもったいないところです。設定上止むを得ないとはいえ。
3、御國綾乃
彼女の年齢はこのゲーム最大の謎。そもそも前回の儀式がいつ行われたのかわからないというところに問題があるのですが。その時辰雄は生まれていたんでしょうか。辰雄の父親と母親が結婚できた理由もよく分からないし。何かひとつ仮定してもその分だけ謎が増えてしまうんでどうにもならないんですよね。
4、御園アンリエッタ・ローゼンバーグ
いいキャラ持っているんですけどねー。他の二人と同じで通常イベントというのがほとんどないのが厳しいところ。プレイ後に長く記憶に残りにくい感じですよ。
5、沢渡なずな
メイン3人に負けない魅力を惜しみなく放っております。プレイ中、何度も苦悶していましたよ。なぜ、積極的になずなに構う選択肢が現れないのか、と。
他のキャラが儀式のことしかない中で彼女は少ないながらも普通っぽいイベントがあるせいで印象度が段違い。いちいち可愛くて困ってました。
エンディングがないのも無念ながらHシーンの少なさもたいそう悲しいです。その二つとも露出が低いってのもねー。
ああ、あのパジャマは反則だと思いマス。イベントCGの両手の皺に原画家の強いこだわりを感じました。
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