主人公(名字は固定、名前のみ変更可能)が幼い頃に誰に出会い、何をしたかで高校生の現代に大きく影響が現れる、未来はまだ何色にも染まってはいない……。
「銀色」はプレイしていないのですが、1作目「White」からは驚くほどの進歩を遂げています(主観ではファミコンがプレステになったくらい)。1作目は立ちCGにあまりにも愛が感じられなかったのですが、今作は見違えるような進歩を遂げています。
初回特典にはねこ缶がついています。よくは知らないんですが、伝統みたいです。
しかし、中古問題は抜きにしても、ふたつ製品を買わないとちょっと開けられないんですけど……(迷わせるようなことが缶にも書いてありますし)。
システムは過去パートと現代パート、それにアフターストーリーの3部構成。
過去パートの選択によって現代パートのルート(攻略可能ヒロイン)が決定。基本的には1本道になります。
アフターストーリーはその名の通り、エンディング後の物語。古いユーザーには「きゃんきゃんバニーエクストラ」と同タイプと言えばわかりやすいでしょうか。Hシーンは本編がソフト、アフターがハードといった印象。
足回りは上々。特に不満はありません。贅沢を言えばメッセージの巻き戻しでボイスも再生されると尚、良かったです。メッセージスキップはそれほど早くはありませんが、あまり使う機会がありませんので問題ないと思います。
シナリオはシステムと絡んだ部分でかなり特殊になっています。過去パートの行動で主人公の周囲の環境に変化が起こります。
その中で一番のものはヒロインの性格や境遇が変化することでしょうか。そのために他のゲームには見られる共通シナリオというものが存在しません(だからメッセージスキップを使う機会はあまりないのですね)。私は勝手に過去改竄システムと呼んでおりました。
シナリオの傾向には若干の特徴があり、主人公のモノローグというか、考えていることがあまりはっきりとしません。主人公=プレイヤーというスタンスで遊ぶ方にはやや不満かもしれません。
物語全体に漂う雰囲気はかなり良いものに仕上がっています。スタッフが気を使って丁寧に世界観を作り上げていることがわかります。ただ共通シナリオというものがないので、絡む人物が少ないのが残念なところです。
CGはタイトルに則した明るい色調のものが多く用意されています。原画の秋乃武彦氏はかなりレベルが上がっていますね。それでも時折、同一人物に見えないものがありますが(特に先輩)。反対に言えば次回作では更なる向上が期待できそうです。
音楽はかなりの高品質。聞きごたえある曲が揃っています。サウンドトラックが発売されるのも納得の出来ばえです。
オープニングにはボーカル曲が用意されています。この曲はボーカル無しバージョンもあって劇中に使われているのですが、なんかエンディング目前のような印象を受けてしまいますね。いい曲なんですけど。
シーンに合わせた曲自体のチョイス、という意味ではもう一歩という感じがします。
オープニングがボーカル曲なのに、エンディングが異なるというのは珍しいかもしれませんね。挿入歌はあるのですが。
ボイスは音楽に負けないハイレベル。各キャラにぴったりの声優が起用されています。ホント、最近はレベルが高いんで嬉しい限りです。特に雪希役の声優さんの自然体の演技は素晴らしいです。今後の活躍も期待しています。
まとめ。飛び抜けた長所はないものの、安心して遊べる良作というところでしょうか。完成度の高さが光ってます。ねこねこソフトにはぜひとも、keyとは異なる道に進んで欲しいですね。
お気に入り:片瀬雪希
評点:68
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、早坂日和
なんつーか、妙なところばかりが日和のシナリオでは気になりました。
くだらないところでは子供用プールを使う主人公に。確かに雑巾がけの必要はなくなりますが、たまった水はいったいどうするつもりだったのでしょう。捨てるのはかなり大変だと思うのですけど。
真面目なところでは日和の引っ越し先が隣町だということ。あれほど悔いを残して別れたにもかかわらず、そのまま電話や手紙の一通もなかったというのは不自然ではないかと。
もっとずっと遠くならともかく、隣町なら中学生にでもなれば会いに行けそうなものだし、そうでなくとも文通くらいはしてそうなものだと思うのですが(雪希相手でも)。感動的なシナリオであればあるほどそのへんがどうしても気になってしまうんですよね。いっそもっと遠くに引っ越したとかにすればよかったのに。
だからという訳でもないんですけど、日和シナリオはギャグのほうが強く印象に残っています。特に嘘がつけない雪希と進藤の会話はGood。アフターストーリーでまで笑わせてくれますしね。
個人的にはやはり雪希シナリオの、幼い頃から一緒に過ごしてきた日和を幸せにしてあげたかったです。
どーでもいいことですが、遊園地のコーヒーカップのCGは雑誌掲載時に見た時は自転車に乗っているのかと思ってました。こんなのはやはり私だけでしょうか。
2、神津麻美
先輩は過去パートに登場しないしわ寄せがシナリオの後半に表れてしまっているようです。CG乱打の場面では主人公は完全に置いてきぼりですしね。
過去が重要な要素を占めているこのゲームではちょっとツライですね。ただでさえ、先輩は何を考えているのかよくわからないところがあるのですし。
先輩が名付け親になるために、雪希が猫に名前をつけずに「猫さん」と呼ぶのは明らかに不自然。
このシナリオに限らないけれど、どうも主人公のリアクションが小さい。何気ない会話がどれほど大事かということが、このゲームの肝のひとつだと思うのだけれど、主人公の反応が淡白過ぎてどうもうまく伝わってこないです。
何を感じ、何を思ったか。それが書かれていないとプレイヤーはうまく受け取れないと思うのですが。
3、小野崎清香
なんつーか、すげぇリボンです。ここまで大きなものを使うからにはさぞや大切な思い出でもあるかと思いきや、シナリオでは一切、明かされず。がーん。ショック。
清香の母親が最後しか喋らないのは実に不満。せめて2度目のプレイでは喋るとか、して欲しかったところ。
リボンを外した夜の窓辺でのカットが一番可愛く見えるのは私だけでしょうか。あのCGはお気に入りです。
それにしてもお風呂でのリボンは携帯用かなにかなんでしょうか? やっぱり外してくれた方が嬉しかったなぁ。
このシナリオで最も気になったのは清香の母親の、信頼した相手しか家に連れてこないという主旨の発言。連れてきた相手が雪希の他には主人公だけって……、日和は? 日和は信頼できないということなんですか!? かなりショックを受けました。
クラスで日和の代役で隣に座っている彼女は何者なんでしょう。その髪型が気になって夜も眠れません。
4、進藤むつき
納得いかねぇ〜! と多くのユーザーが思ったと私は確信しています。どう見ても気の強い進藤の方が魅力的に見えますよ。演技もそちらのほうがハイテンションで飛ばしているように聞こえますし。ついでに言えば、髪は幼い頃のように長い方が良かったです。
過去パートに出てくる思い出の相手は本物のむつきなんです。一面的な見方をすれば恋ってやつは錯覚というか、思い込みの産物な訳です。同じ姿でリボンをして「むつき」と呼んで、それで返事をした彼女は紛れもなく本物のむつきなんですよ。
しかも、姉が事故で亡くなっているとかならともかく、今も健在。その状態で妹が姉のフリをしている(その姿に頼ろうとしている)ということは明らかな、思い出の彼女が成長した「本物」がいるということなのです。
主人公も思考停止というか、切り替えが早すぎます。普通に考えたら混乱して、少しは冷却期間を置こうとか、すると思うんですけどね。
妹とつきあう以上、主人公はいずれ必ず「本物のむつき」と再会するでしょう。借り物は借り物でしかない。そのことを妹は痛感し、自己矛盾に襲われる(かもしれません)。そのとき主人公はどうなるのでしょうか。
それにしても最後までヒロインの名前が明かされないゲームというのは初めてですね。
5、片瀬雪希
あー、こういうキャラがいると名字を変更できないのはなんか悔しいです。私はそういうところに妙な喜びを見出すようなので。
全シナリオ中、屈指の完成度を誇るシナリオは圧巻。ほとんど穴らしい穴が見当たりません。まさに見事の一言です。
素直で素直で素直な、という素敵過ぎるスキルの持ち主。素敵過ぎて妹には見えません。個人的にこの感覚はパンダが可愛い、とかいうものによく似ているような気がします(念のために書いとくとほめ言葉です)。
嫌な子にはなれないので、せめて出来のいい子になって困らせないようにしようというあたりは、あまりに健気で実にぐっと来ました。主人公は日和のことも含めてあまりにも罪深いです。遊園地のCGは悲しくて、それゆえにとても印象的でお気に入り。
気になったのは親父にはなんと言うつもりなのか、ということ。そのあたり期待していただけに、なくて残念。
雪希は事実上、アフターストーリーがふたつあるようなものなのも良かったです。やはり裸エプロンは男のロマンでしょう。
挿入歌が入っているあたりはこっちがメインヒロインなのかという気がしないでもないです。やはり日和とダブルヒロインなんでしょうか。
それにしても長い。本文より長いような。なんかずいぶんと厳しいことを書いていますが、私の場合はそれが愛の現れ、と思っていただければ幸いです。
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