小日向雄馬(変更不可)の通う瑞穂坂学園には魔法科がある。普通科である雄馬には縁のない話、であったのは1年までのこと。謎の校舎爆破事件によって一時的にではあるが魔法科と普通科が同じ教室で学ぶことになったのだ。その中には学園始まって以来の才媛、神坂春姫や彼女にライバル意識を燃やす柊杏璃の姿があった。魔法に対して苦い思いを抱える雄馬にとってこれは幸運か、あるいは不運の始まりか。
個人的に初ういんどみる作品ということで他の作品のことはよく知らなかったり。日参するほど好きなサイトで条件付きながら誉めている感想を見て記憶に残していたところ、買い物のついでに見かけて購入。
初回特典は原画集とサントラ。
重大な欠陥ではありませんが修正ファイルが出ています。より快適にプレイするためにインストール後に即あてておきましょう。
ジャンルはいつも通り変わったところのないアドベンチャー。
足回りはなかなかに優秀。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用できてかなり戻ることができます(もしかしたら最初まで)。ただ、スクロールバーがなく、最大4クリック単位でしか逆上れないのはやや不便です。
他にもひとつ前の選択肢に戻る機能も用意されています。
シナリオは血統書がつきそうなほどの萌え特化。ある意味での開き直りさえ感じさせるほどそれに力が入っていて、逆にシリアスな方向では嘘のようにやる気が感じられません。とにかくヒロインの魅力を楽しむことが本作の最重要課題であることは間違いないです。
日常の掛け合いはテンポ良く普通に楽しめます。ただし、魔法科の一風変わった学園生活などを期待すると痛い目を見ます。また、本作の掛け合いの妙はエロゲーのお約束を踏まえた上での味なのでプレイ中は楽しいですが、終えた後に記憶に残るかは難しいところです。
主人公とヒロインの距離が徐々に近づいていく様子は丁寧に描かれていて好印象。ただ、干渉し始める根っこの動機が描かれていないケースが幾つか見られるのはもったいないです(開始時にすごく親しい訳ではないが、すでにお気に入りである、とか)。
中盤から終盤にかけて日常を離れたシリアスな魔法バトルとなっていくのですがこれがどうにも。設定が地に足がついていない状態なので、なにはなくとも疑問が浮かんでしまいます。例えば優しいヒロインが立場が違うだけのクラスメイトに向かって、防げなければ明らかに死ぬ魔法を平然とぶっ放す姿というのはどうしたって違和感を感じます。
戦闘という面から見ても筋書きや殺陣のようなものは感じられず、演出ほどには興味を引かれません。加えてこの展開が1周目から5周目まで全て同じというのはどうかと思います。
Hシーンはメインヒロインは仲良く3回ずつ。衣装の数だけある、と言っても間違いではありません。サブヒロインはその地位ゆえに1回のみ。純愛系のゲームにしてはかなり頑張ってエロくしていると思います。真面目にプレイするならCG差分回収のために同じHシーンを8回プレイしなければならないのは素直にツライです。
最後に、一番人気が出そうなキャラが男(見た目は女、もちろんエンドなし)というのはどうなのか、と。
CGは可愛らしい絵柄を最大限に活かす塗りが光ります。立ちCGは緩急、遠近自在でかなり賑やかです。仮にイベントCGが少なかったとしてもそれを感じさせないであろうくらいに豊富な表情、ポーズが用意されています。立ちCGだけでヒロインの魅力というものを充分に描ききっているのではないかと。
イベントCGは立ちCGとは対照的に出来映えにばらつきがあるように感じました。どうもヒロインによって原画家の気合が違うように思えてなりません。
魔法関係の演出にはRPGですか? というくらいの気合の入ったものを用意。見た目には楽しませてくれます。ただ、5周も同じものが続くとさすがに飽きてきますが。ハッキリ言って、ジャンルのわりに要求される環境が高めなのはここのためだけです。
Hシーンはテキストよりもずっと気合を感じます。中でもメインヒロイン神坂春姫へのこだわりは只事ではないような。他とはまさに一線を画す仕上がり。
立ちCG用の鑑賞モードが用意されていて自由な組み合わせで閲覧することができます。ただし、残念なことに戦闘関連のものはどうしてか登録されず見ることができません。こうした機能はどこのメーカーも搭載してもらいたいです。
イベントCG用の鑑賞モードはCG差分が同じ枠扱いで、数が50とかすごいことになってます。しかも、それでいて差分の種類そのものは少ないという。もうちょっとシステムを考えて欲しいです。
音楽は予想を裏切って(失礼)かなり聞き応えがあります。比較的、用途の広い曲作りをしているように感じました。日常から雰囲気のある曲がたびたび流れる、など。エンディングはヒロインごとにそれぞれの声優が歌う曲が用意されていてなかなか豪華。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。ヒロインの魅力に力を注ぐ、に相応しいキャスティングがされています。ただ、柊杏璃役の成瀬未亜さんの演技はやや人を選ぶかも。
まとめ。良くも悪くも萌えゲーの見本。萌えのわからない人間にも伝わってくるものはありました。ただ、これは見本であってけしてお手本でないのは悲しい。業界にはシナリオも優れた萌えゲー(シナリオが良いならそう呼ばないかもしれませんが)がぼちぼち出始めているのでういんどみるにも頑張ってもらいたいところ。
お気に入り:神坂春姫、渡良瀬準、小日向音羽
評点:70
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、上条信哉
なんかもったいないキャラ。ギャグ方面でもシリアス方面でももっと活躍できたと思うだけに登場機会の少なさが悔やまれる。せめてオーラスシナリオでは妹と恋仲になった主人公ともっと絡んで欲しかった。
2、高溝八輔
早い話がうっかり八兵衛なんだろうね。格さん助さんを引き立てるために存在するという役回り。実際、ハチのお間抜けな言動がないと主人公は感じの悪い人間に見えかねない。それとハチ本人も言動の中身の割りには憎めないキャラに仕上がっている。普通なら単純な嫌われキャラなのに。
春姫の失敗弁当を食べて毒ステータス状態になるのはなかなかラブリーでした。
3、式守伊吹
正体を隠すつもりが最初からさらさらない、というのが本作のシリアス面でのやる気のなさを垣間見せている。信哉同様に型にはまりすぎたキャラなので面白味はない。あるのはすももにいじくり倒される姿だけといっても過言ではない。単独でのアピールポイントに欠けたキャラ。
4、小日向すもも
妹であるうちはいいのですが、そのラインを越えると途端に距離が近くなりすぎてうざくなるキャラ。他のメンバーの登場機会を奪うというだけでも単純に困りもの。やはり妹属性がない人間には辛すぎる。ひとつの踏み絵というか判定ラインといってもいいかも。実の姉や妹がいる人間はこのくらいの濃さになってくると拒絶反応が出始めます。
杏璃シナリオ終盤の朝の兄妹突発コント(すももが寝坊するイベント)はかなり面白かったです。安玖深音さんの演技もこのシーンは特に良かったです。全編ギャグのレベルがこれくらい高ければ相当に腹筋が鍛えられたであろうに。
5、高峰小雪
ハッキリ言ってしまえば日向裕羅さん効果が非常に大きいと思います。他の声優さんではもう一歩に感じるのではないかと。
黒いところが魅力なんでしょうが、シナリオに全く関係ないのがツライところ。キャラ特性と筋書きが分離しているって悲しいなぁ。口がバッテンになっているのや、ニヤリとしているカット好きなんですけどね。
小雪さんの魔法服はかなりエロいです。つーか、胸元に見えているのはもしや下着なんですか? さらに全員異なる魔法服はどうやって調達しているのでしょうか。まさか手縫いですか?
6、柊杏璃
碌に修行もせんでパワーアップする姿はどうかと思います。どうせならちゃんと苦労させればいいのに。どのみち秀才タイプなんですから。まぁ、それにしたって吹っ切れるのが戦闘中に後ろから抱きしめたから、ってのは承服しがたいですな。母親と他人は違いますよ?
あまり触れられていないんですが、もしやお嬢なんでしょうか。警戒感のなさとか無駄にプライド高いところとかそんな感じ。
そういやこれを書く時に思い出したんですが、「歩く災害スプリンクラー」というのは一体どの辺で表現されていたんでしょうか。トラブルメーカーというイメージはあまりないのですが。
7、御薙鈴莉
実母が北都南さん。なんだか夢の響きです。音羽さんとのかーさん合戦はもう少し見たかったかも。どうもジョーカーキャラのようで出番の少なさが残念。お茶目なところも音羽さん以上のようですからね。
「八神くんの家庭の事情」と勝負できます。ああ、自分に画力があれば「はぴねす!版八神くん」が描きたいなぁ。
8、上条沙耶
クリアするまで気付かなかったんですが、恐ろしいほど控えめなプロポーション。すももがライバルでしかも負けているというあたり涙を誘います。そう考えるとHシーンもなんだかこれまで以上に幼く見えるような。
好きなキャラなんですが何分サブキャラの悲しさが全てにつきまとっています。ファンディスクがあるならもうちょい報われて欲しいですがメインにちゃんと人気がありそうなんで難しいかなぁ。
9、小日向音羽
プレイ当初は攻略可能であると本気で思ってました。それくらいの存在感と魅力を持っていると思います。つーか、せっかく義理なんだし親子丼にうってつけではないですかと。鈴莉が無理なんですから、ねぇ。彼女に出番のないシナリオはどうしたって寂しさが漂っていますよ。
10、渡良瀬準
これぞ全てを押し退ける無敵の存在。ファンディスクのために端から扱いを外しているのでなければスタッフは正真正銘ダメだと思います。そりゃ、誰だって「幸せ、足りてる?」の問いに「足りてない」と答えますとも。
最強のムードメーカーは出番さえあればいつでもどこでも大活躍。そこらのヒロインなんか目じゃありません。果たして春姫シナリオにしか目立った出番がないのは担当ライターが自分のヒロインを食われてしまうことを危惧したのか、それとも純粋に扱いかねると判断したのか。どちらもありえそうです。
イベントCGが皆無であるとは信じられない存在感。声優のハイテンションな演技も光ります。でも、オーラスシナリオのラストCGにくらいはきちんと描いて欲しかったですよ。せめてあれくらいはねぇ。
11、神坂春姫
戦慄の90Fはこれ以上ないほどのアピールポイント。というかゲーム終了までにその意識が植えつけられるといった方が正解かも。学園の生徒がどんな目で春姫を見ているかだとか、カボチャの効能に対する演出だとか、もちろんHシーンだとか、とにかく全部が一方向を指しているように見えてなりません。立ちCGの制服の前合わせが描くラインもかなりすごいです。準と比較してみるとそのすごさがよりわかります。純愛ゲーのメインヒロインとしては史上最大の乳だったりしてね、もしかして。
CGはイマイチ顔が安定していない感じでした。特に合体魔法CGなんてパッと見まるで野々原幹氏の描くヒロインのよう。恐らく春姫がそれらしく見えるかどうかのポイントは左右の前髪の「房」ではないかと。これがふっくら緩やかなウェーブを描いてないと他人に見えやすくなると思います。
一見、可愛い魔法服はかなりエロいです。丈が短く切れ込みが入っているあたり。特にその切れ込みに向かってガーター(?)が延びているのは反則ものです。
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