冬の足音が間近に迫ってきたある日、浅倉鷹也(変更可能)はいきなり魔法研究会の部長に祭り上げられてしまう。しかも研究会は部員の不足で廃部の危機に瀕しているという。一番下っぱの部長は新入部員を獲得し、茶を飲んで菓子をつまむことを主な活動内容とする研究会を守れるのか。
年間いくつ生まれているのか把握するだけでも大変そうな新ブランド。fengもまたそうした新ブランドのひとつ。最近の流行りに従ってか、デビュー作からかなりの延期(発売未定)の末に発売されました。
初回特典はサントラCD。容量を考えれば本編もCD−DAにすれば良かったような気がしないでもありません。
例によって例の如く修整ファイルが出ています。未だ完全駆除ではないようですが、あてないとゲームにならない可能性が大ですので必ず落としましょう。修整ファイルとは思えないほど容量大きいですけど(4.6MB)。
ちなみに私は1コ前のバージョンでプレイしていましたので、ただクリックしているだけでランダムにクイックセーブ&ロードメニュー、メッセージの巻き戻しモード、環境設定画面のいずれかが立ち上がるという症状にずっと悩まされました。見たはずのCGも幾つか埋まっていません。
しかし、CDなしでプレイできるのはこのゲームの数少ない長所のひとつだと思うんですけど、どうして修整ファイルをあてる時にCDが必要なんでしょうね。個人的にこんなゲームは初めてなんですけど。
システムはヒロインの場所選択型アドベンチャー。キャラがダイレクトでわかるのではなく、各ヒロインごとにマークが色分けされているというよく分からない仕様。これなら初めから素直に教えてくれてもいいんじゃないでしょうか、と思わないでもありません。
ゲーム内時間で12月2日が終わったところで個別シナリオに移行するお馴染みのシナリオ構造。とはいっても他作品とは微妙に違い、12月2日までと後が完全に分離しています。そもそも目当てのヒロインに会い続ける、というほど各ヒロインは登場してくれません。3周もするころにはほとんど全ての移動先会話を読んでしまっていると言っても過言ではなく。詰まるところ、継続して会うことによって発生する会話というもの(連続性)が一切ないんですね。よって主人公とヒロインが徐々に親密になる様子を描くなど不可能なシステムになっている訳です。
足回りは安定性のことを見て見ぬふりをしてもちょっとセンスが良くない感じ。
メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。このタイプのバックログというのは、一度クリックすると文字の色が変わって一つ前の文章が表示される、というのが一般的だと思うのですが、今作では文章はそのままで色が変わるだけ。つまり一つ前の文章をクリックミスで読み直す際には2回クリックしなくてはならないんですよ。これはちと不便だと思います。
ちなみに当該文章をクリックすればボイスの再生も行えます。
メッセージスキップは既読未読をしっかりと判別してくれます。バグの内容から考えると信じられなくてちょっと感動したというのは秘密。
スピードは充分ですが、選択肢の後に止まってしまうのが難点。せめてカスタマイズ出来るようにして欲しかったですが、そんなことを目論めばバグが酷くなりそうなんで取りあえずはいいです。
シナリオはやっぱり現代魔法モノはアレなのかと言いたくなる仕上がり。典型的なデビュー作のシナリオと評してもいいかもしれません。
まずシナリオが短い。最近はF&Cでもひとつのシナリオがここまで小粒というのは珍しいのではないでしょうか。システムのところで書いたように、個別シナリオと呼べる部分が移動先選択が行われなくなってから始まる、というのもそうした印象を強めてしまっています。
日常的に魔法を使えるという世界観をわざわざ用意しながらその魔法がなくとも成立するシナリオがほとんどを占めているというのもどうかと思います。言い換えれば設定を活かせていないんですね。企画意図というものをちょっと疑ってしまいます。
システムに絡む問題でもありますが、このゲームには演出された「間」というものがありません。日付が変わった時、場所が変わった時、何事もなかったように物語が進みます。テキストの内容からそれを知るというのはあまりにもお粗末ではないでしょうか。
各キャラ共通のイベントが一切ないというのもゲームの寂しさを一層高めています。せっかくヒロインが魔法研究会という同じ部活のメンバーでありながら、一堂に会することが一度もないというのはある意味で致命的なのでは。複数による何気ない会話の充実こそキャラの個性をアピールする場だと思うのですが。
個別シナリオに入ってからもあまり誉められません。移動先選択をしていたころと全く話が繋がらないというか、仕切り直されている格好なのでプレイヤーは戸惑います。
どのシナリオでもろくに伏線も張られていないため、唐突な展開にただただ唖然とするばかりでついていけません。恐らくスタッフの中では理解の範疇の展開なのでしょうが……。
欠点ばかり上げているので良いところも。
人数限定のほのぼの会話はそれなりに面白味もあると思います。笑いを誘うというほどでもありませんが。
……。しばらく考えてみたのですが、私には他に良いところが見出せません。困ったことに。誰か教えてください。
CGはそれなり。というか、やっぱりデビュー作と言われてすんなり納得してしまうレベル。ところどころ同じキャラに見えないイベントCGも見受けられます。
背景はかなりの低レベル。構図にも工夫はありませんけど、それ以前の問題。ちょっとヤバいレベルだと思います。これより下手なところは最近ではちょっとお目にかかっていないような。
しかも、指定忘れか手抜きか知りませんが移動場所「校門」の背景が廊下というのはどうかと思います。
他にもイベントCGは夕陽なのに立ちCGに戻ると日中ということも一度ならずありました。雨は我慢するにしても明度は看過できません。
立ちCGは背景に比較するとポーズ、表情ともに多彩で良い出来(まぁ、だからこそ背景の不出来が目立つんですんですけど)。ここは素直に誉められるところかと。
CGというかデザインですけど、制服のスカートの巨大なリボンが「みずいろ」の制服を彷彿とさせます。むしろあれよりも尖って固そうなのでなんかギャグのようです。
音楽は曲数のわりにスタッフの人数が多いせいか、曲ごとのレベルに差があるような気がします。印象度もかなり違うような。
ボーカルは2曲ともに佐藤裕美さんが担当。こんなところでも「みずいろ」を思い出しますが、曲は正直、同じ人が歌っているとは思えないほど。わかっていたつもりですが、やはり作詞作曲は重要だと改めて感じました。
ボイスは初登場時と個別シナリオに入ってからのみ。おかげで急に喋り出す印象があり、違和感がかなりのことに。
声優さんのレベルは概ね問題ないと思いますが約一名、メガネの先輩だけは少し合っていないような気もします。
まとめ。ある意味、期待を裏切らぬブランドデビュー作。どういう訳か、ここまで書いておいて個人的な心象はそれほど悪くないので(生き延びられるのなら)次回作に期待。ただ、人に薦める気にはなりませんが。
どうやら私は魔法使いに恋をしなかったようです(この作品のコピーは「あなたは魔法使いに恋をする」なので)。
お気に入り:稲葉由縁
評点:48
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、津和野ひかり
彼女を見て最初に思ったことは「胸でかっ」ということ。実際、地の文で彼女のスタイルに触れていないのが不思議なほどの巨乳だと思います。
ひかりの立ちCGを見ていると「秋桜の空に」の冒頭のやりとりが思い出されます。
「すずねえは胸を張ると制服のボタンがパッツンパッツンに……」というアレが。これくらいのCGならあのセリフももっとすんなり納得できるんですけどね。世の中、うまくいかないものです。
2、稲葉由縁
全ヒロイン中、最も会話していて楽しい相手。ただ本文中でも言ってますが、いつでもツッコミがきつ過ぎるのがどうもね。会話の勢いを殺している感さえあったのが残念。もっと積極的に他のキャラに絡んで欲しかったですなー。って、このゲームは全員に対してそんな感想を持ってますが。
記憶を失うのはいいとして、なにゆえその対象が由縁なのかが最大の謎。二人はすんなり納得していましたが……。まぁ、そんなことよりも記憶を失うネタはもうお腹いっぱいですわ。
3、幸村小姫
これが最も魔法と関係ないシナリオか。というか、今思い出しましたが「まじかるアンティーク」にこれと同じモチーフのシナリオがありましたな。比べるのが失礼なほど、あちらの方が出来がいいですが。
彼女が照れる表情は可愛いんですけど、それだけってのが痛いデス。
4、有藤鈴香
これは一体、どういう意図のシナリオなのか。かなり疑問です。スタッフが悪魔っ娘好きなんでしょうか。私は最後だったんでいい加減、耐性が出来ていたので動じませんでしたが、初回プレイでこれじゃかなり驚くんじゃないですかね。
CG的にせっかくキングオブハートな彼女にはスタッフの遊び心を期待したんですけど、そんなものは露と消えました。そもそも個別シナリオに入ってから魔法を使うシーン自体がないような。
5、硯美知晴
何度聞いてもこの方の声には違和感を感じてしまいます。パートボイスの影響を最も感じられるヒロインではないかと。個別シナリオに入った時に誰が喋っているのかと思ったほどで。
あの刺さりそうな制服のリボンはこの方が着ているともはやギャグとしか思えず。実際にあったらかなり怖いデザインですよね、コレ。ベストとのアンバランスさが凄まじいデスヨ。
6、高柳美弥
私が読み落としているのかもしれませんが、にゃんたって何なんでしょうね。あのシナリオを見ているとただの猫ではないみたいですが。異次元ねこ?
しかし、一体どういうつもりで触手なのでしょうか。どの購買層に訴えかけるつもりなのかさっぱりわからず。凌辱ゲーが作りたいようには見えないんですけどねぇ。
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