稲葉恭介(変更不可)は何の因果か史上最悪の天気運を持つ男。その運の悪さは玄関から出れば雷雨、二階に上がれば快晴と常軌を逸していた。そんな超能力者のような男の元に突然、3人と1体の神様がやってきた。果たしてその行く末は。
FILM−SOFTWAREのデビュー作。新規ブランドにとって数ヶ月の延期などもはや挨拶代わりにしか過ぎないのかもしれません。という訳かはわかりませんが、度重なる延期の末に発売されました。
初回特典はあるてぃみっとディスク。壁紙や雑誌で使われたイラスト、ミニゲームなどが収録されています。
内容にいく前に避けては通れぬいつものお時間です。今作にも当然のようにバグが搭載されています。症状はいきなり立ちCGとメッセージウインドウが消えたり、喋っている人間の名前とセリフが一致しなかったり、強制終了したりと多種多様。
一応、修整ファイルは出ているようですが、私はその前に一通り終わらせてしまったので修整具合は検証しておりません。それでもあてないよりはましと思われるので落としておきましょう。
ちなみに環境によっては2時間くらいまでインストールに時間を要することがありますが、仕様なので諦めて下さい。必須環境ぎりぎりの方は時間潰しの手段を講じておきましょう。
システムはいつものアドベンチャーにお天気選択システムとななさいモード、つぶやきシステムを加味したものになっています。
お天気選択システムとは女神の力を借りて毎日の天候を一週間単位で決めていくもの。そこに一体、何の意味があるのかと言えばほとんど意味はないような。どのみちお祭りなどの天候が重要になる日は変更することが出来ないようになっていますし、そもそも設定が一週間単位でありながらあらかじめスケジュールがわかる訳ではないので戦略的な(と言うのも大げさですが)意味で選ぶことは出来ません。実質的に立ちCG表示の際の画面効果(雨が降っていたり、傘をさしていたり)が変わるだけかと。
ななさいモードはお天気選択モードで女神たちを酷使し過ぎると彼女たちが縮んでしまうというもの。しかし、これが難しく、発生させるタイミングが悪いと同じイベントが起きているのにイベントCGが表示されなかったりします。展開そのものが変わる訳ではないのでそれほど大きな意味は持っていないようです。
つぶやきシステムはキャラクターのセリフがメッセージウインドウではなく、ふきだしになって表示されるもの。正直、これの狙いがよく分からず。最初は複数人で話している時の、いわゆる外野の声がこれかと思ったのですが、一対一で話している時にも発生しますし。別に小声で話しているものが全てふきだしという訳でもないようですしね。また、ふきだしのセリフにボイスはなく妙な効果音が鳴ります。
足回りは今時これはないだろうというレベル。
メッセージスキップは既読未読を判別しません。加えてスキップ状態を止めるのが非常に難しくなっています。さらにシーンごとに似たようなテキストが多く、手動による判別もしにくくなっています。かなり困ります、これは。
メッセージの巻き戻しは別画面で行います。戻れる分量は十分ですが、ここでの使い勝手もあまり良くありません。
メッセージスピードの調節機能がありながらNo waitがないのは不親切ではないかと。同様にコンフィグ画面などにおいて右クリックで抜けられないのも。
選択肢でセーブ出来ないのもメッセージスキップの機能を考えるとツライところ。またセーブデータに日時が入らないも個人的には不便でした。
シナリオは明らかに統一性に欠けます。 例えば、喫茶店を任されている主人公は学生でもそれなり以上に料理が出来ねばなりませんし、夕菜シナリオでは普通に調理もしています。ところが、コロナシナリオではどういう訳か料理の特訓をして、指をばっさり切ったりしています。このように些細な事実がシナリオ間で変わってしまうケースがまま見られます。どうやらシナリオライターが複数いることがそのまま欠点になってしまっているようです。
シナリオを成り立たせるのに必要な情報も全体的に不足気味。メインヒロインたちは女神です。人間とは違う存在です。にもかかわらず何が出来て何が出来ないのか、何を知っていて何を知らないのか、そうしたことがまるで書かれていません。
そもそも女神たちがどのような理由で主人公のところへ来たのかが明かされません。そのためとは考えたくありませんが、終盤に女神たちが帰る理由も同様に明かされず。そのような状態で起こるドラマに説得力も緊張感も生まれるはずもなく。
その割にテキストには無駄が多く、「おはよう」、「ただいま」といった必要とは思えないあいさつが頻繁に使われています。このせいでシーンの見分けも非常にしづらいものに。
会話の中身も潤いに欠けることが多く、どれほどの意味があるのか不明なイベントも多いように感じられました。
シナリオの展開もあまりに唐突。一切の伏線もなく回想シーンなどでいきなり重要な事実が明かされ、それを当然の流れとしてシナリオが進行するのでプレイヤーはすっかり置いてきぼり。突っ込み所に事欠きません。
もちろん互いが惹かれ合う描写など望むべくもなく。
CGはかなり微妙。基本的なレベルは低くないのですが、買ってから唖然とさせられる可能性があります。というのも今作の原画の担当の仕方に原因があります。
通常の場合、原画家によって担当するキャラをキャラクターデザインの段階から分担しています。ところが、今作ではキャラクターデザインは一人で行い(恐らく)、実際の原画は複数の人間がそれに似せるようにして描いています。つまりアニメと同じ方式を採っているのですね。そのため、一人の人間で同一キャラの全てを担当していないケースもあり、シーンによっては明らかな別人に見えたり。
立ちCGは一人で担当しているため、キャラによってはイベントCGとの落差に目眩を覚えることも。
こうした方式の弊害として立ちCG、イベントCG及びテキストにおいて雰囲気が合致しないという欠点も起きています。
音楽は定番の旋律という感じであまり印象に残りません。大きな不足も感じませんが。
ボイスはフルボイスと銘打たれてますが、微妙にそうではなく。おまけなど本編含む一部にボイスがありません。そう大したことでもないと思いますが。
声優さんのレベルはメインである女神さまよりも人間の方が勝っているように思えます。
まとめ。体全体でデビュー作を謳っているような作品。期待が過ぎるとかなりの火傷気分を味わえるかと。正直、作品全体において課題が多すぎます。
お気に入り:本気でいません
評点:45
キャラ別感想(突っ込み)は徒然なる日記で疲れたのでパスということで。
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